1955年1月13日生まれ、東京都出身。1973年にキャンディーズの一員として「あなたに夢中」で歌手デビューを果たす。多くのヒット曲をリリース後、78年に解散。80年からは女優活動をスタート。現在までに映画、テレビ、舞台など幅広い分野で活躍を続けている。主な出演ドラマは『オレゴンから愛』シリーズ(84〜88年)、NHK連続テレビ小説『こころ』(03年)、『風のガーデン』(08年)、『DOCTORS 最強の名医』(11〜13年)など。映画出演作に『ヒポクラテスたち』『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』(共に80年)、武田鉄矢との共演作『俺とあいつの物語』(81年)、夫・水谷豊との共演作『少年H』(13年)がある。
2010年に98歳のときに刊行した処女詩集「くじけないで」と続く第2詩集「百歳」で、累計部数200万のベストセラーを記録した柴田トヨの物語が感動の映画化。13年1月、101歳で天に召されたトヨの心の奥に染みわたる詩に乗せて、名女優・八千草薫主演によりその人生を紡いでいく。
90歳を過ぎたトヨに詩を書くことを勧めた、ちょっと頼りない1人息子・健一(武田鉄矢)のしっかり者の妻・静子を演じた伊藤蘭に単独インタビュー。トヨの詩集との出会い、八千草との共演、静子を演じてみての想いなどを聞いた。
伊藤:トヨさんが詩集を出されたばかりの頃に、友人がサイン会か何かに出掛けてとても感銘を受けて帰ってきたんです。私の母も90歳近いことがあり、勇気が出るから読んでみてと言って詩集をくださって。そんなご縁で読んでいました。
それから、トヨさんが私の主人の(水谷)豊さんのことがをお気に入りの俳優さんのひとりだとに挙げていてくださっていて、そのご縁で主人が詩集をいただいて、家に持って帰ってきたんです。また、今回の作品資料としてもいただきました。だからずっとトヨさんのことは知っていましたし、映画になるんだと知って、とてもステキなことだと感じました。このオファーはぜひ受けたいと思いましたね。
伊藤:当然昔は大変なご苦労があったわけですが、この作品ではトヨさんの過去にまでさかのぼってちゃんと丁寧に描いています。苦労して辛い思いをしてきたからこそ、ああいう優しさ、強さの土台の上にある優しさというのかな、そういうものをずっと心に保ち続けていられるんだなと、改めて日本人女性のたくましさを感じました。
伊藤:八千草さんは昔から大好きな女優さんでした。決して何かオーバーに表現するということをしなくても、静かに伝わってくる強さのある女優さんだと思うんです。ふわっとしている雰囲気もトヨさんにすごく似合っていましたみたいでした。一緒にいて日向ぼっこをしているような、何も話さなくてもずっと一緒にいたいと思わせてくださる女優さんで、トヨさんと重なりました。
伊藤:やっぱり私がついていなきゃダメだって思わせてくれる旦那さんの存在によって、静子さんも成長したんだなと思いますね(笑)。初めてあの家を訪ねてきたときは、本当に頼りない楚々とした女の子だったのに。
伊藤:そうですね。私だったら持たないと思います(笑)。でもやっぱり憎めない何か、離れたらもっとダメになっちゃうんじゃないかしらと思わせる男性像を、武田さんが本当に魅力的に演じてらっしゃる。だから説得力がありますよね。
伊藤:そうなんですよ。それがカワイイと思っちゃうんですよね。
伊藤:えー、本当ですか。それは嬉しいですね。というか、私のことをちゃんと認識していてくださっていただけでも嬉しいです(笑)。
伊藤:深川監督が様々いろんなアプローチを考えてらっしゃって、何通りかのいろんなパターンで撮影したんです。実際にどれが使われたのか、私のなかではわからなかった。作品を見て、こういうことだったんだって初めて分かったというか。静子さんも、全体を通してみると思っていた以上にしっかり者になっていて。だから新鮮な気持ちで作品を見られました。
監督は本当に紳士的な方で、決して声を荒げることがありません。静かに自分の意思を押し通す感じの方ですね(笑)。いろんな何通りかのパターンで撮ったとお話ししましたが、決めてかからないというところは、その場じゃなきゃ出ない空気をちゃんと見てくださる監督なんだと思います。
伊藤:静子さんは縁の下の力持ちみたいな感じに見えるんじゃないかなと思うんです。でもそんな彼女が、思いのたけを夫にぶつけるところとか、感情がこぼれるところは、ただ耐えるだけじゃなく、この人も生きているんだと強く感じて印象に残っています。
たとえば自宅でのやりとりですとか、病院で、今回も裏切られたってこぼすシーン。でもお義母さんに支えてもらって。きっとあんな風にして、お義母さんのちょっとした優しいひと言一言となどで乗り越えてきたんだろうなって。家族ってそうだと思うんですね。何気ない言葉掛けや励ましで、自分が思う以上に助かっていることって、いっぱいあるんじゃないかと思います。
伊藤:ずっとやりたいやりたいと思っていて、だけどできていなくて。だからこれからもやらないだろうなと思うんですけど、乗馬かな。馬に乗りたいなと常々、思っているんですけどね。でもきっと、やりません(笑)。
伊藤:とても感覚的なことですが、日常生活では行動や考え方に色々な制約や規制が出てきがちです。それでもいつも心の真んなかは自由でいたいなと思っています。何を感じるかとか、どう日常を生きるにせよ、常に自由を感じていたいです。
伊藤:日々暮らしていると、どうしても心のなかに結び目ができていくというか、疲れなどで固くなったものがたまっていきやすいと思います。トヨさんの詩のなかに「溶けてゆく」という一篇があります。本当にさりげない日常のものを見て描いてらして。ポットのお湯を注ぐとカップのなかの角砂糖が溶けていく、言葉はまるでポットのお湯のようだといった内容のシンプル簡単な詩なんですけど、読んだときに涙が出そうになりました。本当に溶けていくな、この優しさにって思って。そういう温かく静かな感動がこの映画には溢れていると思うので、そこをぜひ感じ取っていただけたらと思います。
(text&photo=望月ふみ)
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