1972年、イラン・イスファハン生まれ。13歳の時に初めて短編映画を撮り、大学進学までに5本の短編を制作。イランのヤングシネマ・インスティテュートで学んだのち、テヘラン大学でも映画を専攻した。大学在学中に数多くの学生演劇の台本執筆、演出を手がける。同大学を卒業後、タルビアト・モダレス大学の舞台監督コース修士課程に進み、連続TVドラマの演出や脚本も手がけた。03年に初の長編映画『砂塵にさまよう』(未)で監督デビュー。『彼女が消えた浜辺』(09年)でベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。フランスで大ヒットした『別離』(11年)でアカデミー賞外国語映画賞、ベルリン国際映画祭で金熊賞と銀熊賞(男優賞、女優賞)などを受賞。『ある過去の行方』(13年)では主演のベレニス・ベジョがカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。2011年にはタイム誌の“最も影響力のある100人”のひとりに選定されている。
前作『別離』で第84回アカデミー賞外国語映画賞、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したイラン人監督、アスガー・ファルハディ。人間心理の深層を掘り下げた緻密な人間ドラマが秀逸で、ウディ・アレン、スティーヴン・スピルバーグ、ブラッド・ピットらのヒットメーカーも賞賛を贈っている。
そんなファルハディ監督の最新作が『ある過去の行方』だ。パリを舞台に、イラン人の男性と別れた妻、妻の新たな恋人との関係を主軸に、それぞれの語られることのなかった過去が明らかになっていく様子をサスペンスタッチで描き出す。
イランを舞台に現代社会の縮図を描き続けてきたファルハディ監督が、初めて外国を舞台にした意欲作でもある。そんな本作について監督自身に語ってもらった。
監督:フランスで『別離』を配給したプロデューサー、アレクサンドル・マレ=ギイが気に入ってくれ、フランスで撮影することになった脚本がありました。けれどある日、構想中だった別のストーリーについて話したところ、そちらの企画に移行することになりました。それがこの『ある過去の行方』だったんです。
『ある過去の行方』の舞台がパリであることはとても重要な意味を持ちます。過去を扱うストーリーを語るとき、パリのように過去が滲み出ている街を舞台にする必要があるからです。どこでも成立するというわけではありません。
監督:パリの建築物の歴史的側面を乱用しないように、また、観光的な見せ方をしないように気をつけました。映画の大部分を占める主人公の家をパリ郊外に設定し、パリはあくまで背景として登場させることをかなり早い段階で決めていました。さりげなく登場させるのです。
なじみのない土地で撮影する映画監督にとっての落とし穴、それは最初に目を引かれたものに焦点を当ててしまうことです。私は真逆のことをしようと試みました。街の建築物に魅了された私は、あえてその先にある別のものに触れようと手を差しのばしたのです。
監督:年を取ってくると、子どもの大切さが前よりももっとわかってきます。過去よりも今のほうが、子どもたちのことを考えています。子どもたちは大人の決定の犠牲になっているのです。彼らは自分で自分を守ることができません。大人が子どもたちを、彼らの望まない道へ押し出している気がします。
子どもと一緒に映画を撮るのはとても大変ですが、以上のような理由から、私はもっと子どもについて描いていきたいと思っています。自分の作品のなかで、前よりも今のほうが、子どもの存在感を感じますね。
監督:私は、執筆中の物語自体から、役のどの部分を繊細に書けばいいのか教えられているように感じています。私の映画の登場人物はみんな普通の人々で、ヒーローではありません。だからたくさん間違いを犯します。そんな人物をなぜ魅力的に見せることができるかというと、観客にその人物のことを直接は語らず、間接的に見せるよう構成しているからなんです。
監督:映画監督が信じているテーマが、誠実に作品にできるようになるといいと思っています。周りの意見を気にせず、自分の好きなものを作っていける映画監督が多くなるといいですね。みんな、それぞれ自分が本当に作りたい作品を作ることを願っています。今は、ちょっとできないのですが……。
監督:みなさんのコメントを聞いて、とても嬉しかったですね。マーティン・スコセッシ監督、スティーヴン・スピルバーグ監督、ジョージ・ルーカス監督は、3人一緒に並んで『別離』を見てくれたようです。フランシス・フォード・コッポラ監督も見てくれたらしいです。私は、彼らの作品を見て映画作りに興味を抱いたんですよ!
彼らが、私の映画のなかの登場人物に共感し、その人物たちを理解してくれたことがとても嬉しかったです。人間はどこに住んでいても、お互いの気持ち、お互いの立ち位置が分かるんだと驚きました。そしてスピルバーグ監督たちのコメントを聞き、私自身も「人を地理的に判断する」ことをやめました。
監督:オスカーを獲って1番良かったことは、私の映画を見る人の数が増えたことです。様々な地域で私の映画を見てもらうことが大切で、価値がありますから。もちろん受賞によって、私の映画に興味をもつ人も増えるでしょう。もちろん、責任も増したわけですが……。私の次回作を待ってくれる人がいることは、とても嬉しいことですね。
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