1983年6月3日生まれ、神奈川県出身。02年、テレビドラマ『ロング・ラブレター 漂流教室』で俳優デビュー。翌年、佐々部清監督の『チルソクの夏』でスクリーンデビューを果たす。テレビドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。主な出演映画に『ワルボロ』『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(共に07年)、『群青 愛が沈んだ海の色』(09年)、『のだめカンタービレ 最終楽章 前編・後編』(09、10年)、『東京島』(10年)、『日輪の遺産』(11年)など。公開待機作に『東京難民』『L♡DK』『THE NEXT GENERATION -PATLABOR-』(共に14年)がある。
戦国の時代に「美」に対する見識で、織田信長や豊臣秀吉にさえ一目置かれた茶人・千利休。異常なまでの「美」への探求は、どこから始まったのか。『利休をたずねよ』は、直木賞作家・山本兼一が大胆な仮説で利休の美に迫った同名作を、原作者自らのラブコールにより市川海老蔵主演で映画化した作品だ。
日本の美を余すところなくとらえ、モントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞した本作で、秀吉に仕える石田三成を演じた若き演技派・福士誠治に単独インタビュー。本作における三成の想いや、利休役の市川海老蔵、秀吉役の大森南朋との共演から、福士自身の俳優としての原点などを、明るい人柄で場を和ませながら答えてくれた。
福士:光栄に思いました。『利休にたずねよ』という大きな作品に自分が出られるという喜びと、誰もが知っている人物を演じられる嬉しさ。単純に、たずさわれて嬉しい、光栄だという気持ちでした。
福士:プレッシャーというのは、モノづくりをする上で、いつでも伴うものです。だから石田三成を演じるから特別にというものではありません。ただ、過去の人物を現代によみがえらせるというのは、役者として勝負ではありましたね。
福士:利休にフィーチャーしているところが、まず面白いですよね。それから利休が生きていた時代の“美”は、とても大きな存在だったんだろうと感じました。日本ならではの美意識が脚本からも伝わってきました。
福士:石田三成って、特定のイメージがあると思うんです。参謀だったり策略家だったり。そうした面も持ちつつ、今回の作品での三成の役割は、利休を脅威に感じている人物であり、そのことを秀吉に伝えなければという想いが強い人。だけど、なかなか秀吉は動いてくれず、三成はやきもきしている(笑)。僕のお芝居で、より利休の存在の大きさが見えたらと思いました。あと、利休と秀吉には勝てない三成といいますか。三成を小者というのは変ですが(笑)、利休と秀吉の前ではどうしても器の違いが出てしまう。今回は合戦のシーンもありませんし、彼が知恵を絞って何をしたという部分も登場しませんので、普段のイメージとは違う三成を出さなければいけないと思いました。
福士:それがたぶん小者っぷりということだと思います。三成は、このふたりには勝てないな、というのをすぐに感じたんです。現場で秀吉役の南朋さんとお芝居したり、北野大茶会で、海老蔵さん演じる利休と秀吉のシーンなどを目の前にして、利休と秀吉と、三成との差というものを感じました。
福士:エネルギーの絶対量がすごい方。僕が共演させていただいたのは、利休の静と動の時代でいうなら、静の時代。動は利休の過去にあたるので、僕は一度も過去の利休を見ていません。でもたぶん、動の頃と持っているエネルギー量は変わらないんですよね。むしろ、静のときのほうが大きいんじゃないかと思ってしまうくらい。感動しましたね。あり方として。
福士:南朋さんは、秀吉そのものでした。とても自由で。それが心地よかったのを覚えていますね。秀吉は、所作もできない人。だからこそ、自由に動き回る。それに対応するのが三成の役になるわけですが、すごく楽しかったですね。「三成、見ろ!来い!」とか言われて(笑)。
福士:利休の弟子の宗二が切られるシーンがあるんです。あのシーンを見ていて、田中監督のこだわりが垣間見られたというか。宗二が切られるところを映さずに、返り血を浴びた利休を撮ったんです。しかも、見ている分には、OKだろうと思ったんですが、監督はもう1回と。利休の切なさを出したいというような演出をされているのを盗み聞きして(笑)。素晴らしいなと思いました。血のりは撮り直すのが大変なんですよ。でもそういう問題ではなく、監督にははっきりとしたこだわりがある。あぁ、これが美の追求なのかなって。すごくステキな瞬間だと思いました。
福士:茶会のシーンとか、上から下を見ると圧巻でしたね。色鮮やかで。それに比べれば、現代は地味になったなぁと(笑)。もちろん、今回は鮮やかなものをあえて選んでいるとは思うんですが、それにしても本当に綺麗でした。それから、監督が思い描く所作や撮り方、ライティングなど、本当に美しい映像が多いと思います。情緒があって。映像と会話できる作品だと思います。
福士:目に見えないものは美しいと思うと同時に怖いです。人の心とか。美しいけど怖い。今回の利休も目に見えない美しさを探求している部分があると思うんです。人の心を打つというね。それって果てしないものじゃないですか。でもそれを追い続けたからこそ、歴史に残る方になったのかなとも思います。
福士:今回の登場人物でいったら、織田信長に会ってみたいですね。たぶん伊勢谷さんの方がかっこいい顔立ちだと思いますけど(笑)。織田信長を演じられる方って、みんなかっこいいじゃないですか。実際にはどうなんだろうって思いますね(笑)。あと、やっぱり三成にも会ってみたいです。会ったからってお芝居が変わるかというと、そうじゃないかもしれませんが、こういう人だったんだって思えたら、僕のなかでの謎解きができるかなと思います。
福士:たくさんあると思いますよ。何もわからないところから始めたので。今現在もどんどん変わっていると思います。作品をやるごとに変化っていうのは生まれてくるものだと思うので。自分では認識していないにしろね。それが積み重なったときに、もしかしたら意識的に変化というのも少し感じることができるのかもしれないですね。
福士:映画デビュー作の『チルソクの夏』には、やはり影響を受けています。僕の役者としての原点は佐々部清監督との出会いといってもいいと思います。佐々部監督のモノづくりに対する姿勢というのは、いまでも僕自身、持っておこうと心掛けています。平たく言えば、一生懸命さというのかな。人としては大先輩の方が、土臭い泥臭いというか、そうしたものを持って、ひとつのものを作り上げている。そしてその気持ちに反応したスタッフさんも、同じ想いで作品を作っている。本当に美しい姿でした。いまでも忘れられない教えですね。
福士:具体的なところではないですね。こういう作品をやりたいというようなものは。やっぱりタイミングなので。役者としては、人の心を動かせる俳優になりたいです。あとは自分自身がこの仕事を楽しいと感じ続けられたら幸せかな。楽しいと思えられれば、負けない気がする。モノづくりって楽しいんだぞというのを忘れたら嫌ですね。それが目標かな。
福士:今回の『利休をたずねよ』は、特に映画館で観てほしい作品です。日本人にしか撮れない美しい映画になっていると思います。DVDで見てもらえるのも嬉しいんですけど、この作品の場合は特にスクリーンで見ていただきたい。きっと何かが残ると思います。
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