1960年9月10日生まれ。イギリスのハンプシャー州出身。『アナザー・カントリー』(84年)で注目を集め、テレビドラマ『高慢と偏見』(95年)でブレイク。『英国王のスピーチ』(10年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞。主な出演作は『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ(01年、04年、16年)、『ラブ・アクチュアリー』(03年)、『マンマ・ミーア!』(08年)、『シングルマン』(09年)、『キングスマン』(14年)、『キングスマン: ゴールデン・サークル』(17年)、『メリー・ポピンズ リターンズ』(18年)など。
第二次大戦下の東南アジアで日本の捕虜となった主人公。数十年を経た後も、その過酷すぎる体験を引きずる彼が、過去と向き合うことで人生を取り戻していく姿を描いたのが『レイルウェイ 運命の旅路』だ。
1995年の「エスクァイア」誌でノンフィクション大賞を受賞したエリック・ローマクスの自叙伝を映画化した作品で、オスカー俳優コリン・ファース演じる主人公と真田広之扮する元日本兵通訳との緊張感に満ちたクライマックスシーンに圧倒される。
戦争の悲劇と贖罪を描いた本作について、主演のファースにインタビューした。
ファース:当時は東南アジアの戦線でも様々な動きがあったけれど、我々が受けた教育では焦点を当てられない部分で、大々的に教えられることはない。戦争冒険映画は、第二次大戦でもヨーロッパ戦線や北アフリカ戦線に焦点を当てることが多く、シンガポール陥落や「死の鉄道」については学校の歴史の授業では習わないんだ。『戦場にかける橋』のような映画では描いているし、あれはあれで素晴らしい作品だが、アドベンチャーストーリーになっていて、本作で描く負の側面には触れない。どういうわけだか今ままでつまびらかにされてこなかった出来事のようだ。
ファース:エリックとの最後の会話だった気がするが、心打たれた瞬間があった。エリックが、執筆に駆り立てられた理由について語っているときだった。「自分が体験してきたことを、皆さんが消化する一助になれば」とシンプルに語ったが、おそらく似たような苦しみを経てきた人々がその痛みを共有する土台になればいいと思っての発言だったのだろう。それで、何気なしに言ったつもりだったようだが、「もう遅いかもしれないけどね」と付け加えた。同世代は亡くなっていくし、次の世代はこのことを忘れ始めている。それを意識しての発言と私は解釈したが、特段絶望的に言うわけでもなく、あきらめにも聞こえるようなつぶやき程度だった。
私は日本人のキャスト陣がどれだけ彼のストーリーに感動したかを伝えなければならないという衝動にかられた。仮に、英国の若い世代であれ、当時敵国だった日本の若い世代であれ、次の世代に自分の体験を語り継ぎたいという願いがあったのならば、その願いはすでに現実のものになりつつあったわけだ。だから、“話はあなたが思っている以上に伝わっていますよ”と励ました。
ファース:頭のなかでいくら想像を巡らせてみても、実際に目にする光景にはかなわない。現場に足を踏み入れることで自分がどのような影響を受けることになるのか、(キャストやスタッフは)誰も想像が付かなかったと思うが、周りからはいろいろと聞かされていた。エリックと(彼の妻の)パティは「(泰緬鉄道建設の一番の難所だったと言われる)ヘルファイアー・パスは軽々しく立ち入ることのできない場所だ。影響を受けずにはいられない」と重々しく語った。エリックは「霊が宿っている」と言った。パティは「人の精神に多いに影響を与えるものだから、心して臨まなければならない」と。
ファース:ニコールのキャスティングにどれだけ貢献できたかはわからないが、私は試しに声をかけただけなんだ。女優をとても尊敬しているので、(この作品について)何気なく話してみた。彼女からは乗り気たっぷりの返事をもらえたので、ラッキーだったね。
ファース:題材を徹底的に掘り下げ、探求する人だ。人の想像力を掻き立てるし、とてもオープンな人。また、どう作りたいのか極めて明瞭な考えを持ちながらも、人にきちんと委ねる。良い監督にとっては必要不可欠な素質だ。それを巧みにやるのはとても難しい。ワンマンで仕切ったり、逆に白紙の状態で人に全部任せることのほうがはるかに簡単だからね。ジョナサンは、題材と真剣に向き合い、熟考しながらも変化を恐れず、人の意外な意見を受け入れる器のある奇特な人だ。
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