1949年12月18日生まれ、カナダのケベック州出身。20歳のときに来日、京都に暮らすOLの日常を描いた『Keiko』(79年)で長編監督デビューし、外国人初の日本監督協会新人賞を受賞。下半身のない少年を主人公にした『ケニー』(87年)でカナダ人初となるモントリオール世界映画祭グランプリ、ベルリン国際映画祭UNESCO賞を受賞。05年に『KAMATAKI −窯焚−』で、モントリオール世界映画祭監督賞・観客賞・国際映画批評家連盟賞など映画祭史上初となる5部門受賞を果たし、ベルリン国際映画祭のキンダー部門でも審査員特別賞を受賞。『カラカラ』(12年)ではモントリオール世界映画祭で世界に開かれた視点賞と観客賞をW受賞。
第36回モントリオール世界映画祭で「世界に開かれた視点賞」と「観客賞」をW受賞した『カラカラ』。心の平安を求めて沖縄へとやってきたカナダ人の元大学教授ピエール(ガブリエル・アルカン)と、夫から暴力を受ける主婦・純子(工藤夕貴)の交流を描いた作品だ。
タイトルの「カラカラ」は沖縄の酒器で、世間のしがらみや孤独、不安、喪失感を抱え、心の満たされない2人が、旅を通じて心を満たしていく様子を象徴させている。
カナダ出身のクロード・ガニオン監督は、ベルリン国際映画祭などで高い評価を得る映像作家。そんなガニオン監督に、本作について語ってもらった。
監督:自伝的要素はありませんが、ピエールには私の経験を投影しています。なかでも大きな位置を占めるのが沖縄への愛です。それから彼は、私がこれまでに出会った、「アジアに来ればスピリチュアルな悟りが得られる」というロマンティックな先入観を持つ西洋人の象徴でもあります。そういう、アジアを安易な逃避先にする考えに私は反対です。
ピエール役はガブリエルを想定して書きました。彼なら役に魅力的な奥行きをもたらしてくれると確信していたのです。
監督:脚本の第2稿か第3稿の時点で夕貴と連絡をとるようになり、それからは執筆が楽になりました。夕貴とガブリエルを対比させようと思ったのです。ふたりはすべての面において対照的です。夕貴が演じる純子は、日常的な暴力を受け、自分を見失っている女性です。彼女にとって家庭は安全や保障を意味し、日々夫に殴られ続けてもなお、そこにしがみつこうとします。彼女に必要なのは、背中を押してくれ、「これでいいのか?」と自問するきっかけをくれる存在なのです。
私たちは人生のなかで数々の選択を行いますが、それらは必ずしも自分の選んだものではなく、周囲の人々や不安の影響を受けています。家族、友人、他人によく思われたくて選択するときも、不安にとらわれて本当にしたいことをできないときもあります。それが私が『カラカラ』で強く言いたかったことのひとつです。
監督:ケベックも沖縄も侵略された過去を持ち、大きな国の一部になってからも独自の文化を守ってきました。その経験が人々の気質を形づくっているように思い、沖縄の歴史に共感を覚えるのです。
沖縄人と日本人とでは、日本に対する見方が異なります。同じ日本国民でありながら、違う存在なのです。ケベック人の多くがカナダとの違いを感じているように、沖縄の人々は違いを感じています。
監督:敏子さんが織る独特の芭蕉布はもちろんですが、彼女がこれまで行ってきたことを含めて、人として興味を惹かれました。彼女は戦後、未亡人たちに仕事と生きがいを与え、とても素晴らしいコミュニティーを築いてきました。敏子さんにとって、人生を見つめ直すのに遅過ぎるということはありません。行動を起こすのに遅過ぎることもなければ、したいことをするのに遅過ぎることもない。彼女の出演には重要な意味があり、この映画で私が大好きな部分です。
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