1980年9月4日、ドイツ人弁護士の父親とアメリカ人プリマバレリーナの母親の間にドイツのアーヘンで生まれ、4歳でバイオリンを手にする。8歳で既にマネージメント・チームがつき、10歳で初めてハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団のステージに立つ。94年、史上最年少で名門ドイツ・グラモフォンと契約。録音時にはわずか13歳であったとされるデビューアルバムをリリース。18歳のときにニューヨークのジュリアード音楽学校に入学。在学中はイツァーク・パールマンに師事し、2003年にはジュリアードでも尊敬を集める作曲コンペで優勝。学生時代はモデルとしてファッション雑誌やファッション・ショーにも出演し注目を浴びる。ジュリアード卒業後はクラシックのあり方を変えるため、ポップミュージックやロック、そしてリズム・アンド・ブルースなどとクラシックをミックスする活動にチャレンジしている。2012年から「ホセ・カレーラス国際白血病財団」のドイツ大使を務めている。
『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』デイヴィッド・ギャレット インタビュー
女性を虜にする「クラシック界のベッカム」が、音楽家としての孤独について言及
19世紀を代表する天才ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ。あまりの演奏の上手さに「悪魔に魂を売り渡した」とまで言われた異端児の人生を映画化したのが、『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』だ。
類い希なる才能に恵まれながらも派手な女性関係とギャンブルに彩られた破滅型の天才を演じたのは、欧米で絶大な人気を誇るヴァイオリニスト、デイヴィッド・ギャレット。「クラシック界のベッカム」とも評されるビジュアルと、パガニーニを彷彿とさせる才能を併せ持つ彼に、映画について語ってもらった。
ギャレット:今回、パガニーニがこれまで残した楽曲全てを聞くことができました。私はこの映画の音楽にも携わっていましたから、どの場面にどの曲が合うのかを考えながら聴いていたんです。こういった経験は初めてだったので、ギターとヴァイオリンのための曲やヴァイオリン・コンチェルト等、それぞれを把握して。もちろんカプリース(パガニーニの24の奇想曲)は知っていましたよ! でも実際に今まで知りたいけど知らなかった曲もあって、それも全部知ったうえでパガニーニを最も輝かせることができる曲をつけていきました。そういった部分は発見でしたね。
ギャレット:誰しも子どもの頃はみんな純粋で無垢な気持ちを持っていたと思います。大人になるにつれて環境や生活によってそれを少しずつ忘れていくけれど、心のなかでは無垢さを持ち続けているものですよね。エキセントリックに見えても、どこかで純粋な心を持っているはずです。それはパガニーニも同じ。エキセントリックな部分だけに焦点をあてるのは正しくない。どんなアーティストも元々は中立な部分から始まって、そこから変わっていくものですから。
ギャレット:パガニーニはヴァイオリンという楽器の概念自体をつくり変えた人だと思います。パガニーニ以前にもジュゼッペ・タルティーニ、アントニオ・ヴィヴァルディといった卓越したテクニックを持った人もいましたが、パガニーニによる重音奏法や、左手と右手の使い方などは、ヴァイオリン演奏をゼロから100に引き上げました。ただ、私がパガニーニに魅了されるのはそういった妙技ではなく、彼がそういったものを創り出したということです。パガニーニの曲を演奏するのは大変でした。彼が考え出した奏法は本当に天才的なんです。
ギャレット:パガニーニも私も音楽家としていろいろな世界を旅します。旅には孤独さが付きまといますが、逆にそれがステージに立った時にパワーとなって出てくるという、ポジティブな部分とネガティブな部分を両方持ち合せています。だからこそ音楽に投影できる感情的な幅広さを私も持っていますし、パガニーニも持っていたと思います。
ギャレット:自分の心の声を聞いてその道を歩むことが真のアーティストになる唯一の手段だと考えて、そうしてきました。既に書かれた素晴らしい曲をコピーして演奏するのは簡単ですが、その人なりの素晴らしいものを創り出すことは本当に難しい。ただそれにはリスクがあって、リスクを負うことも大切。間違いや失敗を恐れていては良いものは生まれませんよね。みんな夏が嬉しいのは、寒い冬があるから。そういうものだと思います。
ギャレット:今後は映画にはサントラという形で携わっていきたいですね。映画には限らないかもしれませんが。ただ、今回、クラシック音楽という点だけでなく、ヴァイオリンの歴史を変えたパガニーニという人物の映画に携わることができたのはとても特別な経験でした。
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