1981年12月19日生まれ。東京都出身。98年にフジテレビ系で放送された深夜ドラマ「美少女H」で女優デビュー。その後、数々のテレビドラマ、映画、舞台で活躍し、梶間俊一監督の『プレイガール』(03年)で映画初主演を果たすと、『キューティーハニー』(04年)、『口裂け女』(07年)など話題作で主演をつとめ、吉田大八監督の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)ではヨコハマ映画祭・主演女優賞を受賞した。
直木賞作家・逢坂剛の傑作ミステリー短編「都会の野獣」を、『休暇』(08年)の門井肇監督が映画化した『ナイトピープル』。
原作にはないスリリングな展開を盛り込み、ラストに向けて登場人物のさまざまな感情や思惑が交差していく騙し合いは、見ているものの目を釘付けにする。そんな迫力のクライムサスペンスで、物語の鍵を握るミステリアスな女性を演じた女優・佐藤江梨子、そしてメガホンを取った門井肇監督が作品の見どころについて語った。
門井監督(以下監督):これまでは大人しいというか、地味な人間の内面を描くような作品を撮っていたんですが、基本的には本作でもそのラインは僕のなかでは変わっていないんです。ただ(小池和洋)プロデューサーから「今回は娯楽にふった作品、逢坂さんの原作で、佐藤さん主役でやろう」という提案があり、これは面白いなって思ったんです。
監督:登場人物が、それぞれ悪い人だけど憎めない魅力のある人……そんな物語を描ければいいなと思っていたので、佐藤さんと北村(一輝)さんであれば、様々な役柄を演じてこられた方たちなので、きっと面白い人物像が描けるのではないかなと感じました。
佐藤:最初にいただいた台本から二転、三転と変わっていったのですが、初めて読んだときの面白さはそのままで、登場人物すべてが騙しあうような話がとても興味深く、原作もとても面白かったので、素直に作品に参加したいと感じました。
佐藤:杉本さんとは何本か作品でご一緒させていただいたり、行っている美容院が一緒だったりしてお友だちだったので、すんなり入れました。北村さんとは初めての共演でしたがレディーファーストで、女性にも男性にもとても優しく、気さくで、面白い方。そして、一緒に芝居をしていてとても勉強になりました。北村さんのセリフのなかで「悪いことすると上がるんだよね」っていうのがあるのですが、こんなにもそのセリフが違和感なく言える人はいないなと思って(笑)。いつか私もそんなセリフをいただいたら、自然に言えるようになりたいなって思いました。
佐藤:発砲シーンはちょっと快感でしたね(笑)。もちろんいろんな仕掛けがあるのですけれど、自分の撃った弾によって相手が倒れたりするのは素直に「カッコいい」って思っちゃいました。ガンアクションはあまりやったことがなかったのですが、きちんと指導していただいたのでやりやすかったですし、とても楽しかったです。
監督:アクション監督だけでなく、ガンアクション専門の方にも現場に入ってもらったので、非常に心強かったですね。せっかく彼らが入ってくれたので、CGとかではなく、なるべく派手な銃撃戦をやりたいという思いが強く、可能な限り火薬を使いました。見ている方も気持ちがいいと思ったので……。ただ発砲の数が多かったので、佐藤さんの顔の辺りで何度もバンバン鳴るのは心配でしたけど。
佐藤:冬場は営業していないようなペンションでの撮影でした。水道が使えないので、片道15分とか歩いて違うホテルのトイレに行くんです。その道すがら、みんな1回は滑るので「キャッ!」とか声が聞こえて、大変でしたけど面白かったですね。
監督:マイナス15度ぐらいという本当に寒いところでの撮影で、水も使えず、暖房もつけられない。キャスト・スタッフには大変な思いをさせてしまいました。道が凍って坂が上れずロケバスが到着できなかったりというハプニングもありました。でも、苦労しましたが、雪山でのアクションという珍しい撮影もできたので、面白いものが撮れたかなって思います。
監督:ライターやカメラマン、プロデューサーにはノワールにこだわって撮りたいという思いがあったようですね。僕としては基本的には人間ドラマを撮るのが好きなので、そこに力を入れたいと思っていたのですが、ノワールという部分では、原作になかった登場人物として、三元雅芸さん演じる葛西というやくざ役を入れました。彼の心情を表現するのに火のシーンを入れることによって、しゃべらなくても気持ちを語らせようという演出を意識しました。
佐藤:騙す役よりは騙される役を演じる方が楽だと思いますね(笑)。これまで個性の強い役が多かったのですが、今回は割と普通の人と距離感が近い役だったので、ナチュラルにやろうと心がけました。いつも「最先端の、来年くるから!」とかスタイリストさんが「気合入れて、作って!」みたいな役が多かったですからね。
佐藤:具体的に「この役」というよりも、いまの年齢(31歳)じゃないと演じられないような役をやってみたいですね。30歳にならないと演じられない役ってあると思うので……。若い頃は、学生の役とかやっていても、背が高くて、席順も変更になったりと色々大変でしたけれど、この年になると背が高くて良かったなって思えるようになってきましたし、これからどんな役にめぐり合えるのか楽しみです。
監督:何でもやってみたい気持ちはありますが、本筋は人間ドラマを描くのが好きなので、どんなジャンルの作品でもその部分は大事にしていきたいです。まだ具体的にはありませんが、自分で書いたオリジナル脚本で撮ってみたいですね。
佐藤:出てくる人が全員怪しいので、誰が1番悪い奴なのか、人それぞれ感じ方は違うと思うので、それを見ていただければと思います。
監督:街中でのアクションシーンなどはもちろんですが、佐藤さん演じる萌子さんが、北村さん演じる信冶さんに対して、だんだんと気持ちが変わっていくところなども見ていただけると嬉しいです。
(text&photo=磯部正和)
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