1993年11月22日、フランス、パリ生まれ。ギター教師のギリシャ人の父と看護師のフランス人の母との間に生まれる。中学時代に演劇に興味を持ち、リセの名門校在学中に映画のキャスティング・ディレクターの目に留まる。05年に中編映画『Martha(原題)』に出演、翌06年にテレビシリーズ『RIS police scientifique(原題)』やジェーン・バーキンの初長編監督作『Boxes(原題)』に出演。08年、『Les Enfants de Timpelbach(原題)』で主演をつとめ、11年にはフランス映画アカデミーが選ぶ30人の有望俳優に選出される。『アデル、ブルーは熱い色』では昨年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞に続いて、フランス版アカデミー賞であるセザール賞新人女優賞も受賞した。
初めての本当の恋で味わう喜び、悲しみ、怒り。10代の少女が経験する運命的な出会い、その相手と人生をともにすることで知る究極の愛を描く『アデル、ブルーは熱い色』。
昨年のカンヌ国際映画祭では、通常作品を対象とした最高賞のパルム・ドールが、監督と、愛し合う2人のヒロインを演じた女優にも贈られるという異例の快挙を成し遂げた。
同作で、愛に生きるヒロインを情熱的に演じた20歳の新星、アデル・エグザルコプロスが来日した。
──約3時間という大作で、高校時代から大人になっていくヒロインを熱演されました。愛を知っていく過程を体当たりで表現し、精神的にも傷ついていく女性像は、10代で演じるにはかなり複雑な役ではなかったですか?
エグザルコプロス:この作品をやりたいと思ったのは、監督がアブデラティフ・ケシシュだったから。彼の作る映画が大好きなんです。作品のなかにいつも必ず真実というものを登場させるから。
本来は脚本を読んでから、というのが普通なんでしょうけど、今回はオーディションの期間中は原作のコミックしか読ませてもらってなかったんです。その間、監督とは何回も会って、いろいろ話しました。内容的には、時間の経過とともに女の子が進化していく様子を演じるということにとても惹かれました。彼女の恋愛、その情熱を本物あるように見せようと演じることに、役者冥利を感じました。
エグザルコプロス:女優が大好きな監督なんです。だから映画を撮ってるんだと思います。俳優を技術面で拘束しない人ですね。たとえば床にシールを貼って「ここから動くな」とか、そういう指示は一切なし。逆に技術スタッフの方が私たちに順応してくれるんです。作り物の人工的な感覚が嫌いなんです。だから、メイクもヘアメイクも全然なし。監督が望むのは「あなたの感情を出してください。このストーリーのために自分を投げ出す覚悟はありますか」ということだけでした。
もちろん、監督と私たちの間に全幅の信頼があってのことです。少しでも何か違うと思ったテイクを「まあいいや」と採用することは絶対にない人でもあります。神の恩寵というか、そういう特別な瞬間が訪れたときにOKが出る。だから、1シーンに1週間かかることだってあるんです。アデルとエマが横断歩道ですれ違う最初の出会いのシーン、あれは1日で100テイク撮ったし、初めてキスするシーンは1週間かけました。ほかの監督であり得ません。
彼は、俳優たちが我を忘れるような状態を求めるんです。5ヵ月半の撮影期間中、1テイクで済んだのは1度だけ。でも、そのシーンは完成作ではカットされてしまいました(笑)。
エグザルコプロス:ジョスリーヌという名前も候補に上がってたけど、あんまり好きじゃなかった(笑)。ちょっと古めかしいから。10個くらい候補があって、はっきり決めずに撮り始めて3週間くらい経ったとき、撮影の合間に監督がポロッと「実はアデルにはアラビア語で“正義”っていう意味があるんだ」と言って。「僕はとても美しいと思うんだけど、役名をアデルにしてもかまわないかい? と聞かれました。もちろん、「いいですよ」と答えました。映画の原題は“アデルの生涯 第1章第2章(La vie d’Adele Chapitres 1 et 2)”ですが、このタイトルはカンヌに出品が決まったときに初めて知りました。
エグザルコプロス:自由であるということかな。最初、彼女は同じ高校の男の子に恋をして、彼のことで頭がいっぱいになる時期がある。それからエマと出会って恋に落ちて、その愛のために自分を投げ出すような段階もあります。すごく自己犠牲をして、たくさん泣く。でも、彼女自身は自由なんです。自分のラブストーリーを途中で諦めないからです。最後まで徹底して、自分自身がボロボロに傷つくことも受け入れて恋をする。彼女は自分の気持ちに正直。それは自由ということなんです。
エグザルコプロス:同性愛についてばかり話題になったのは少しショックでしたね。愛について言えば、私は一目惚れを信じているので、“やっぱり”と確信したし、初恋というのはどんな形で終わったとしても、生涯忘れられないものになるんだと思いました。
アデルとエマの育った環境の違いから社会的格差について話す人たちもいますが、私自身は全然意識せずに演じていました。私は階級が違っていたとしても同じものを共有できると思います。同じ文化で同じ教育を受けていてもうまくいかないことはいくらでもあるし、人を愛するというのは、その人を受け入れること。話し合い、理解し合って関係を続けることは可能だと思うんです。
エグザルコプロス:誰もが感情移入し、自己投影できる話だからだと思います。私の周りの人たち、元カレだったり友だちが「初恋のときのこの気持ち、わかるよ」と言ってくれることが、女優にとってはとてもうれしい賛辞なんです。だからこそ私たちは、映画を撮るんだと思います。これは本当に普遍的な物語だと思います。
エグザルコプロス:この映画以前にも何作か出演はしていましたが、そんなに目立つ存在ではなかったです。それが今は、光の中に突き出された感じです。パルムドール受賞のお陰で、女優としては千の扉、あるいはそれ以上の扉が開いた気がします。受賞後はいろいろなオファーが来て、女優としてのモチベーションがすごく高まりました。映画界のなかに自分の居場所を見つけるのは非常に難しいことですので、第一歩を踏み出した気がします。
(text=冨永由紀)
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