1977年4月2日生まれ、ドイツのハイデルベルク出身。01年、テレビシリーズ『バンド・オブ・ブラザース』で注目され、『300〈スリーハンドレッド〉』(07年)で映画デビュー。『SHAME-シェイム-』(11年)でヴェネチア国際映画祭男優賞を受賞。主な出演作は『イングロリアス・バスターズ』(09年)、『それでも夜は明ける』(13年)、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(11年)、『X-MEN: フューチャー&パスト』(14年)、『スティーブ・ジョブズ』(15年)、『X-MEN: アポカリプス』(16年)、『FRANK-フランク-』(15年)など。
第86回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演女優賞の3部門を受賞した『それでも夜は明ける』は、アメリカが最も描きたくなかった歴史の闇──奴隷制度について描いた重厚作だ。
1841年に理由もなく拉致され、冷酷な主人の下で奴隷として過酷な生活を送ることになったソロモン・ノーサップ。自由黒人として妻と子と幸せな暮らしを送ってきた彼の身に、一体何が起きたのか──?
人間の尊厳、そして残酷さをあますところなく描いた本作について、残虐な白人農場主を演じた演技派マイケル・ファスベンダーが語った。
ファスベンダー:スティーヴは人を扱うのが上手くて、人間の行動を理解し、確かな好奇心を持ち、偏った判断をせずにアプローチし、“本質”を見ようとする。そして、人々をやる気にさせる方法を知っている。自分の仕事に対して情熱を持ち、他人にもそれを期待する。本当に彼は素晴らしいリーダーだ。作品に関わる皆の意欲を上げる。それはおそらく、スクリーンにも表れていると思う。
ファスベンダー:この映画は奴隷制度の複雑性を暴く作品だ。奴隷制度の多面性については、これまで調査されていなかったんだ。本作では、単純な白か黒かの問題ではなく、経済が奴隷制度に及ぼした影響にも言及している。(主人公の)ソロモンは伐採所から綿花農場、そしてサトウキビ農場へ送られる。その描写から、当時の南部の経済がどれほど独特だったか分かる。経済が、僕の演じた冷酷な農園主エップスや(主人公ソロモンの最初の所有者で、ベネディクト・カンバーバッチが演じる)フォードのような奴隷所有者だけではなく、奴隷とされた人たちにどんな影響を与えられたのかが分かるんだ。
さらに人間関係の複雑さも分かる。アメリカの黒人男性の65%に白人の血が混ざっているらしい。つまり大農園でどれほどレイプが横行していたかってことだ。つまり、僕たち全員が互いの一部なんだ。スティーヴは真に新しい領域を暴き出している。以前には描かれなかった所有者と奴隷の関係をね。事実はもっとずっと複雑なんだ。
ファスベンダー:僕は人に好かれる必要はない。僕は“マイケル・ファスベンダー”を商品として売ろうとはしていない。僕は俳優で、僕の仕事は、醜くても、美しくても、ポジティブでもネガティブでも、キャラクターたちに入り込むことだ。この重要な物語に参加できて、これほど重要な役柄をもらえて、とても光栄に思った。この役を歓迎したくらいだよ。
ファスベンダー:キウェテルは、幅広い経験をもつ優れた俳優だ。『堕天使のパスポート』(02年)以来、長い間、彼の作品のファンだった。そういう人が主人公を演じる。そしてパッツィー役のルピタがいる。まったくの新人で演劇学校を出たてだが、非常に優秀で、ちゃんと準備ができている。見事だよ。自信といい、姿勢といい、じつに感心する。2人のおかげで、全員が全力を投入できる。それが撮影をもっと楽しみ、挑みがいのあるものにしている。仲間の俳優たちに刺激され、試され、支えられる。俳優をやっていて、そこが最も楽しいところなんだ。
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