1956年1月3日生まれ、アメリカ合衆国 ニューヨーク州出身で、68年に家族と共にオーストラリアに移住。オーストラリア国立演劇学院で学び、79年に主演作『マッドマックス』(79年)でブレイク。同作は人気シリーズとなり、計4作が作られた。また『リーサル・ウェポン』(87年)も人気シリーズとなり、こちらも計4作が作られた。監督としても才能を発揮し『パッション』(04年)、『アポカリプト』(06年)などを監督、『ブレイブハート』(95年)ではアカデミー賞監督賞を受賞。近年はドメスティックバイオレンスや飲酒運転などプライベートでのスキャンダルが相次ぎ、ハリウッドから距離を置かれていた。
今年、映画俳優として35周年を迎えたメル・ギブソン。『マッドマックス』シリーズ(79年〜85年)でブレイクしアクションスターとして人気を博してきた彼が、(カメオ、声優は除き)35本目の映画出演作に選んだのが、このノンストップアクション『キック・オーバー』だ。
マフィアから大金を盗み逃亡した男がメキシコで逮捕され、史上最悪の刑務所エル・プエブリートに投獄されることから物語は展開。モラルも常識も通じない場所で生き延びようとする主人公の姿を描いていく。
製作と共同脚本もつとめたギブソンに、記念すべき本作について話を聞いた。
ギブソン:しばらく練っていたアイデアなんだけど、メキシコの刑務所内での話なんて、見たことある人はほとんどいないと思うんだ。メキシコの刑務所がどんな所か読んだときは驚いたよ。想像していたものとはまったく違ったんだ。
ギブソン:ドライバーはキッドのなかに自分を見るんだ。ドライバーの少年時代も、少年院に入ったり悪いことをしたり、ラクではなかった。そして彼は、キッドを通してあのなかでの生き方を学んでいき、その過程でキッドとの仲が深まるんだ。そしてキッドも問題を抱えていることを知る。キッドは自分が特別だと言い、その理由は教えてくれないけれど、なぜ特別なのかが見えてくるんだ。
ギブソン:彼は頭の切れる子だよ。自分を上手に表現するし、見ていて面白い。今では体の大きな男の子に成長していて声も全く違っているけど、彼は13歳にして10歳に見えたから、あの役にはちょうど良かったんだ。キッドは刑務所で育った悪ガキでタバコも吸う。頭が良くて物事の内情をよく知っているという役にピッタリだったんだ。大勢の子どもに会ったけど、彼は完璧だった。
ギブソン:ドライバーは、よくいる犯罪者じみた名前のない男で、初めは彼がどんな人物か分からないけど、段々分かってくる。そして彼は、あの刑務所に放り込みたくなるような正にピエロなんだ。
ギブソン:この映画は、メキシコの刑務所内での現実に焦点を当てていて、脚本は、僕ともう2人の3人でテーブルを囲んで書き上げたんだ。スピード感とウィットがあって、次に何が起こるか分からないような冒険とアクションがある。サプライズもあるけど、大部分は皮肉や冗談まじりで出来上がっているんだ。
ギブソン:ティファナにあるんだけど、当時はいろいろなことが起きていたよ。枕にヤクを詰めて密輸しようとした5人組の中国人が捕まって、数週間後にはムショのなかでレストランを始めた。あまりに美味しいと評判になり、外から食べにきた人もいたくらいなんだ。(※犯罪の温床となり政府も介入できなくなったため、政府は2002年に軍を派遣しエル・プエブリートを制圧、消滅した)
ギブソン:カメラを持って刑務所内を取材したんだけど、初めて入り歩き回ったときはヘンな感覚だったよ。人々はただタバコを吸いながらジッとこっちを見ていて、僕は、誰が人殺しで誰が売人かと考えたりした。なぜ彼らがここに入ったのか想像するんだけど、まったく分からない。ただ、みんな謎めいた表情でこちらを見るばかりだから怖くなったりもしたよ。僕は、そのなかの1人に声をかけ「やぁ、元気?」って聞いたんだ。すると「よぉ」って気軽な感じで応えてきた。不思議に感じたけど、内面はただの心優しい人で、好奇心から僕を見ているだけなんだって分かった。
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