1967年6月20日生まれ、アメリカのハワイ州で生まれ、オーストラリアで育つ。『デイズ・オブ・サンダー』(90年)で共演したトム・クルーズと90年に結婚。『誘う女』(95年)でゴールデングローブ賞他数々の賞を受賞。クルーズとの3度目の共演作『アイズ・ワイド・シャット』(99年)はキューブリック監督の遺作。01年の離婚を期にますますキャリアを広げ、『めぐりあう時間たち』(02年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞。その他、『ムーラン・ルージュ』(01年)、『コールドマウンテン』(03年)、『オーストラリア』(08年)、『NINE』(09年)、『ラビット・ホール』(10年)、『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』(16年)、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(17年)などに出演。
偶然、鉄道に乗り合わせたことから知り合い、あっという間に恋に落ち結婚した男女。だが、幸せな日々は長くは続かず、過酷な過去に苦しみ続ける夫は自分の殻に閉じこもるようになってしまう。そんな夫を信じ、支え続ける妻。ある日、夫は自らの過去に向き合うための旅に出かける……。
『レイルウェイ 運命の旅路』は、第二次世界大戦下で日本軍の捕虜となったイギリス兵エリック・ローマクスのトラウマに満ちた半生と、その後の癒やしを描いた感動作だ。オスカー俳優コリン・ファースが主人公を演じ、同じくオスカー女優のニコール・キッドマンが妻・パティを演じている。また、真田広之が元日本兵を演じているのも話題のひとつだ。
あまりの過酷さに「死の鉄道」とも言われたタイとビルマを結ぶ泰緬鉄道を建設するためにかり出された捕虜たちの姿──これまで語られることの少なかった物語を描いた本作について、キッドマンに語ってもらった。
キッドマン:とにかく感動したわ。戦争の惨事やそのトラウマについて描く映画は沢山あるけれど、それを乗り越え、慈悲心の域に到達する過程についてはあまり描かれない。“赦し”の域に達しているかどうかに関しては皆で話し合った部分だし、コリンとは意見が分かれるところだけれど、心が癒える過程を描いている話だとは思う。そこに心打たれたの。でも、実在の人物を描く作品だから怖くもあったわ。
キッドマン:ええ。でも最初は役を演じるのが怖くなるんじゃないかと思って会うのを嫌がり、撮影を開始してからにしたいと申し出たの。もちろん彼女については散々読んだし、彼女が自身の体験について率直に話すインタビュー映像なども見たけれど、緊張してしまうから会うのには抵抗があった。
それで、たまたま彼女の住む町で撮影が行われたときに家にお邪魔させてもらって、お茶をご馳走になったの。パティとエリックとコリンと私の4人だったのだけど、一緒に泣いたり笑ったりして一種の絆が芽生え、私にとってはとても純粋な体験になった。彼女のお庭も見させてもらったわ。2人ともお花が大好きなので、薔薇の話をしたりして仲良くなった。自分が演じようとする人物にそっと会う良い機会になったわ。
キッドマン:最後のほうで、「タイへ行くそうだけど、(建設時の一番の難所と言われた)ヘルファイアー・パスには気をつけたほうがいい」とパティに言われたわ。「あそこは何がしかの力が働いている。闇が感じられる。それが体に残る」と。彼女自身も初めて訪れたときに涙が溢れるように流れてきたと言うの。泣き止むことができず、エリックがそっと支えてくれたそう。
これは脚本では描かれない場面だけれど、私は「ここで起きたことや、青年達の死や、人道的にあるまじき行為が繰り広げられたことが彼女自身の実感として湧く瞬間をきちんと描きたい」と言ったわ。パティは「エリックのためだけでなく、そこにいる全員のために涙を流した」と言っていた。彼女の言葉に心を打たれたの。
キッドマン:脚本を読み、トラウマに耐える人をそっと支える描写にとても共感したわ。パートナーや夫や大切な人を支える女性を演じる機会はいままでなかったから。けれど、パティと同じように(パートナーと共に)苦境を生き抜くことは私自身も体験していることで、私にとっては大切なテーマ。人が苦しみと向き合えるよう、そっと、ゆっくりと背中を押してあげるなど、愛が癒しになることもあると信じているし、それをスクリーンで表現したかった。感情移入せずにはいられない過程だし、私がパティに共感するのはその部分よ。
キッドマン:これは究極的にはラブストーリーなの。お互いのことを良く知らない2人が一緒になり、愛することを学んでいく。2人は、あっという間に結婚するので、お互いについて学ぶ過程は後からやってくる。それでも途中で投げ出すことはしない。とても美しい関係だと思う。彼女は夫の立ち直る力を信じ、突き放すことなく、最後まで寄り添う。それが2人の絆をとてつもなく強固なものにしていく。私は、人は痛みを通して深く結びつくことができると昔から信じているの。すべてが上手くいっているうちは深い愛には到達できない。一緒に痛みを背負わなければならない状況に放り込まれたときこそ本当の愛が育まれる。それでも2人で一緒にやっていこうと決断できれば、遥かに深い境地に達することができると思うわ。
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