『鷲と鷹』大沢樹生インタビュー

元“光GENJI”メンバー諸星和己との共演も果たした初監督作の撮影秘話から自身のプライベートまでを激白!

#大沢樹生

ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの『ヒート』のような作品を目指した

元“光GENJI”の大沢樹生と諸星和己が20年ぶりにタッグを組んだアウトロー映画『鷲と鷹』が誕生した。主人公の新米刑事・鷹村を演じるのは諸星、そして鷹村の幼なじみにして、ヤクザの道へと進んだ鷲尾を演じるのが、本作で初メガホンをとった大沢だ(監督は大澤樹生名義)。

正反対の生き方を選んだ幼なじみの衝突と友情を描いた本作には、ファンにはたまらないお宝映像も。念願の監督デビューを叶えた大沢に、作品、そして諸星への思いからプライベートな質問までぶつけた。

──『鷲と鷹』は初監督作品ですが、これまでにプロデュースは手掛けられています。以前から監督を目指していたのですか?

大沢:そうですね。将来的にはやりたいと思っていました。でも全くの無知ではできないので、お金の使い方や流れ方、時間の使い方などを学ぼうと思って、2作ほどプロデュースをさせてもらいました。とはいえ昨年の夏に今回のお話しをいただいたときは、正直、怯みましたね(笑)。でもこれも何かの縁とチャンスだと受けさせていただいたんです。

──最初の作品の題材として、ふたりの男の物語を選ばれた理由は?

大沢:自分のなかでやりたいという企画は何本かありました。なかでも第1回目の監督作品には、ビシっとぶれないものをやりたかった。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの『ヒート』(95年)のような関係性の、男同士の友情を描いたものを作りたいと思ったんです。

大沢樹生

──主演に元“光GENJI”の諸星和己さんを選ばれたことも話題になっています。

大沢:ふたりの男同士の関係を描くにあたって、お客様の目線に立ったときに、一番説得力があって、納得して見ていただける相方は誰だろうと考えたとき、ふと諸星さんにやってもらえたら面白いんじゃないかと閃きました。それで彼の電話番号を知っているかもしれない共通の友人に片っ端から連絡を入れまして。こういう話があるんだけれど、どうだろうかとお話しさせていただき、受けていただくことになりました。

──20年間、一度も連絡を取られていなかったというのは本当ですか?

大沢:本当です。最初に電話をかけさせていただいたときも、マネージャーさんが出られて、「どちらの大沢さんですか?」となかなか繋いでもらえなかったくらいです(笑)。

ローラースケートのシーンでは、ガチで転んでしまいました(笑)
大沢樹生

──クライマックスの直前に、諸星さんとローラースケートを履くお宝映像がありますね。

大沢:脚本家の室賀さんに私のほうからリクエストさせていただいたんです。ちょっとしたシャレというか、ファンのみなさんへのプレゼントテイクということで(笑)。
 たとえばあのシーンはキャッチボールでも成り立つんですけど、でもお客さんに楽しんでいただきたかった。ただ作品から浮かないために自然に組み込んでいただきたいとお願いしていました。だから前半の回想シーンにも僕らの学生時代の子たちがローラースケートで遊ぶシーンが出てきます。ちなみに僕がシーンの最後で転んでいるのはガチです(笑)。

──諸星さんと“光GENJI”時代のお話しをされたりはしましたか?

大沢:いや、一切(笑)。

──20年ぶりの再会でここら辺が変わったなと感じられた部分は?

大沢:良くも悪くも、成長してねぇなって(笑)。でもそうはいっても、20年って赤ちゃんが成人するまでの長い期間ですから、やっぱり彼も大変な思いをしてきたかもしれない。いろんな経験をお互いにしてきて、この年になって、映画というジャンルを通してビジネスをしたかったというのはありましたね。

──改めて諸星さんにオファーされてよかったとお感じになったところは?
『鷲と鷹』
(C) 2014「鷲と鷹」製作委員会

大沢:僕が求めたのは彼の存在感とか存在そのものでした。それに彼はきちんと対応してくれた。完成したものを見て、やっぱり“光GENJI”時代を一緒に過ごした独特のバランスが、この20年の時を経たことで、なにかちょっと重みを増していることにすごく喜びを感じました。彼には出ていただいて感謝しています。

──ほかにも豪華なキャストの方々が揃いました。

大沢:はい、おかげさまで。キャスティングもやらせてもらったんですけど、我ながらそれぞれが役の設定にバシっと上手い具合にはまってくれたと自負しています。

──クライマックスの銃撃戦の撮影は大変だったのでは?

大沢:唯一、徹夜で撮影した場面です。とにかく時間がなかったので、カメラ4台体勢で、それぞれの画質も合わせず、必死で撮りまくりました。アクションはテンポが大切なのでとにかく素材をと。確かにしんどかったですね。

大沢樹生

──特にこだわられた点を教えてください。

大沢:オープニングからエンドロールの最後の最後まで全身全霊をかけて作っているので、どこだと挙げることは難しいのですが、でも音楽は大切にしましたね。劇中、鷲尾が慕っている親分が殺されてしまい、ライブハウスに仇討ちにいく場面での使い方とか。音楽にも注目して見ていただきたいです。

──監督としての今後の抱負をお聞かせください。

大沢:今回、第1回の監督作品を撮らせていただきました。向き不向きは自分ではまだ分かりませんが、すごくやる気はあるので、お話があれば積極的にやらせていただきたい。『鷲と鷹』の続編の構想もあります。ただ、まずは1作目をきちんと成功させないことには次はないと思っています。

娘が芸能界に入りたいと言ったら? 断固反対です!
大沢樹生

──大沢さんご自身のこともお聞かせください。まずは娘さんのご誕生、おめでとうございます。

大沢:ありがとうございます。年も年なので(45歳)、孫感覚が入ってるんです(笑)。ちゃんとしつけとか教育ができるのか心配です。無条件に愛情を注いでしまうようなところがあって。それじゃいけないと思うんですけど。彼女と1日でも長くいたいので、いま禁煙と格闘中です(笑)。妻にも「この子の成人式まで生きたいでしょ」と言われています(笑)。

──不妊治療をされていたことも公表されていました。私の周囲にも不妊治療をしている人が大勢います。

大沢:不妊治療は私たちも5年近くやっていました。病院に行くときは、ほぼ付き添って行っていました。どうしても女性のほうが大変だったりします。私もそうした苦しさや辛さを目の当たりにしてきました。それに私たちは、ご存知の通り、娘の誕生も死も経験しています。いまご苦労されているご夫婦にも、力を合わせ、支え合って挑んでいただきたいです。それから保険適用外であることも苦労する点です。国には補助というか不妊治療へのバックアップをしっかり行ってほしいですね。

──まだ先の話ですが、もしも娘さんが芸能界に入りたいと言ったら?
大沢樹生

大沢:NO! 絶対にNO!です。

──断固反対ですか?

大沢:絶対に反対ですね。自分がいる世界を悪くはいいたくないですが、でも小さくてもいいので、しっかりと幸せを掴んで欲しいです。芸能界はちょっと……。勧められないですね(苦笑)。

──作品に話を戻しますが、『鷲と鷹』は大沢さんや諸星さんのファンはもちろん、男性ファンも楽しめる作品だと思います。

大沢:そうですね。ファンの方には20年ぶりの映画での、僕と諸星さんとの共演を、スクリーンで楽しんでいただけたらと思います。そして一般の方、特に男性の方に見ていただけると有難いです。この作品を見て、諸星、おもしろいじゃんとか、この作品、おもしろいじゃんとか、どこか共感する部分を同性の方に思っていただけると本当に幸いです。

(text&photo=望月ふみ)

大沢樹生
大沢樹生
おおさわ・みきお

1969年生まれ。東京都出身。1987年に光GENJIのメンバーとしてデビュー。ローラースケートを履いて歌い踊るスタイルで一世を風靡した。光GENJI解散後は歌手、俳優として活躍。出演作品に舞台「ちはやぶる神の国」(10年)、映画『魍魎の匣』(07年)、『わさお』(11年)など。また出演のみならず、『怪談・牡丹燈籠 もっともっと、愛されたかった。』(07年)、『捜査線 LINE OVER』(10年)をプロデュース。本作で大沢樹生名義にて念願の監督デビューを果たした。

大沢樹生
鷲と鷹
2014年5月24日より新宿ミラノほかにて全国順次公開
[製作]山田浩貴、大澤樹生
[監督]大澤樹生
[脚本]室賀厚
[出演]諸星和己、田中律子、菅田俊、小沢仁志、おりも政夫、竹原慎二、畑山隆則、元木大介、IZAM、ビートきよし、大沢樹生
[DATA]2014年/日本/ユナイテッドエンタテインメント/102分

(C) 2014「鷲と鷹」製作委員会