UULAドラマ『I LOVE YOU』真木よう子&廣木隆一監督インタビュー

ヒットメーカーが新感覚ドラマに挑む!

#廣木隆一#真木よう子

真木よう子は実際会ったらすごい真面目な人だった(廣木監督)

ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合エンタメアプリUULAオリジナルオムニバスドラマ『I LOVE YOU』。本作で、本多孝好の原作を映像化した「Sidewalk Talk」の主演を務めているのが女優・真木よう子だ。

映画『さよなら渓谷』(13年)がモスクワ国際映画祭で審査員特別賞、『そして父になる』(13年)がカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞するなど、世界的に高い評価を得ている作品への出演が続いている真木と、『100回泣くこと』(13年)や『軽蔑』(11年)『余命1ヶ月の花嫁』(09年)など、個性的な役柄の女優を瑞々しく映し出すことで定評のある廣木隆一監督に、お互いの印象や作品の見どころなどを聞いた。

──本作に出演しようと思ったきっかけは?

真木:俳優仲間が廣木監督と一緒に仕事をしていて、「すごくいい監督だよ」っていうのは聞いていたのです。それでこの「I LOVE YOU」という企画をいただき、監督が廣木さんということをお聞きしたので「やりたいです」という気持ちになりました。元々、本多さんの原作も好きでしたので。

──初顔合わせのお二人ということですが、撮影前の印象と、実際お仕事をしてみて、お互いどんな感想を持ちましたか?

真木:対等な言い方になってしまうかもしれませんが、すごく相性がいいなって思いました。決して細かく演出する方ではなく、何度も何度もテイクを重ね、役者側が役になりきる時間を与えてくれるんです。考えて演じないと、OKをもらえないという厳しい面はあるかもしれませんが、役者をちゃんと信頼してくれている感じがして、私はそういうやり方が好きです。ぜひ、長編の映画でもご一緒したいって言ってるんです。

廣木隆一監督

監督:真木さんって色々な役柄をこなしている女優さんなので、とても興味があったんです。どんな人なんだろうなぁって。実際会ったらすごい真面目な人でした(笑)。

──不真面目な方だと思っていたのですか?

監督:いやいや(笑)。色々な役をやられているから柔軟な感じかなって思っていたのですが、役に対してとてもまっすぐに向き合うんです。まあ、そうだからどんな役でもこなせるんでしょうけどね。ちゃんとお芝居をしている。僕はお客さんの目線で、真木よう子という女優さんを見ているだけでした。

基本的に不器用な自分は嫌いじゃない(真木)
廣木隆一監督

──女優さんを演出する上で、なにかこだわりなどはあるのでしょうか?

監督:あんまりないですよ。僕なんて狭い世界で映画を撮っているので。真木さんみたいに、訓練された、お芝居に対してちゃんとしている女優さんは、特に何もすることはないんですよ。ただ、唯一、演技を見ていて、気持ちが入ってないと感じた時だけは「気持ち入っていないよね」とは言います。

──そういうときの監督は、テイクを重ねるんですか?

真木:何度も撮り直すことはこの撮影でもありました。でも、そういうシーンって自分でも気持ちが入っていないなって分かるんです。だから、私にとっては、めげずに何度もテイクを重ねてくれることがありがたいんです。自分のなかで、きちんと気持ちを入れないといけないって、危機感を持たせてくれるし。逆に、自分がダメだなって感じたシーンでOK出されたら「廣木さん、どうなのよ」って思ってしまうでしょうね(笑)。

──真木さん演じる主人公は、夫の前でも弱みを見せないキャリアウーマンですが、彼女をどのようにとらえて演じたのでしょうか?

真木:不器用なんです。それでいて自分も相手も大人だから、強がってしまう部分もあって。ある程度、年を重ねて生きている女性だったら、この主人公の気持ちは理解できると思います。細かい心の揺れ動きだったり、相手に対するちょっとしたイライラだったり……。演じていて、気持ちが分からないということはありませんでした。

真木よう子

──真木さん自身、不器用な人ってどう思いますか?

真木:完璧に器用な人なんていないと思うんです。私は不器用な人ほど魅力を感じます。自分自身も不器用だと思いますし。でも、私は役者だから、あえて器用な人間にならなければいけないとは思っていないんです。もちろん、自分の不器用さに嫌気がさすこともあるし、日常生活においては、直した方がいい部分もありますけど……。基本的に不器用な自分が嫌いじゃないんです。

──年を重ねてそのように感じるようになったのですか?

真木:若い頃は、自分の不器用な部分が嫌いで、変にニコニコしたり自分じゃないように振る舞ったりしていました。でも、ある時から、無理して自分を変えなくても「そのままでいいよ」って言ってくれる人が増えてきたんですよね。

──本作は、1話約10分を5〜6回に分けて配信するというもので、映画や連続ドラマとも違う形態ですが、作品を作り上げていく上で、演出や演じることで意識したことはあるのでしょうか?

監督:そういうことって全然考えられなくて(笑)。編集点とかは、普通に考えて、何気ない部分での流れで、見ている人が色々と感じてくれればいいなとは思いましたけどね。10分ぐらいの中で、毎回盛り上げていったら、大変なことになっちゃうじゃないですか。だから最後まで見てくれるって信じて、一つの作品として作りました。

真木:私も特別意識をして演じたということはなかったです。携帯ドラマだからって何かを変えて演じるというのも、女優として変ですしね。

やりたい作品があれば参加したいし、今は走っていたい(真木)
真木よう子

──この作品はスマートフォンアプリとして配信されますが、日常生活でスマートフォンは活用されていますか?

監督:色々な情報を調べたりはしますが、映像などは見ないかな。

真木:私は情報を得ること以外にも、動画も見たりしますよ。動画だけを見る端末も持っているので、映画を見たりとか。

──生活様式の変化やデバイスの普及で、色々な形で物語が上映されたり、放送されたり、この作品のように配信されたり……。そういう世の中の変化をどのように感じていますか?

監督:映画ってフィルムが減って、デジタルになって、今度は配信という形態も出てきて……。そういう時代になっているんだなという認識はあります。でも、どんな形でも“作品”を作っているんだって意識を持っていれば、それでいいんじゃないですかね。この「I LOVE YOU」という作品も、映画的なのかどうかというのは分からないけど、楽しかったです。

──この作品ではお互いの「歩くスピードの違い」というのもテーマになっていると思いますが、真木さんは、今年だけでも数々の映画やドラマなどに出演ラッシュが続いています。今の歩みはご自身で考える速度と合っていますか?
真木よう子(左)と廣木隆一監督(右)

真木:(今年公開の作品は昨年撮影が多いので)去年は走っていましたね(笑)。焦る必要はないと思っているのですが、ゆっくりしたいとも思ってないんです。やりたい作品があれば参加したいし、今は走っていたいですね。

──作品の見どころを教えてください。

真木:脚本を読んだとき、大人向けの素敵な物語だなって思いました。淡々と食事のシーンが流れていくのですが、お互いの表情とか、良いシーンがたくさんあります。最後まで見てもらえれば、本当に良い話だなって実感できると思います。携帯配信なので、若い方も見ることが多いと思いますが、諦めずに最後まで見てほしいです。

(text&photo=磯部正和)

UULAドラマ『I LOVE YOU』公式サイト:http://uula.jp/sp/iloveyou/

廣木隆一
廣木隆一
ひろき・りゅういち

1954年1月1日生まれ、福島県出身。1982年に映画監督デビューを果たすと、1993年の映画『魔王街・サディスティックシティ』で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ(ビデオ部門)を獲得。2003年公開の『ヴァイブレータ』ではヨコハマ映画祭をはじめ、国内外40以上の映画祭で数々の賞を受賞。近年は幅広いジャンルの作品でその才能を発揮している。

真木よう子
真木よう子
まき・ようこ

1982年10月15日生まれ、千葉県出身。映画『DRUG』(01年)で女優デビュー。06年の『ベロニカは死ぬことにした』で映画初主演を果たすと、数々の映画・ドラマに出演。10年にはNHK大河ドラマ『龍馬伝』で、坂本龍馬の妻・お龍を好演した。13年は劇場公開作品が相次ぎ、上半期だけでも『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』『さよなら渓谷』『そして父になる』が公開。