エリックは1971年、フランスのパリ生まれ。オリヴィエは1973年、フランスのオー=ド=セーヌ生まれ。1990年前半に出会い、以後、共同で映画を制作。95年に初の短編『Le jour et la nuit』を共同監督。99年の短編『Les Petits souliers』が国内外の映画賞で高く評価される。05年に初の長編『Je prefere qu'on reste amis (a.k.a Just friends)』を監督し、批評家や観客から絶賛される。
『最強のふたり』エリック・トレダノ監督&オリヴィエ・ナカシュ監督インタビュー
静かなる大ヒット作を作った映画界の“最強のふたり”
日本で名の知られている俳優が出ている訳でもない、テレビのキー局が全面的にバックアップしてCMを打ちまくったわけでもない、衝撃シーンやエロティックな過激シーンがあるわけでもない。しかも、日本ではヒットしにくいフランス映画……けれど満席続出の大ヒットとなっているのが、首から下が麻痺した大富豪と、彼を介護することになったスラム育ちの黒人の“ありえない友情”を描いた『最強のふたり』だ。
本国フランスをはじめ、ヨーロッパでも大ヒット。泣かせるために作られたお涙頂戴のドラマではなく、毒舌も飛び交う“コメディ”が、笑いと感動をもたらすのだ。
監督はエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの2人。『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟や『ファーゴ』『ノーカントリー』のイーサン兄弟など世に兄弟監督は多いが、彼らは兄弟ではない。友情によって結ばれた、まさに“最強のふたり”である彼らに話を聞いた。
オリヴィエ:ヒットの1番の要因は、ストーリーの強さと素晴らしさにあると思います。なぜなら、このストーリーは実話だから。本来、出会うはずのない2人が、ありえない形で友情を深めていく。そして、社会的にも文化的にも対局にある2人が壁を越えて“最強”になる。こんな物語は、逆に“創作”だったら思いつきません。
エリック:映画は予想を超えて大ヒットしました。今、映画はテレビ番組の競合の問題など、見る人が減っているというような感じもありますが、それでもこの映画のように映画館に来る人が絶えないのは、大きなスクリーンで知らない人たちと暗闇で映画を見て、喜怒哀楽を共有することがすばらしいことだとみんなが知っているからだと思います。
エリック:映画を撮ること自体が大変なことではあるのですが、今回の映画では、感動と笑いのバランスをうまくとり続けることを心がけました。ヘタをすると低俗になりすぎたり、重い物語になってしまう。今回は、より重いテーマをコメディで描くことで、みんなに楽しんでもらえる作品になるよう努力しました。
オリヴィエ:黒人青年を演じたオマール・シーはフランスでは大変有名なコメディアンですが、今回の映画では、彼に笑い以外の部分も表現させてみたいと思いました。この作品は、彼のために書いたといっても過言ではありません。ちゃんとした演技の勉強をしたことのない彼ですが、即興で思いのままに役にぶつかる姿勢に感動しました。
一方、大富豪を演じたフランソワ・クリュゼは、フランスで尊敬されている舞台出身の実力派です。まるで映画のように対極にいる2人の競演により、映画にリアルさを出すことができました。
エリック:どんな状況でも楽観視しながら生きていくことができればいいと思っています。これは、実際に(役のモデルとなった)フィリップさんが言っていたのですが、「息をしているだけで、それだけでありがたいんだ。生きていること自体がすばらしいので、いつも前向きでいたい」──まさにそれが大切なんだと思います。落ち込んでいる暇はないんです。また、ユーモアを失わないというのも大切だと思っています。
オリヴィエ:すべてがデメリットです(笑)。まあ、それは冗談ですけど、みんなは何故2人でやらないんだろうと思うくらいに良いことが多いですよ。脚本を書くときも撮影のときも、2人のフィルターを通すことができるので、より建設的に物事を進められます。また、こうして成功したときは喜びを分かち合え、失敗しても2人で乗り越えられる。まぁ、収入が半分ずつになるのはデメリットかな(笑)。
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