『ドン・ジョン』ジョセフ・ゴードン=レヴィット インタビュー

今、ハリウッドが最も注目する実力派が監督に初挑戦!

#ジョセフ・ゴードン=レヴィット

メディアが人々に与える影響について語ってみたいと思ったのが初監督の理由

甘いマスクに鍛え抜いた体、服もインテリアも車もおしゃれで家族を大切にする男、ドン・ジョン。女性にモテモテなスーパープレイボーイの唯一の弱点は“ポルノ”。そう、彼は架空の世界の女性を理想像に掲げてしまった、現代を象徴するようなモテ男だったのだ!

そんな男が2人の女性との出会いを通じ、成長していく姿を描いたコミカルでセクシーなラブストーリーが『ドン・ジョン』だ。

監督は、脚本と主演も兼務したジョセフ・ゴードン=レヴィット。子役出身、コロンビア大学で学んだ秀才にして、ハリウッドの期待を一身に集める俊英に、この初監督作品について語ってもらった。

──監督に初挑戦した理由は?

ゴードン=レヴィット:僕は子どもの頃から俳優業をやってきたから、自然とメディアが人々に与える影響について考えるようになった。映画、テレビ、CM、雑誌、そしてポルノでさえ。常に自分のなかにあったテーマだったから、「ならば、自分で語ってみたい」と思ったのが大きな理由なんだ。主演も脚本も手掛けて、仕事量はとても多かったけど、非常にパーソナルな作品になり、気に入っているよ。

──「メディアが人々に与える影響」についての見解を教えてください。

ゴードン=レヴィット:この映画の大きなテーマなんだけど、僕らは映画やテレビを見たり、雑誌を読んだり、ラジオを聞いたり、ポルノを見たりする。そんなメディアが生み出す“ファンタジー”を楽しむのはいいと思うんだ。問題は、そのファンタジーを、現実世界にも期待してしまうこと。だって、リアルな人生はもっと複雑で、微妙なものだからね。それなのに、安易なファンタジーを期待してしまい、自分がガッカリしたり、相手をガッカリさせたり。そんな教訓を込めたつもりだよ。

『ドン・ジョン』メイキング
(C) 2013 Don Jon Nevada, LLC. All Rights Reserved.

──ファンタジーを現実世界にも期待してしまうのが、本作の主人公とヒロインですね。あなたが演じたドン・ジョンはポルノの女性を理想にしてしまい、スカーレット・ヨハンソン演じるバーバラは恋愛映画のような王子様を待ち望んでいます。

ゴードン=レヴィット:2人とも極端なキャラクターだよね。過剰なほどのポルノを見ているドン・ジョンが、過剰なほどロマンティックなハリウッド映画を見ている“王女様キャラ”のバーバラとつき合うというアイディアが、作品の出発点になっているんだ。

スカーレット・ヨハンソンは非常に聡明で、才能あふれるアーティスト
『ドン・ジョン』
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──あなた自身もドン・ジョンのような部分がありますか?

ゴードン=レヴィット:彼のような資質は男女問わず、誰にもあると思うんだ。人は誰でも「他人をモノとして見る」「相手をカテゴリー分けする」という罪を犯してしまう。そのほうが簡単だからね。でも、もし相手の本質を知りたいのなら、表面から深層までを見つめ、相手の個性が何なのか見極める努力が必要なんだ。

──相手役にスカーレット・ヨハンソンを起用した理由は?

彼女自身もメディアを通じてセックスシンボルのように扱われることがありますよね。

ゴードン=レヴィット:脚本を書く段階から、バーバラ役はスカーレット・ヨハンソンを想定したんだ。まず、言えることは彼女が素晴らしい実力をもった女優だということ。シリアスな演技も、コミカルな側面もバランス良く見せてくれるよね。実際に共演すると、改めて非常に聡明で、才能あふれるアーティストだと実感させられたよ。
 そして、ヨハンソン自身もこの映画が問いかけるテーマについて、実に多くの意見や考えを持っていた。さっきも言ったように、彼女は非常に聡明で才能がある。でも、メディアは彼女のルックスだけを大きく取りあげて、内に眠る最良の部分を見逃してしまうんだ。つまり、見た目だけで人を判断して、彼女を1人の人間として見ていないんだよ。主人公のジョンも同じ過ちを犯すけど、それこそがこの映画で伝えたいテーマなんだ。

──ところで、あなたは宮崎駿監督の『風立ちぬ』の英語吹き替え版で主人公・堀越二郎の声を吹き替えましたね。
『ドン・ジョン』
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ゴードン=レヴィット:英語版吹替えのオファーをもらったときは、とても光栄に思ったよ。『もののけ姫』を見て以来、宮崎さんの大ファンになったし、『千と千尋の神隠し』もお気に入りの作品なんだ。そして、『風立ちぬ』は、僕が今までに見た映画のなかで最も美しい作品のひとつで、宮崎監督のキャリアにおいても特別な意味をもつ作品だと感じたんだ。それに戦時中の日本が舞台だから、現代を生きる僕にとって魅了される部分がたくさんあったよ。繊細かつ大胆に、誰も挑んだことがない領域を目指している作品だから、今回参加できたこと自体、本当に光栄だよ。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
Joseph Gordon-Levitt

1981年2月17日生まれ、ロサンゼルス出身。子役として活躍、コロンビア大学に学んだ後、俳優業に復帰。『(500)日のサマー』(09年)で注目を集め、『G.I.ジョー』(09年)、『50/50 フィフティ・フィフティ』(11年)などの話題作で人気を博す。クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(10年)、『ダークナイト ライジング』(12年)でスターとしての地位を確立。『LOOPER/ルーパー』(12年)では製作にも挑戦。その他『リンカーン』(12年)などに出演。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ドン・ジョン
2014年3月15日より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開
[監督・脚本]ジョセフ・ゴードン=レヴィット
[出演]ジョセフ・ゴードン=レヴィット、スカーレット・ヨハンソン、ジュリアン・ムーア、トニー・ダンザ
[原題]DON JON
[DATA]2013年/KADOKAWA/R15+

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