1982年生まれ、東京都出身。堤幸彦監督の『溺れる魚』(01年)で映画デビュー。テレビドラマ「ごくせん」(02年)で人気を博し、以降、映画、テレビドラマ、舞台、CMと幅広く活躍。人気ドラマシリーズ「相棒 season11」(12年〜13年)に“3代目相棒”として出演したことでも注目を集めた。映画出演作に『逆転裁判』『のぼうの城』(共に12年)などがある。
90年代末期に一大ブームを巻き起こしたジャパニーズ・ホラーを代表する傑作『リング』(98年)を生み出した中田秀夫監督が、新たなホラー作品を完成させた。前田敦子と成宮寛貴のW主演で撮りあげた『クロユリ団地』だ。
前田演じる明日香は両親と弟と共に団地に引っ越してくるが、まもなく隣に住む老人が孤独死しているのを発見してしまう。気づいてあげられなかったことを悔やむ明日香だが、砂場でひとり遊ぶ少年と親しくなるにつれ不可解な出来事が起こるようになる。恐怖を感じた明日香は、成宮演じる遺品整理の清掃員・笹原に助けを求めるが……。
笹原役の成宮寛貴は、これまでにも多くの映画やドラマで活躍しているが、30歳を迎えた今、人気テレビドラマ「相棒 season11」で3代目相棒を務めるなど、一層の注目を集めている。そんな成宮に、本作の撮影現場でのエピソードや役作りなどを聞いた。
成宮:脚本で読んだときよりも、より“ザ・ジャパニーズ・ホラー”になったな、と思いました。こだわりの部分もマニアックですし、後で監督に聞いてみると、「あ、そういうことだったんだ」ということもあり、それを聞いてから見るとまた違ったように見えました。「中田さん、かなりマニアックなことやってるな」と思いました。
成宮:ノーマルなホラーというか。ABCというランクがつくとしたら、よくB級でやってるようなことを、A級のスタッフが一生懸命に面白く作ったというような良さがあると思います。団地でのできごとというのも、視野が狭いというか、ホラーでもいろいろな場所に行ってそこに幽霊がくっついてきて、というものもたくさんありますが、そうではなく、団地という狭い空間での話なので、より日本のホラーという感じが出ていたと思います。誰が住んでいるかわからない隣の部屋から音が聞こえてくるという、自分の家でもありえるような……。日本のホラーって、見た後も余韻が残るような、そういう怖さがありますよね。
成宮:僕が演じていた笹原という役と、前田さんが演じていた明日香というキャラクターは、心のなかに闇や孤独を抱えてるんです。見ている人は前半で明日香のことはだいたいわかるんですが、僕が出てきて彼女に共鳴するということは僕にも同じ何かがあるんじゃないかという風に思ってもらえるようにしなければいけなくって。自分のバックボーンをどこで表現するかが限られているので、そこのチョイスが難しくもあり、楽しみでした。
成宮:ひとそれぞれ色々とあると思いますけど、お金がいいから選ぶのか、なんでもいいのか。笹原の場合は、後者ですよね。生きながら死んでいる感じというか、何も感じないというキャラクターなので。
成宮:そうですね。雰囲気で感じるんでしょうね、動物的に。笹原という人間は、そういう満ち足りないものを満たしていきたいという気持ちがあって、生きながら死んでいるようであっても、やはりどこかで笹原も希望を持っているんでしょうね。だから自殺という結論にはならなかったのだと思うので。やはり人間はひとりでは生きていけないんだなということは感じますよね。
成宮:そうですね、僕がいちばん最初にお会いしたときはAKB48として活動しはじめて、ドラマに出ることになったけど右も左もわかりません、というときだったんですけど、今回、5年ぶりにお会いしてみて、しっかり作品を背負うことができる女優さんになっていましたね。すごく真剣だし、集中力が途切れないところがすごいですね。
成宮:基本的に足の裏に画鋲が刺さったような感覚の芝居を続けていかなきゃいけなかったので、本人は大変だったのではないでしょうか。
成宮:チョコレートをあげました(笑)。今回、かわいい前田敦子さんを1回も見ていないんですよ。ほとんど病気というか霊に侵されている状態の前田さんだったので、顔色も悪かったのでチョコレートを渡してましたね(笑)。
──中田秀夫監督は小沼勝監督のもとで働いていたそうですが、小沼監督は日活ロマンポルノという枠組みのなかで登場人物の深い心理も取り入れたドラマティックな作品を撮っています。本作はホラーという色が強く、家族を失った悲しみや心の闇なども描かれていたのですが、撮影現場はどのような感じだったのでしょうか?
成宮:最初に予定していたお芝居と少し違って、監督から要請されたことは結構ありました。声を低くして欲しいということや、あまり抑揚をつけないように話して欲しいということ、何かをしながら話すというよりはしっかり言葉を言って欲しい、印象派にして欲しいということなど。それで、なおかつ舞台のようにならないようにするのは結構難しかったですね。あと、そっぽを向くなどしてナチュラル感を出したりもしたのですが、そういったことも結構嫌われていたので、難しかったですね。
成宮:そうですね。後で作品を見て思ったのは、結構細かくカット割りがされていたんですよね、例えるなら1行ずつくらいに。まとめて一連で撮る場合の台詞の間合いって、けっこうナチュラルな感じで進んでいくんですが、「ええ」「はい」などが途中に入るということもありませんでした。よーいスタートと言ってから一間くらいおいてから台詞を始めないとノイズが入ってしまうというような、テクニカル的なところもあるんですけれど、その半間半間も使うから、微妙に違和感のある間ができるんです。あとは、明日香の父親、母親が異様に若かったり、彼女が子どもの頃の視点で描かれてるということなど、あれも違和感が残るんですよね。この映画は、違和感で進んでいくというところが不思議ですよね。
成宮:ええ、自分も演じていて違和感があるんですけど、それがこの作品を作っていると思います。音も調整して上げられていたりしますし、僕がやった芝居をベースに、けっこうアレンジやデコレーションを加えているみたいですね。
成宮:けっこう大人びている子で、子どもなんだけどなにかわかっているという雰囲気のある子でした。オーディションのときに監督は「決めてた」って言ってましたね。
成宮:撮影は単体で、僕とは別なことが多かったんです。
成宮:そうですね、撮影でテストだけ一瞬見に行ったりして、どういうお芝居をしているのかチェックはしていました。
成宮:そうですね、さっき言ったどこで自分のバックボーンを表現するかということと、自分の武器を捨てた状態でどう戦うか、いろいろなことを振り落した状態でどういうふうにするんだろう、と。
成宮:「耳なし芳一」みたいな、ドア一枚で恐怖と人間と繋がってるんだけど、本当は繋がってはいけない相手で。すごく切なかったですね。
成宮:最近、考えますね。でも、20代のときは、この仕事が天職だとは思っていませんでした。それは、答えのない仕事だし、人気商売ということもあり、いつなくなるかわからない恐怖心もあるので、「これじゃないかもしれない」、「自分のなかからもっと他にいいものが出てくるかもしれない」、「違う仕事についた方がいいんじゃないか」と迷いながらやってきましたが、30歳になって、「あ、この仕事で生きていくんだな」ってやっと決まったくらいな感じですね。この先どうなっていくのかというのは、まだ分かりませんね。役者のことで頭がいっぱいです。
成宮: 30歳になったからということですかね。年齢は大きいですね。30歳を越えて職業を変えるのってちょっと難しいな、という単純な理由なんですけど(笑)。そろそろちゃんとしっかりここで生きていくと決めた方が、今後もっといい形で表現できると思いました。
成宮:オフをいただきました。ただ、最初はオフだったんですけど、海外の文化や歴史を知るみたいな番組があって、オフを半分にして、その仕事を入れました。でも、それがローマでのロケだったので、仕事を終えた後にヨーロッパ内をうろうろしたり、友だちに会ったりしていました。東京で休みだと1人で過ごすことはあまりないので、1人旅のときは、いろいろと考えますね。
(text&photo=秋山恵子)
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