『ラヴレース』アマンダ・セイフライド インタビュー

時代に翻弄された女性の数奇な人生を熱演した若手女優

#アマンダ・セイフライド

私はチャレンジングな役が好き

1972年、アメリカに“ポルノ・シック(おしゃれポルノ・ブーム)”を巻き起こし、女性たちを劇場へと走らせ社会現象にまでなった伝説的作品『ディープ・スロート』。この映画の主演女優リンダ・ラヴレースの数奇な人生を描いたのが『ラヴレース』だ。

信仰心の厚い厳格な家庭で育った女性が、なぜ『ディープ・スロート』に出演したのか。そして、その後、女性運動活動家となった理由とは──?

誰も知らなかった衝撃の真実を体当たりで演じたのがアマンダ・セイフライドだ。ドラマ『ヴェロニカ・マーズ』(04年〜06年)で奔放な役柄を演じる一方、『マンマ・ミーア!』(08年)や『ジュリエットからの手紙』(10年)など清純派の印象も強いセイフライド。ハリウッド期待の若手女優として着実にキャリアを積み重ねている28歳の彼女に話を聞いた。

──あなたは1985年生まれですが、リンダ・ラヴレースや映画『ディープ・スロート』のことを知っていましたか?

セイフライド:いいえ、この映画のために(『ディープ・スロート』製作の内幕を追ったドキュメンタリー)『インサイド・ディープ・スロート』(04年)を見るまでは、映画のこともリンダ自身のことも何も知りませんでした。だから両親にも当時の反響を聞いたりして(笑)。監督のロバート・エプスタイン、ジェフリー・フリードマンが、彼らの集めた膨大な写真や映像、本などの資料を私に見せてくれたし、私自身も彼女が出た映画もほとんど全部見て役作りをしていきました。

──この役を演じようと思った理由は?

セイフライド:私はチャレンジングな役が好きなの。特に実在の人物を演じる場合は責任を感じるから怖くもある。だから大きな挑戦だけど、エキサイティングでもあります。それにこの映画のスタッフは素晴らしい人ばかりだったから、そんなに心配はしていなかったの。

──どんなところに不安を感じていましたか?
『ラヴレース』
(C) 2012 LOVELACE PRODUCTIONS, INC.

セイフライド:反ポルノ活動家だったラヴレースはたくさんの取材も受けていましたし。これらの手掛かりがあったから、ある意味でとても心強かったです。もしかするとすでにこの世にいない人を演じる方が気が楽なのかもしれませんね。彼らの反応を心配する必要がないから。でもこの映画は彼女の視点から描かれているので、私は彼女を正しく理解したかったんです。彼女は驚くべき人生を生きたのですから。

──演じてみて、リンダ・ラヴレースはどんな女性だと思いましたか?

セイフライド:信じられないほど寛容で、人の意見に対する理解力があり、ある意味とてもストイックだったと思います。信じられないほどにね。物を投げつけられたり、裏切られたり、ののしられたり、一挙一動について質問されたり、それはとても腹立たしいことなのに、彼女はそのような人にも優しく、愛情をもって接したの。さらに驚くことに、彼女はただ友だちや子どもに囲まれた幸せな結婚生活が欲しかったの。それだけを望んでいたのね。

私はラヴレースを白黒どちらかに偏った人にはしたくなかった
『ラヴレース』
(C) 2012 LOVELACE PRODUCTIONS, INC.

──彼女の人生について、他に感じたことは?

セイフライド:彼女が持っているサバイバル能力に感化されました。すごく悲劇的な人生を体験したにもかかわらず、彼女はそこから抜け出して最後には自分の家族を持つことができました。彼女が経験してきたことはとても困難なことだけれど、それを語ることを恐れず、他の女性たちとシェアすることを恐れなかった。だって女性なら誰でもポルノ業界で搾取されることを望みはしないでしょう? そういう彼女の勇気や行動力にはとても触発されました。決して楽な人生ではなかったけれど、彼女は他の女性たちのことも理解し、世界に居場所をみつけることができた。それは誰にでもできることじゃありません。それに思春期の頃、彼女はとても純粋だったけれど、両親からはあまり顧みられなかったからそういう生い立ちが彼女の性格に影響を与えたのだと思います。

──ラヴレースを演じる上で気をつけたことは?

セイフライド:彼女の物腰や声を真似て役作りをしたつもりですが、一番は本質をとらえること、それが最も重要なことでした。本質が欠けていれば、何もないのと同然です。髪や目、口紅の色が正しくて、そばかすがあっても、彼女自身になりきらなければ何の役にも立たないもの。それにこの映画は、彼女の視点から語られるので、彼女が経験したことすべてを確認する必要があったの。そして彼女を正しく評価し、彼女に喜んでもらいたかったの。彼女自身はもういないけれど(02年に死去)、彼女の家族の協力はとても重要だったし、それが得られたということは、かけがえのないことでした。核心を伝えるためにはドラマ性が必要です、でもこの映画は決して架空の物語じゃない。実在した人物が実際に経験した物語なのよ。

──暴力的な夫チャックを演じたピーター・サースガードと共演した感想は?
『ラヴレース』
(C) 2012 LOVELACE PRODUCTIONS, INC.

セイフライド:ピーターがすごいのは、カリスマ的な魅力を持っている男から、一瞬にしてひどく暴力的な男に豹変してしまえることです。チャックという男は、普通の人には理解できないような多重人格的な性格の持ち主でした。ピーターは、そんな難しい役を完璧にこなしきりました。

──さきほど、ラヴレースは若い頃とても純粋だったとおっしゃいましたが、そんな彼女がなぜポルノ業界に入りあれほど大胆な行動をとったのだと思いますか?

セイフライド:彼女は純粋だったと思うけれど、カマトトだったわけではありません。この映画のいくつかのシーンでも、厳格な家庭に育ち世間知らずでとても純真で、人から認められたがっていたということが描かれています。恋人に認められたいと思ううちにどんどん大胆になっていったのではないかしら。
 私は彼女を全くナイーブなだけの存在にはしたくなかったんです。それでは退屈なだけだと思うから。彼女は当初、自分で決断してやったこともあるはずです。だから私は彼女を白黒どちらかに偏った人にはしたくなかった。グレーの部分があることは大切だと思うんです。

──この映画にはフェミニスト的な側面もあると思いますが、その点についてはどう思いますか?
『ラヴレース』
(C) 2012 LOVELACE PRODUCTIONS, INC.

セイフライド:ラヴレースの人生において、それはとても重要な要素だったと思います。私たちはもっとそういうシーンを撮影していたのですが、ずいぶんカットされてしまいました。彼女の人生にはたくさんの側面があって、すべてを語り尽くすことは不可能です。でも映画の後半にかけて、彼女が徐々にフェミニストになっていく様子を描くのは、とても大切なことだったと思います。彼女の人生には別の側面があったことを示唆するためにも、あのような終わり方が必要だったの。

──最後に映画のアピールをお願いします。

セイフライド:この作品はリンダ・ラヴレースという女性の人生の旅と、ラヴレースと(彼女の夫の)チャックという信じられない2人の関係を描いている。それぞれのキャラクターを掘り下げ、ラヴレースの物語をもっとも良い形で伝えていると思います。彼女のサバイバルだった人生、勇気を見てほしいです。

アマンダ・セイフライド
アマンダ・セイフライド
Amanda Seyfried

1985年12月3日生まれ。ペンシルヴァニア州アレンタウン出身。11歳のころから子役モデルとして活動を始め、04年、リンジー・ローハン主演のティーン・コメディ『ミーン・ガールズ』で映画女優としてデビュー。08年、ABBAのヒット曲をフィーチャーした人気ミュージカル劇の映画化作品『マンマ・ミーア!』で主人公のソフィー役に抜擢され、一気にブレイク。『レ・ミゼラブル』(12年)ではコゼット役を吹き替えなしで演じた。その他の出演作は『親愛なるきみへ』『ジュリエットからの手紙』(共に10年)、『TIME/タイム』(11年)など。

アマンダ・セイフライド
ラヴレース
2014年3月1日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開
[監督]ロバート・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン
[出演]アマンダ・セイフライド、ピーター・サースガード、シャロン・ストーン、ジェームズ・フランコ、クロエ・セヴェニー
[原題]Lovelace
[DATA]2012年/アメリカ/日活/93分/R18+

(C) 2012 LOVELACE PRODUCTIONS, INC.