1968年3月11日生まれ。東京都出身。モデルとして活動を開始し、俳優に転向。「君といた夏」(94年)で注目を集め、「星の金貨」(95年)でブレイクした。04年の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』は大ヒットを記録。社会現象を巻き起こす。05年には『解夏』(04年)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞、07年の『地下鉄(メトロ)に乗って』では同賞の優秀助演男優賞を受賞した。また、久しぶりにテレビドラマ出演となった「JIN−仁−」(09年)が高視聴率をマーク。作品と個人で橋田賞を受賞した。ほか近年の映画出演作に『桜田門外の変』(10年)、『終の信託』(12年)、『ストロベリーナイト』(13年)がある。
鬼才・三池崇史が、「BE-BOP-HIGHSCHOOL」のマンガ家・木内一裕による処女小説を映画化したサスペンス・アクション『藁の楯 わらのたて』。幼い少女を惨殺し、祖父・蜷川からその命に10億円の懸賞金をかけられ、日本中から狙われることになった「人間のクズ」清丸国秀(藤原竜也)を、部下の白岩篤子(松嶋菜々子)らと移送する使命を帯びた主人公のSP・銘苅(めかり)一基役で主演の大沢たかおにインタビュー。
もともと原作を読んでいて、おもしろい作品だと思っていたという大沢が、本作への出演の決め手や三池監督との仕事の感想から、役者としてのポリシーまで、さまざまなことを語った。
大沢:確かに原作については読んでいました。でもそのときにはまさか自分が演じることになるとは思ってもみなかった。それに、まず銘苅うんぬんという以前に映画全体の印象として難しい作品がきたなと感じましたね。映画になるとしてもきっと、NYからどこかまでといったようなハリウッド映画のようなスタイルのほうがスムーズに行く内容だと思っていたんです。
大沢:そうですね。銘苅という主人公は基本的に引いている人なんですよね。主人公だったら前にガンガン行くのが通常。それが引いてなきゃいけないというのが、脚本を読んだ時点でこれは大変だなと、漠然とですが思いました。
大沢:銘苅役に惹かれたというよりも、こういう作品を観客のみなさんがどう見るのかなという興味が大きかったです。ラブストーリーだったり、家族の話だったり、そういったもうちょっと分かりやすいものが主流になっているなかで、1本、真正面からエンターテインメントを貫き通している作品。そこに挑戦する、三池さんは「映画界に対して」という言い方をしますが、そういう挑戦に自分も俳優としてという以前に、一映画人として、できるかぎりの才能を使って参加したいなと思ったことでしょうか。役に関しては正直、その次です。
大沢:実はこのプロジェクトには結構時間がかかっていて、三池監督だと正式に決定する1年ほど前にも三池さんの名前が挙がっていたんです。でも三池さんは忙しい人ですからね(笑)。ちょっと難しいかもということになって。そこから1年ほどしてから、やっぱり三池さんで行くということになったんです。僕としては最初に三池さんの名前が出た時点でいいなと思っていたので、確定したときはホッとしました。
大沢:とにかくとてもパワーがあるし気も使われるし、懐が深い方。みんなの状態を常に気にしていて、チーム全体をハッピーにさせる天才なんですよ。つねに笑顔。クリエイティブな面でも絶対に妥協をしない。これほどみんながモノを作ることを楽しみに朝早くから揃って、笑顔で別れる現場も珍しいなと思いました。
大沢:いろいろとお話を聞きました。銃の構え方ひとつをとってみても、その形になるには理由がある。そこにはメンタル的な部分も関係していますから、形だけにならないようにも意識しましたね。ここは日本だし、銃を向けるという行為自体、ほとんどないわけですよ。三池さんは本作でのSPをスーパースターやスーパーヒーローにはしちゃいけないとおっしゃっていた。人間としての刑事でありSP。その移送チームに襲いかかってくる人たちにも等身大の悩みがある。つまりは超日常で日々を送る超等身大の人たちが、清丸という超等身大じゃない存在によって狂わされていく話だと。
大沢:あそこは苦手だったので、台本を読まないようにしていました。2日前に台本を覚えて、あとは現場で。結構、あることだけど、今回ほど何も考えないで行ったのは初めてですね。まったくぶっ飛んじゃっている場面だから。文字を追っているだけだと、ちゃんと成立するかどうかも分からなかった。清丸を演じた竜也とか、そのときの暑さや、牧歌的な雰囲気といった、その場の全てのものを受けて演じました。
大沢:難しいですね。最後に山崎さんと対峙する場面がありますが、そこまでは思っていなかったんだけど、実際に山崎さんが歩いてきたのを見た瞬間かな、なにか鏡を見ているように感じたんです。銘苅にも同じような過去があって。蜷川は復讐をしようと決めた。銘苅は復讐しない道を選んだ。銘苅にお金があったら、蜷川と同じことをしてたかもしれない。選んだ道についても、それで良かったのか、ずっと葛藤してきた気がするんです。蜷川との対峙はもうひとりの自分を見ているようだったし、おそらく蜷川もそう感じたのではないでしょうか。
大沢:彼女はキレイだし、すごくピュアな雰囲気も持っていて、いつも真摯に役や作品に向き合う。今回もトレーニングを自分で随分前からやっていた。僕は聞いていたけど、でも現場でそういうことを人に話すわけでもない。白岩を演じるために、現場にきたらいきなりショートになっていて、メイクもほとんどしていなかった。そういう姿勢は同じモノを作る同士としてすごく信用できますね。同じ仲間としてすごく信頼できる。現場はとても過酷でしたが、何一ついやな顔しないし、男のなかで常にひとりちゃんといた。さすがだなと思いましたよ。
大沢:今回も今までも役について話したことは一度もないです。もちろん普通の会話はいろいろしますよ。ただこれは松嶋さんに限ったことではありません。話し合うのが好きな役者さんもいるだろうし、それはそれでいいと思うんですが、僕はそういうのは好きじゃない。みんながそれぞれのあるステージまで来て、現場に入っていると思っていますし。それに日常的にだって、これから先のことを互いにこうしていきましょうみたいな話なんてしないでしょ。どんなことも計画通りにはいかないのが人生なんだし。僕は現場でのコミュニケーションというのを1番信じている。だから役についての話し合いというのはしません。
大沢:演技をすればするほど、役の回路というか、癖のようなものができるんです。一旦回路ができたら、そこへ流れるほうが楽ですよね。安全だから。でもそうしたときに、つまらない演劇って始まると思うんです。だからそうならないために、とにかく回路を壊し続ける。自分の過去のキャリアを、ついひとつ前にやった作品のスタイルを壊す。準備にしてもなんでも、前やったやり方は全部やらない。それでも癖というのは出てきてしまうものだけど、でもそうやって破壊して、クランクインするときには常に、デビューしたときに現場初日に行って感じた緊張感と同じ緊張感を持って臨めるように心がけています。
(text=望月ふみ)
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