1946年10月17日生まれ、ロンドン出身。40年以上に渡って英米の演劇界で活躍を続けている現代最高の名プロデューサー。ブロードウェイミュージカルの歴代ロングラン作品のうち、ベスト3にあたる「オペラ座の怪人」「キャッツ」「レ・ミゼラブル」をプロデュース。ほかに「ミス・サイゴン」「メリー・ポピンズ」などを手がける。長年の活躍が認められ、英国王室からサーの称号を授与している。
『レ・ミゼラブル』キャメロン・マッキントッシュ インタビュー
25年前にアラン・パーカー監督と『レ・ミゼラブル』の映画化の話はあった
1985年にロンドンで幕を開けて以来、世界43ヵ国、21ヵ国語で上演され、世界最長のロングラン記録を誇る大ヒットミュージカル「レ・ミゼラブル」が満を持して映画化された。
『英国王のスピーチ』でアカデミー賞監督賞を受賞したトム・フーパーがメガホンを取り、ジャン・バルジャン役にヒュー・ジャックマン、ジャベール役にラッセル・クロウ、ファンテーヌ役にアン・ハサウェイ、コゼット役にアマンダ・セイフライドと、考えられる最上のスターが顔を揃える豪華キャスト陣も話題に。
そうしたなか、本作のプロデューサーもつとめ、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の生みの親でもあるキャメロン・マッキントッシュに、映画化実現までの経緯から、こだわった点、ヒットを生み続ける理由などについて語ってもらった。
キャメロン・マッキントッシュ(以下、マッキントッシュ):25年前(1987年)にブロードウェイ、そして、東京の帝劇でこのショーがオープンしたときからずっと映画化は考えていたんです。いろんなオファーがあるなかで、実はアラン・パーカー監督と映画化する話が進んでいたんですけど、私の方が、まずはミュージカル版を5年くらいは育てたいと待ったをかけてしまったがために、監督がそんなに待てないということで企画は流れてしまいました。
でも、当時、映画を作っていたら、今回のような全編歌という作品はできていなかったでしょうね。いわゆる、普通のミュージカル映画になっていたと思います。今回のキャストも、当時はまだ学生だったり、生まれていなかった人もいると思うので(笑)。
マッキントッシュ:『英国王のスピーチ』(10年)のリリース前だったのですが、彼が脚本家のウィリアム・ニコルソン経由でこのプロジェクトを知り、ミュージカルを見に行った後で、(本作の製作会社である)ワーキング・タイトル・フィルムズに連絡をとって私のところに来たんです。会ってみると、『レ・ミゼラブル』を映画化する構想が素晴らしかった。スケール感があって、何よりも彼は、僕がこだわっていた同録という案に対し、絶対にそうしたいと言ってきたんです。
マッキントッシュ:キャストはみんな、すっごく興奮して「いいアイデアだ!」と言っていました。特に困難なことはなかったですね。
ただ、今、思い出してみると、1番苦労したのはエポニーヌ役のサマンサ・バークスが「オン・マイ・オウン」を歌うシーン。土砂降りのなかのシーンで、彼女は小さなイヤホンを耳にして、そこから流れてくる曲に合わせて歌うのですが、撮影ではマイクが音をすべて拾ってしまうんです。だから、音だけ聞くとトイレにずっといるみたいになっていて(笑)。1つだけクリアなトラックがあったのと、後は彼女のCDレコーディングがあったので助かりました。
マッキントッシュ:『レ・ミゼラブル』の良さはパワフルで、人を感動させることができるストーリーにあると思うんです。音楽を通してストーリーを語っているからこそ観客は魅せられる。単なる歌のコレクションではないんです。
もし、歌の部分のないドラマ仕立ての映画を3ヵ月も前にすべて録音しておいて、後で口パクで演技をするとしたらどうでしょう? ありえない話ですよね。ミュージカルでも全く同じで、3ヵ月前に録音してから口パクだけで演じたら全く心がこもらない。そうではなくて、この作品はミュージカルストーリーなんだという思いが、僕のなかで強くあったのです。
マッキントッシュ:アラン・ブーブリル(作・脚本)、クロード=ミッシェル・シェーンベルグ(作・脚本・作曲)、そして私の3人とも、単に舞台を映画に収めるということは避けたいと思いました。そうではなく、トム・フーパーのヴィジョンをもとに映画として独立したものを作ろうと思ったんですね。
実はミュージカル『レ・ミゼラブル』には、80年にパリで幕を開けたオリジナルバージョンがあって、私はその舞台を見てはいないんですけど、その後、コンセプトアルバムを聞いて、ぜひともミュージカルにしようということで、85年にロンドン版のミュージカルを作ったのです。
今回も同じように映画版を作ることになったわけですが、今までの経験で気づいたのは、何か新しいものを作るときには、映画なら映画に合わせて、もうちょっとここを増やそうとか、ここはカットしてもいいよってことを大胆にアレンジしていくことの必要性でした。
マッキントッシュ:私は根本的には舞台のプロデューサーです。45年もプロデューサーを続けてきて、今回初めての映画なので、才能あふれる人たちと出会えたというのはすごくありがたかったですね。
ただ舞台の場合は、3、4年前から準備をして、演出部は誰にしようとか、いろいろなことを決めながら、自分の生活もうまく回っていたのですが、映画の場合はいつゴーサインが出るかわからない状態にあって、突然スタジオがスイッチを押すと、何をやっていても、まずはみんなしてそこに駆けつけないといけない。もう、死にそうになりました(笑)。
それに舞台では、俳優や衣装やセットが全部揃ったら、私はそれをまとめる役を担っていますし、全てに口出しをするんですけど、映画の場合は最初こそ口出ししますが、撮影中は一切できません。また、撮影が終わった後には音楽のことなどでコラボレーションが始まるのですが、とにかく時間もかかるし、僕は舞台ではすべてに口出ししたいタイプなので、映画との両立は難しいと思いましたね。
マッキントッシュ:もちろん、話はあります。あと1、2本は映画を作るかもしれませんが、とにかく1番好きなのは舞台なんです。
今回映画をプロデュースしたのは、『レ・ミゼラブル』が大好きで、本当にいい形で映画にしてほしいという気持ちがあったから。すべてはやはり、観客が望むかどうかによると思うんです。このショーがずっと成功し続けているのは、それだけの人が見て下さるからで、これだけ人気があるからこそ、スタジオも映画を作るとなったわけで、僕はやっぱり、本来は演劇を続けていきたいんですね。
マッキントッシュ:これは偶然というか、僕はショーを書くことはできないんですけど、いい原稿やアイデアを嗅ぎ分けるところが長けていると思うんです。先ほども話しましたが、フランス版の『レ・ミゼラブル』のコンセプトアルバムを聞いて、これは素晴らしいものになると嗅ぎ分け、こうしたらいい、ああしたらいいとアドバイスしていくことはできるんです。
『オペラ座の怪人』に関してはアンドリュー(・ロイド=ウェバー)から、こんなことを考えているから2人でプロデュースをしようと言われていたんですけど、彼は音楽を書く気はまったくなかった。では、どうして彼が作曲をする気になったかというと、京都で劇団四季の『キャッツ』を見に来たときに、オーストラリア人のジム・シャーマン(『ロッキー・ホラー・ショー』の監督)と一緒に「ゴシック・ロマンスとして、『ロッキー・ホラー・ショー』みたいじゃないものを作りたいね」という話になって、だんだんと話が進んでいったら、アンドリューが「僕が書く」と言って書き上げたんです。
私の役目は作品を生み出すのを手伝う“お産婆さん”。誰かが「ここまでしか書けない」というのをけしかけて、もっといいものを作りあげる。そして相応しい人たちを集める才能があるということです。いいものをグレートにすることはできるけど、悪いものをグッドにすることはできないんですね。
NEWS
PICKUP
MOVIE
PRESENT
-
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29 -
山口馬木也のサイン入りチェキを1名様にプレゼント!/『侍タイムスリッパー』
応募締め切り: 2024.11.15