『エリジウム』ジョディ・フォスター インタビュー

社会派SFエンターテインメントの見どころを語る

#ジョディ・フォスター

私が演じた役はいわゆるステレオタイプの悪者ってわけじゃない

アカデミー賞作品賞にもノミネートされたデビュー作『第9地区』(09年)で世界中の注目を浴びたニール・ブロムカンプ監督。マット・デイモンとジョディ・フォスターが豪華競演を繰り広げる『エリジウム』は、その彼の最新作だ。

2154年、美しいスペースコロニー「エリジウム」には富裕層が、荒廃した地球には貧困層が暮らすという二極分化された社会を舞台に、余命あとわずかとなった貧しい青年が、エリジウムに入国しようとする命がけの戦いが描き出されていく。「エリジウム」とは、ギリシャ神話に出てくる永遠の理想郷のことで、格差社会への痛烈なメッセージが秘められている。

そんな本作で、エリジウムの完璧な生活を守ろうとする政府高官のデラコートを演じたフォスターに、映画について話を聞いた。

──あなたが演じたデラコートという女性の役柄について教えてください。

フォスター:彼女はいわゆるステレオタイプの悪者ってわけじゃないの。彼女には計画があって、彼女が108歳だってことを忘れないでほしいんだけど、彼女が覚えている地球というのは崩壊しかけていて、暮らせるような場所ではなかったの。そこでその頃起こった悪いこと──いま、現実世界で問題となっている公害、環境破壊、人口増加といった問題──を一掃するために、新しい居住空間であるエリジウムが作られたのね。そこでの彼女の最大の使命は、作り上げた居住空間を守ること、ユートピアとも言えるこのエリジウムを守ることなの。

──マット・デイモンが演じるマックスはどんな男性なんですか?

フォスター:彼は地球に住んでいる人間で、特にこれといった大きな人生の計画は今までなくて、孤児であり、戦争で荒廃し、破壊された世界、さらにその大破局後の世界、ロサンジェルスで辛い人生を過ごしてきたの。それで、なんとか生き延びようとしているところで、その生き延びる方法をたまたま見つけるのね。あるデータを頭のなかに入れて、それを運搬する方法よ。そのためには頭にプラグをつけなきゃいけないんだけどね。すべての情報やデータが頭のなかに入り、このデータをエリジウムに持ち込む「運搬器」となるわけね。

ニール(・ブロムカンプ)ほどの決断力を持っている監督には初めて出会った
L.A.プレミアでの模様

──さすが『第9地区』の監督だと思わされる設定となっていますね。

フォスター:世界は(エリジウムと地球の)2つの世界に分けられていて、それぞれとても異なる世界よ。1つは世界が破滅した後のロサンジェルスで、みんなが掃き溜めのようなところに住んでいるわ。人口も過密状態で、あちこちが焼け焦げていて、有毒なガスが発生していて、人々は咳をしたり、病気で死んでいったりしているわ。みんながそこから出て行きたいのよね。もう1つの場所は「エリジウム」と呼ばれる理想郷のような住居空間ね。お金を持った人間が逃げてくる場所として作られたの。そこではすべての病気が治るし、素晴らしい生活を送れる場所なの。単調な作業はすべてロボットがやってくれるから底辺層はいないわ。

L.A.プレミアでの模様
ジョディ・フォスター(中央)

──本作に出演した理由は?

フォスター:彼は『第9地区』の監督で、素晴らしい映画だと思ったから、「次の映画ではぜひ一緒に仕事をしたいわ」って言ったの。

──実際にニール・ブロムカンプ監督と仕事をした感想は?

フォスター:とても楽しかったわ。彼と初めて会った瞬間に分かったわ、この仕事がすごく特別な体験になるってことが。彼はとても優しい人ね。話をよく聞いてくれるし、決断力があるわ。いつもみんなが「監督は決断力に長けている」って言ってるの。ニールほどの決断力を持っている監督には初めて出会ったわね。時には17時半に家に帰ることがあって、「必要なシーンは全部撮ったのよね?」って心配になることもあるわ。あまりにも楽しくて簡単だから「全部撮ったのかな?」って。すごく楽しく仕事をさせてもらったわ。

『エリジウム』場面写真

──最期に映画の見どころを教えてください。

フォスター:『第9地区』みたいに非常に知的な映画になると思うわ。ファンタジー要素の部分が非常に知的なの。社会的により深い意味を持っているし感動的だわ。『第9地区』とこの映画の間に似ている部分があるとしたら、両方とも普通の人間がある朝、それは「運命の朝」とも言えるんだけど、とにかくある朝目覚めて、人生ががらりと変わってしまい、最終的に自分の使命を果たすために精神的にも肉体的にも辛い体験をするの。彼らの使命、または運命というのは、正しいことをして、愛でつながることなの。

ジョディ・フォスター
ジョディ・フォスター
Jodie Foster

1962年11月19日アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。3歳の頃からテレビCMでキャリアをスタートし、8歳のときに『ジョディ・フォスターのライオン物語』で映画デビューを果たす。1976年『タクシードライバー』で世界的に注目される。『告発の行方』(88年)、『羊たちの沈黙』(91年)と2度のアカデミー賞主演女優賞に輝く。主な出演作に、『コンタクト』(97年)、『パニック・ルーム』(02年)などがある。91年、自ら出演もした初監督作品『リトルマン・テイト』で高い評価を得た。92年には“Egg Pictures”を設立。同社が製作し主演も兼ねた『ネル』(94年)ではアカデミー主演女優賞にノミネートされた。Netflixオリジナルドラマでエミー賞受賞作『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(13・14年)をはじめ、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(14年)、『ブラック・ミラー』(17年)を監督。

ジョディ・フォスター
エリジウム
2013年9月20日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
[監督]ニール・ブロンカンプ
[出演]マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー
[原題]ELYSIUM
[DATA]2013年/ソニー・ピクチャーズ