1973年10月14日生まれ、宮崎県出身。早稲田大学在学中に劇団「東京オレンジ」の旗揚げに参加。以降、舞台を中心に活動しながら、次第にテレビ、映画と多方面で活躍するように。近年の主な出演作に、劇団☆新感線に客演した「蛮幽鬼」(09年)、NHK大河ドラマ「篤姫」(08年)、ドラマ「リーガル・ハイ」(12年)、映画では『アフタースクール』(08年)、『ジェネラル・ルージュの凱旋』『南極料理人』(共に09年)、『ゴールデンスランバー』『武士の家計簿』(共に10年)、『ツレがうつになりまして。』(11年)、『鍵泥棒のメソッド』(12年)など。公開待機作に『大奥〜永遠〜[右衛門左・綱吉編]』(12年)、『ひまわりと子犬の7日間』(13年)がある。
現在、日本映画界になくてはならない俳優、堺雅人と山田孝之。いずれも稀有な才能とオーラを併せ持つふたりだが、意外なことにこれまで共演作がなかった。魅力的な顔合わせが初めて実現したのが、壮絶なクライマックスの待つ『その夜の侍』だ。
妻をひき逃げ事件で失った喪失感から立ち直れず、やがて出所してきた犯人への復讐計画に没入していく中村(堺)と、中村からの脅迫状に苛立ちを隠せない、ひき逃げ犯の木島(山田)として向かい合うことになったふたり。演技派のふたりをもってして、精神的にも肉体的にも限界に追い詰められたことを伺わせる本作について、厳しい撮影を経て戦友となった堺と山田が振り返った。
堺:いや、メガネくらいですね。
堺:普段の僕は、この映画のような感じですよ(笑)。でももし普段とは違うと思ってもらえたのなら、それは作品全体の世界観なんじゃないかな。
堺:そうですね。答えがないということですから、非常におさまりが悪いですよね。だからどうやったらいいのか、正直分からなかったですね。これでいいという答えを見つけた時点で、それはもう違うということだと思うので。葛藤という言葉でおさまりをつけるのも、赤堀さんとしては好きじゃないんじゃないかと思うんです。葛藤かどうかも分からない、もごもごしたところがやりたかったのだと思うので。
始める前には“弔い”というのがキーワードとしてあったんです。「弔い方を知らなかった男が、弔い始めるまで」というのがあった。でもそれも赤堀さん的にはおさまりがよすぎるキーワードだと思うんです。じゃあどうしよう、ああしようって、監督の指示を聞きながら、なんとかそこに近づけようと。それだけですね。僕の場合、毎回、その場の受注に従って商品を作っているような感じで。でも今回は受注内容を把握するまでが大変だった。何すりゃいいんだろうみたいな(笑)。
山田:バックボーンに関しては、毎回考えますけど、監督とは話してないですね。その人の言動で、なぜこの人はこういうことを言って、こういうことをしたんだろうとか考えて、そのときどきで納得してやってるんですけど、でもそれをいちいち覚えてはいないです。
山田:うーん、この人のことは分からないです。もちろんいろいろ感じますよ。孤独も、さみしさも、不器用さも感じますし。でも分からないですね。強烈に感じ取ったものというのも、確かにありはしますが、ここでそれをその人として、例えばさみしさとか挙げちゃうと、それが1番になってしまう。それは嫌です。それは一面でしかないわけだし……。
とにかく木島のことはわからないですね。もちろん、木島という役に対して、理解しようとはします。でも理解する必要もないと思うんです。ただ、その人のことを知る必要はあると思って常にやっています。
堺:それねぇ。ずっと共演を楽しみにしていたんだけど、でも実際に会ったときには俳優・山田孝之として見ているのか、それとも木島として見ているのか、分からなくなっていたというか。役柄としてもずっと会いたかった人ですからね。だから、「あぁ、俺はいま、山田孝之と共演してるんだ!」っていう感じではなかったですね(笑)。ずっと一緒にやりたいなと思っている人だったので、嬉しさはありましたよ。でもそのときはそれどころじゃなかった。木島はどんな人なんだろうってことで頭もいっぱいになってるし。
だから印象としては、一緒に大変な仕事を成し遂げた人という感じですかね。結構大変だったんですよ、あのクライマックスは。雨も降ったり、アクションを覚えたり。そのシーンを信頼してできた同業者というだけで僕は非常にありがたいし、混乱した現場で信頼しながらひとつのものを作れたのが山田さんでよかった。あれは2夜かけて撮ったんだけど、1日目はどこで終わったのかな。
山田:いや〜、覚えてないですね。
堺:覚えてないよね(笑)。
堺:パンツまで濡れた時点で何かがプツンと切れたんだよね。だから覚えてないんだよ。いや、パンツが濡れるって大変なことですね。パンツが濡れたら何かが終わる!
山田:そうそう濡れないですよね。靴のなかとかも濡れきってグチョッてなった瞬間にもういいやってなりますよね。
山田:とられてましたよ。リハーサルで走ったりしてたんですけど、その時点では乾いた状態だった。でも本番では濡れてグチョグチョになって、10センチくらい沈むところは沈むし、泥だから足はとられるし。段取り通りにはいきませんでしたね。アクションをつけるプロの方が疲れていましたから。
堺:そういう段取りではあったんだけど、ただ思ったよりも早めに足をとられましたね。あと2歩くらい歩いてから足をとられるはずだったんだけど、1歩目からとられちゃって。あれを見たときに赤堀さんが嬉しそうな顔をしてたんですよねぇ〜(笑)。「カッコ悪かったですね〜」って言って。あのときはスタッフもみんな、びしょびしょになりながらやってましたからね。
山田:全くないです。そんな余裕残ってないんですよ。達成感っていうのは、余裕が0.1%でも残っていればあると思うんですけど、かなり早い段階でゼロまで行っていたので。そんなのはないですね。
堺:いまだにね、客観視できないです。この作品に関しては。論理的な一貫性があって、分かりやすくできている物語ではないし、混乱を混乱のままに描くところがおもしろかったりもしているので。ただ新井くんがものすごく活躍してるなと(笑)。いろんな人たちを繋げてなだめすかして。この物語の登場人物はみんなボケ倒してますから、それをまぁまぁってなだめて突っ込んで。いや、新井浩文のすごさを再認識しましたね(笑)。
山田:思った以上にじと〜っとしてましたね。特に中村の家のシーンとか、僕は全く知らないわけだし。全体的にここまでじと〜っとしているんだっていうのは、出来上がった作品を見て初めてわかった。自分が同じセリフを2回言ったりするシーンがあって、なんで2回言うんだろうって違和感を覚えたりしてたんですが、作品を見たらそんな規模じゃないんですよね。全体的にすべてのことが違和感だらけというか。うわ、ここまで行き切っている作品だったんだ、なんだ、これは!って思いましたね。
堺:すごく難しい役だったと思うし、それを任せていただけたことは感謝してます。でも特別といえば、毎回が特別ですから。ただ、これだけの混乱ができたということ自体は誇りです。こういう作品に参加できたことも嬉しいし、よかったなと。
山田:木島のことがいまだに分からなくても、作品は出来上がって木島としてちゃんと成立している。それはおもしろいですよね。僕は、人は生まれたときから何かがずっと蓄積されて死ぬとは思っていなくて、すごく短いスパンで人は変わっていくと思ってるんです。横にいる人のことを理解しようと思って勉強しても、その人は常に変わっていくから結局理解できない。そういう考え方を持っている僕が、役のことを理解しよう、俺はこの人なんだって思って演技をしているというのは、おもしろいと思います。
(text&photo=望月ふみ)
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