1989年2月16日生まれ、カリフォルニア州出身。人気ドラマ『フルハウス』のアシュレー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンの妹。名門ニューヨーク大学ティッシュ芸術学校に学び、本作で映画デビュー、一躍注目を集める。ロバート・デ・ニーロ主演の『レッド・ライト』(12年)をはじめ今後の出演作も目白押し。
カルト集団から逃げ出し、マインドコントロールから逃れようともがく女性──現代社会のなかをさまよう若者たちの内面に迫ったのが、衝撃のサスペンス『マーサ、あるいはマーシー・メイ』だ。
この作品で、忌まわしい過去に囚われ現実と幻想の区別がつかなくなっていく主人公を演じたのはエリザベス・オルセン。人気ドラマ『フルハウス』のオルセン姉妹を姉にもつ若き演技派だ。ハリウッドが期待を寄せる新星に、話しを聞いた。
オルセン:独特でありながらも、登場人物たちの人物像がはっきりと見え、こんなに興奮を覚えた脚本は初めてでした。私は主人公の心理がとても理解できるし、少し変わっているかもしれないけれど、マーサのことが大好きになってしまったんです。
特に良いと思ったのは、ダーキン監督が、観客に情報をすべて丸投げにしてしまわないところでした。彼は観客の知性を信じています。登場人物たちと同じような目線で何かを発見させながら物語を見続けることができる、そのような余地を残しています。そして、なにより女性についてのこんなに優れた脚本を、男性監督が書いたことも本当に驚きでした。主人公はステレオタイプな女の子ではなくリアルな若い女性像。彼女の闘いは、とても現実的な物語だと思いました。
オルセン:マーサの苦しみは、問題を抱えた家庭で育った子どもの頃から始まっていて、だからこそ、コミューンの誘い文句に簡単になびいてしまったのだと感じました。最初は、“新しい家族”とも言えるコミューンの仲間たちのなかで、マーサはこれまで一度も持ったことのなかった目的意識を初めて手に入れたと考えます。リーダーのパトリックは、彼女にとって、心から愛してくれて大事に思ってくれていると感じた初めての人で、だから農場に留まることを決意するのです。でも、コミューン内で起きていることに道徳的な疑問を抱き始めた瞬間から、悩みや迷いが始まるんです。
オルセン:マーサは絶対に話せないと直感で感じているし、まだ誰も信じられないという極度のパラノイアのただなかにいるのです。彼女が姉のルーシーを頼るのは他に行くところがないからで、ふたりは仲の良い姉妹では決してありません。それに、マーサは、社会でどう行動すべきかよく思い出せない状態で、まだカルト的な生き方を信じている部分もあります。無私の精神で、物質的でない生き方を求めているのです。でも、その考えは彼女の心のなかで次第によじれていき、小さなことが理解できなくなっています。彼女はまるで、見知らぬ土地に放り込まれた迷子のようで、裸でいてもいいとき、いけないときの区別がつかなかったりします。
マーサは集団にやってきたとき、性的な知識を持っていなかったんだと思います。そして、彼女の身に起こったことは、誰にとっても恐怖です。どう演じればいいのか、最初はまったくわかりませんでしたが、とにかく監督を完全に信頼していましたし、彼は私が必要なだけの空間と時間を作ってくれました。
オルセン:監督は、とても思いやりがあり繊細な人です。まるで仲の良い友人に演出されているように親密でした。彼には秘密を打ち明けらます。だって黙っていてくれると信じられますから。彼は常に私の問いに答えてくれましたし、私は彼にたくさんの質問をしました。彼の明確な言葉ですべては腑に落ちました。
オルセン:彼が演じるパトリックがただの気味の悪い怖い人だったら、あれだけ大勢の人々をそそのかして農場に連れてくるという設定に説得力がなかったと思います。でもジョンには、それ以外の何かがあるんです。パトリックはすごく優しい人だし、マーサへのラブ・ソングを歌う彼に彼女はなびいてしまうのです。私だって惹かれてしまうわ。とても素敵ですもの。
オルセン:これは生身の人間の行動について、むき出しの命についての映画です。これが、作り物ではないありのままの人間なのです。おかしいのは、撮影は素晴らしい時間だったし、マーサを演じるのも本当にグレイトだったのに、それでもやはり彼女の人生は、とてつもなく恐ろしいと思ってしまうことですね。
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