[監督]リー・ダニエルズ
[脚本]ダニー・ストロング
[出演]フォレスト・ウィテカー、オプラ・ウィンフリー、ジョン・キューザック、ジェーン・フォンダ、キューバ・グッティング・Jr、テレンス・ハワード、レニー・クラヴィッツ、ジェームズ・マースデン、デヴィッド・オイェロウォ、ヴァネッサ・レッドグローブ、アラン・リックマン、リーヴ・シュレイバー、ロビン・ウィリアムズ
[原題]The Butler
[DATA]2013年/アメリカ/アスミック・エース/132分
南部アメリカに生まれ、幼くして両親を亡くし、1人で生きてきた黒人男性、セシル・ゲインズ。下男からホテルのボーイとなり、ついにはホワイトハウスの執事となり、ケネディ、ニクソン、レーガンら7人の大統領に仕えた人物の半生を描いた感動作『大統領の執事の涙』が、2月15日より公開される。
激動の時代に“世界の中心”で起きた出来事を目撃してきたセシルを演じたのは、オスカー俳優フォレスト・ウィテカー。前受賞作『キング・オブ・スコットランド』(06年)ではウガンダの独裁者アミン大統領の無邪気さと狂気を熱演した彼だが、本作では一転、国のトップのために忠実に働く男が直面する、黒人としての苦悩、家族との確執などを抑えた演技で演じていく。
オバマ大統領も涙したという本作について、主演のウィテカーに聞いた。
ウィテカー:この映画が事実に基づいて作られているというのは、ある意味素晴らしいことだね。演じる役によっては、どこから手をつければいいのか分からないことが時々あるけど、本作についてはそういうことはなかった。この役の場合は、大統領に仕えた人物であることが分かっていたわけだし、しかも特定の執事という仕事をしていた男だということが分かっていた。だから、それについて調べたんだ。おかげで、僕の想像力を使って埋めていかなくてはいけない空白を埋めていくことができたんだ。
ウィテカー:この映画で僕が演じたのはあくまでセシル・ゲインズであり、モデルになった人はユージン・アレンという人物だ。だから、僕には、完璧にその人物にならなくてもよいという自由なやり方ができたんだ。だけど、例えば『ラストキング・オブ・スコットランド』(06年)のときは、人々がみんな僕が演じた役(イディ・アミン大統領)を良く知っていたから難しい部分があった。でも、重要なのはそれぞれの役の精神を描き出すということ。その役を丸写ししようとすることではないんだ。(ジャズサックス奏者チャーリー・パーカーの生涯を描いた)『バード』(88年)もやったから、こういう作品には何度か出演しているんだけど、今回の場合はそれに比べたら“自由”があったと思う。ただし、彼の家族がこの映画を見るという部分以外はね。つまり、彼の家族に対して僕は責任があるわけだからね。
──ドワイト・アイゼンハワーをロビン・ウィリアムズが、リチャード・ニクソンをジョン・キューザックが、ロナルド・レーガンをアラン・リックマンが、ナンシー・レーガンをジェーン・フォンダが演じるなど、そうそうたる名優たちが出演していますが、共演した感想は?
ウィテカー:僕は本当に恵まれていたと思うよ。非常に興味深かったのは、ケネディを演じたジェームズ・マースデンが現場に来た瞬間に、またはレーガンを演じたアラン・リックマンが現場に来た瞬間に、現場の空気がすべて変わることなんだよね。新しいスタッフが来て、新しい人たちに囲まれる。そしてそれぞれの人たちが本当に素晴らしいものをそこにもたらしてくれた。ジョン・キューザックも素晴らしいものをもたらしてくれたし。ロビン(・ウィリアムス)も素晴らしいものをもたらしてくれた。彼らとの共演は喜びだったよ。
ウィテカー:この映画には、アメリカの激動の歴史が、ひとりの人間の感動の旅路を通して描かれていると思うんだ。さらに、この映画は、家族の愛や結び付きについてでもあり、男と女の、そして、父と息子についてでもあると思う。
ウィテカー:日本の観客はこの映画を好きになってくれるんじゃないかと思っているよ。なぜなら、この映画の核心に描かれていることは、究極的には家族についてだからね。自分のアイデンティティを見出そうとしている息子について、そして息子と父親との戦いが描かれている。でも、最終的にはふたりは再びお互いを理解し、感謝し合うんだ。それから良い人生をなんとか掴もうとすることについて描いた作品でもあると思う。この映画には、そんな普遍的なテーマというのが描かれていると思うんだ。