1961年7月26日生まれ、ロンドン出身。映画プロデューサーの息子として生まれ、ハーバード大学で美術史の学位を取得。『ハリー・ポッター』シリーズ全8作(01年、02年、04年、05年、07年、09年、10年、11年)の製作をつとめた。また『アイ・アム・レジェンド』(07年)、『縞模様のパジャマの少年』(08年)などの製作もつとめている。03年にはイギリス人プロデューサーとして初めてショーウエストのイヤー・オブ・ザ・プロデューサーに選出され、11年にはシネヨーロッパでプロデューサー・オブ・ザ・ディケイドに選ばれている。
登場人物はたった2人。しかも途中からは女性1人の孤独な姿が映し出されるだけ。宇宙が舞台ではあるけれど、モンスターが出てくるわけでも派手な闘いがあるわけでもない。いわゆる“ヒットの法則”をことごとく覆すような『ゼロ・グラビティ』だが、世界中の人々を感動させ、全米では初登場1位、全世界興行収入600億円(2013年12月2日現在)を記録する大ヒット作となっている。
この異色作をプロデュースしたのはデイビッド・ヘイマン。シリーズ映画において歴代最高額の興行収入を達成した『ハリー・ポッター』シリーズの全8作品の製作をつとめた人物だ。同シリーズが、クリス・コロンバスにマイク・ニューウェルら作風の異なる多彩な監督たちの連作のような形になりながらも統一感のあるものに仕上がったのは、ヘイマンの手腕があってこそ。
本作は、そんな彼が『ハリポタ』後に手がけた作品で、監督は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(04年)でも組んだアルフォンソ・キュアロンとくれば、今回の大ヒットも当たり前に思えてしまうが、ヘイマンは、製作段階ではビジネス的な成功についてはまったくの未知数だったと語る。
「この映画の脚本を書いたのはキュアロン監督と息子さんで、脚本自体は素晴らしいものでした。一方で、多くの“規則”を破った作品でもありました。登場人物は2人で、(中盤からは)女性1人で1時間もたせなければならない。しかも彼女は40代後半で、宇宙服を着ていてあまり(姿が)よく見えない──普通だったら、すべてNGなことばかりでした。これは映画ビジネスであってアートではないので、投資する側からすれば売り上げをあげなければいけませんから。
幸運なことに、今回組んだワーナー・ブラザースはフィルムメーカーをきちんとサポートしてくれる会社で、クリント・イーストウッド監督やクリストファー・ノーラン監督(『インセプション』)など、良質な作品を安定して作る監督を強く支持してきた歴史があります。キュアロン監督も支持するに足る作り手で、本作は、ビジネス的に成功するかはまったく分かりませんでしたが、クリエイティブな意味で素晴らしい作品になるという確信がありました」
突発的な事故により宇宙に放り出されてしまった人間の生還劇を描いた物語だが、ヘイマンは、映画製作のプロセスは主人公の過酷な闘いを彷彿させるものだったと笑う。
「当初、私たちには“無重力”というものを映像化する手段がわかりませんでした。(様々な過程で)たくさんの逆境があり、否定的なことをいう人々もいました」
最終的にはロボット工学をも取り入れ実現したという宇宙空間の映像は、宇宙飛行士も驚いたというリアルさて、それだけで感動を誘う出来映えだが、撮影までには数多くの困難と課題が立ちはだかったという。そんな本作の製作は、ヘイマンがキュアロン監督から協力を求められたことからスタートした。
「(協力を求めてきた)当時、監督は仕事上でも個人的にも様々な問題を抱えていて、そんな状況のなかで“逆境に立たされた人間”の映画を作ることになりました。この映画のテーマのひとつは再生です。逆境に立たされたときにこそ人間は再生することができると思うんです」
キュアロン監督とは個人的にも深い交流があり、「監督は私の息子のゴッドファーザーでもあるんです」というヘイマン。監督との仕事を“特権”だとも感じていると話す。
「キュアロン監督は計り知れない才能をもつ素晴らしい監督だと思います。そして彼は素晴らしい指導者でもあります。私はプロデューサーとして、彼が作りたいものを実現するために、何でもやろうと思いました」
作品を適切な形で公開してビジネス的に成功させることはプロデューサーの仕事の一部だが、ヘイマンは、クリエイターたちのビジョンを実現させることこそが最大の仕事であると語る。
「映画自体が素晴らしければ、成功するチャンスが大きくなります。もし、ビジネス的な成功だけの観点から作品を作ったとしたら、観客はそれを感じ取るはずです。サポートとは、監督が欲しがるものをすべて提供することではありません。監督のアイデアをきちんと実行し、より良い作品になるように疑問を投げかけていかなければなりません」
また彼は、観客は作品のなかに込められた情熱を感じ取ってくれるはずだとも話していたが、それこそが、本作のヒットの源泉と言えるのだろう。
「この映画は、普通だったら成功しないと言われる要素がたくさんあるのにヒットしたことが嬉しいですね。今、映画ビジネスでは、様々な(成功の)要素が揃っていなければダメだと言われることが多いのですが、この映画が成功したことで、今後、投資者に『ヒットの法則に外れる作品でも、大丈夫な場合もあるんだ』と思ってもらえたら嬉しいですね」
『ゼロ・グラビティ』は12月13日より全国公開される。
NEWS
PICKUP
MOVIE
PRESENT
-
【舞台挨拶あり】齊藤工が企画・プロデュース『大きな家』公開直前舞台挨拶付試写会に15組30名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.22 -
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29