1991年3月15日生まれ、神奈川県横須賀市出身。モデルとして活躍後、映画『幸福な食卓』(07年)で注目を集め、『ライフ』(07年)で人気を確立。映画では『ハルフウェイ』(09年)、『武士道シックスティーン』(10年)、『上京ものがたり』(13年)などに出演。テレビ番組『ZIP!』の司会を担当したほか、歌手としても活動。幅広く活躍する。
人気漫画家・西原理恵子の自伝的作品を映画化した『上京ものがたり』。09年に深津絵里主演で映画化された『女の子ものがたり』の前日譚となる本作は、主人公が上京し、作家デビューするまでの苦難の道のりが、時には明るく、そして時には切なく描かれている。
劇中で、主人公・菜都美を演じたのが、若手実力派女優の北乃きいだ。劇中では、菜都美の不安や葛藤を瑞々しく演じている北乃だが、本作に臨む際には多くの迷いや不安があったという。そんな北乃に撮影時の苦労話や本作の見どころなどを聞いた。
北乃:自分とは違うタイプの女の子だと感じたので、頭のなかで「菜都美はこういう子だ!」って考えるのではなく、感覚で演じるように心掛けました。そのために、メイクが終わったら、ご飯を食べたり、寝っころがったりして、ほとんどの時間を(撮影の中心となった菜都美の)部屋のなかで過ごしました。
北乃:私自身も一人暮らしをしているのですが、ストーブを拾ってきたりという経験はないですね(笑)。でも祖父がリサイクルショップに行くのが好きだったりして、ソファーとか椅子とかをよく拾ってきたりしてたんですね。だからあのシーンを演じていて、おじいちゃんを思い出しちゃいました。
北乃:二人のシーンはアドリブが多かったんです。台本のセリフ自体が自然だったということもあるとは思うのですが、自分で演じていたのに、出来上がりを見たときに、どこからが台本のセリフで、どこからがアドリブだか分からなかったぐらいですから。各シーン、最初はセリフで、後半はだんだんアドリブになっていくという撮影方法でしたね。
北乃:同級生というのはあまり意識はなかったですね。元々、大好きな俳優さんで、過去の作品も結構見ていたので、共演してみたいと思っていたんです。芝居に対して事前に打ち合わせはしなかったのですが、本番になると、私がどんな球を投げても返してくれるんです。「なるほど、そうくるんだ!」っていう面白さがあったので、芝居をしていてとても楽しかったです。年は一緒ですが、役者としては私より先輩ですし、とても勉強になりました。共演させてもらって嬉しかったですね。
北乃:実は、この作品に参加させていただくことになって、台本を読んだとき、あまり自信が持てなかったんです。物語の山場を、私自身が見つけ切れなくて……。クランクインする前から、いつも以上に悩んでいた作品です。
元々、どの作品でも自分自身の自己評価は本当に低くて、100点満点だったら、良くても20点ぐらいなんですね。この作品は(森岡利行)監督が結構自由にやらせてくれる方だったので、私もいろいろとアイデアなどを提案させてもらったんです。なのに、やっぱり作品を見て自信が持てなくて。だから、池松さんとのシーンが印象的と言っていただけるのは嬉しいですね。
北乃:おにぎりを食べながら泣くシーンがあるんですね。そのシーンは印象に残っています。監督やスタッフさんが、みんなそのシーンの撮影後、泣いていて「なっちゃん良かった」って言ってくれたんです。元々台本を読んでいてストーリーを知っているスタッフさんが涙を流してくれるって初めてのことだったんです。やっぱり映画ってみんなで一緒に作っているんだなって改めて実感できたシーンでした。
北乃:『アンフェア』という作品でご一緒した(寺島)進さんが仰った言葉は衝撃的でした。私が「この仕事、本当に向いてないって思うんです」って進さんに話したら「俺だって今でも向いてないと思うことあるよ」って仰ったんですよ。すでに、あれだけの実績がある俳優さんなのにですよ。だから「進さんでもそう思うんですか?」って聞いたら「でも役者ってそういう仕事だと思うんだよね」って。少し楽になったというか、そう思ってもいいんだって、私自身の考え方が変わりました。
あとは(フジテレビ系ドラマ『流れ星』で共演した)原田美枝子さんの言葉にも助けられました。いつもニコニコされているのですが、現場では口数が少ない方なんですね。その原田さんが、ドラマの打ち上げで、最後、私が失礼させていただくときに挨拶したら、耳元で「本当に頑張りすぎるから、(無理しちゃ)ダメよ」って言ってくれたんです。当時、私は色々なことで悩んでいた時期だったので、自分のことちゃんと見てくれていたんだなって思ったら、涙が止まらなくて……。他にも、私が辛いときに、色々な先輩との良い出会いがあって、助けていただいたことは多いです。
北乃:普通の人とは逆かもしれませんが、気分が落ちているときは、暗い音楽とかを聞いて、一旦、とことん落としていきますね(笑)。
北乃:格好悪いことが出来たり、状況によっては折れることが出来る、総じて肝がすわっている女性というのは強いんじゃないかなと思いますね。
北乃:夢を追いかける人に贈る人生応援ムービーです。「自分には出来ないかも」「こういうの出来たら格好いいのにな」で終わらせてしまっている人の背中を押してくれる作品です。菜都美が、作品のなかで「いま苦しかったり、悲しかったり、泣きたかったり……そんな人が、この漫画を読んで、少しでも元気になってくれたらいいな」って言っているシーンがあるのですが、この映画にもそういった思いが込められていると思いますので、肩の力を抜いて見て欲しいです。
(text&photo=磯部正和)
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