『gift』松井玲奈インタビュー

映画初出演で主演を演じた松井玲奈に、女優とアイドルの違いや23歳を迎えた今後の目標について直撃

#松井玲奈

反抗期の頃の気持ちに近づけて演じた

愛知県限定で公開されながらも大ヒットし、7月12日から東京を始めとする他地域でも拡大公開中の『gift』は、借金を抱えキャバクラで働く沙織と、一代で会社を築きながらも、その傲慢な性格から孤独な篠崎善三が、ヒョンなことから出会い、篠崎から沙織が「お前の100時間を100万円で買ってやる」と言われたことから幕を開けるロードムービー。

30年会っていない娘にプレゼント(gift)を届けようとする篠崎をサポートし、東京まで無事に届けることが沙織の仕事だったが、単に傲慢なオヤジだと思っていた篠崎が、娘に届けようとしているプレゼントの中身を知ったことから、物語は感動のラストへと繋がっていく。

この映画で沙織を演じているのが、今年6月に行われたAKB48選抜総選挙で5位に輝いた松井玲奈(SKE48/乃木坂46)だ。これが映画初出演にして初主演となる彼女に、撮影裏話から女優という仕事、グループへの思いなどについて語ってもらった。

──まずは、初めて完成作を見たときの感想をお聞かせください。

松井:初めて出演させていただいた映画だったので、どんな気持ちで見ればいいのかわからなくて。恥ずかしい気持ちが少しあったんですけど、上映が終わった後にいろいろな方から、「良かった」って言っていただけたので、少し自信になりました。

──役作りはどんな風に?

松井:最初に監督から、両親にめぐまれず家庭環境があまり良くなくて、世の中はすべて、頑張ってもいいことないと絶望している女の子と言われて。そのイメージだけを聞くと、すごく難しそうだなって思ったんですけど、自分のなかで、きっと反抗期のまま大人になったんだなっていうイメージがつかめたので、反抗期の頃の気持ちに近づけて演じてみました。

──松井さんは、何歳くらいのときが反抗期だったんですか?

松井:えーっ、今でも反抗期ですよ(笑)。

──篠崎善三を演じる遠藤憲一さんとは初共演です。恐そうなイメージはありませんでしたか?

松井:なかったです(笑)。最初に顔合わせしたときに、どんな方だろうって思っていたんですけど、最初からすごく気さくで優しい方だったので、恐いなんて全然思わず、撮影中も、ずっと優しくていい方でした。

普通にやっていることを芝居でやろうとすると難しい
松井玲奈

──遠藤さんと2人でのシーンが圧倒的に多い作品ですが、撮影現場ではどんな風に過ごしていました?

松井:長回しの撮影が多かったので、お互いにNGがないように、待ち時間にずっとセリフの読み合わせをしてました。遠藤さんからは「撮影中にお芝居で嘘をついちゃダメ」と教えていただいたので、それをちゃんと頭のなかにおいて、嘘をつかないようにお芝居しなくちゃと思っていました。

──完成作を見たメンバーからは、何か感想を聞きましたか?

松井:みんな「すごいいい映画だね」って言ってくれたんですけど、劇中に運転しているシーンがあって、みんなから「いつ免許取ったの」ってすごく聞かれました(笑)。

──なんて答えました?

松井:みんなが知らないうちに取ったよって、嘘つきました(笑)。実際に免許をもっているメンバーには「私より運転うまい」って言ってもらって、ちょっと嬉しかったですね(笑)。

──もしかしたら、まだメンバーはその嘘を信じています?

松井:いえ、ひととおり話して「すごい」って言ってもらった後に、「嘘だよ」って伝えました(笑)。

──SKE48や乃木坂46での仕事と、今回の女優のように、グループを出て1人でやる仕事とは、かなり違いますか?
松井玲奈

松井:全然違いますね。ダンスとか歌を覚えるのは、だいぶ慣れて早くなったんですけど、セリフをきちんと自分の気持ちに消化して言えるようになることは、とても難しくて。自分ではない人の気持ちを、ちゃんと台本から理解しなくちゃいけないし、相手のセリフの言い方が、思っていた言い方と違ったら、その言い方に合わせて返さなくてはいけないし。1つひとつの作業がすごく繊細だなって思っていて。
 でも、それを日常生活では普通にやっているんですよね。普通にやっていることを、改めてお芝居でやろうとすると、難しいなと思うし、(自分は)まだまだだなと思います。

──普通ってなんだろうって思っちゃう?

松井:思っちゃいますね。ただ立って喋っているときも、「手ってどうしてたっけ?」みたいに思って(笑)。でも、だからこそ人間観察をしていて、こういう風に喋る人もいるんだとか、こういう風に立っている人もいるんだとか、人を見ているといろいろな発見もあって、それがお芝居にプラスになるかと思うと、日常も楽しいなって思えたりします。

ファンの応援にこれからどう応えていくかが、一番大切
──演じてみて、女優の面白さや女優としての手応えを感じた?
松井玲奈

松井:昔からずっとお芝居がしたいと思っていたのは、自分と違う人になれるとか、自分が経験しない世界を経験できるというところが面白いと思っていたからで。なので、これからも機会があれば、いろいろな作品に参加できたらいいなって思ってます。

──劇中でセーラー服を着ているシーンがあります。いかがでしたか?

松井:高校生の設定だったら良かったんですけど、中学生の設定だったので、うーん、ちょっと厳しいなと思いながら演じました(笑)。

──7月27日で23歳になりましたが、どんな1年にしたいと思います?

松井:難しいですね……。あまり何かしたいとか、どうしたいと思っていないんです。目標はあるんですけど、でも、それは次の1年で達成したいとういうタイプの目標ではないので。自分が思っている目標に向けて、着実に一歩ずつ近づけるような1年にできたらいいなと思います。

──ちなみに、その目標はどんな目標でしょうか?

松井:ヒミツです(笑)。

松井玲奈

──総選挙で5位になりました。気持ちに変化はありましたか?

松井:基本的に変わってなくて(笑)、いつも通りなんです。総選挙の順位も、私が頑張ったというより、ファンの方がすごく一生懸命応援してくださっているからなので、それに私がこれからどう応えていくかが、一番大切かなって思っています。

──プライベートの話で恐縮ですが、美しさを保つためにやっていることってありますか?

松井:何でしょう? 別にキレイじゃないので……。そうですね、最近は発酵食品に凝っていて、ぬか漬けを作ったりとか、朝、甘酒を飲んだりしています。

──美味しいんですか?

松井:すごく美味しいんです。美味しいから続きますね。

──最後に、この世界に入って、一番嬉しかったことを教えてください。

松井:今回、映画の主演をできたのがそうですね。ずっと映画に出たいと思っていて、夢のひとつでもありました。そのなかで主演という大役を任せていただいたのは、本当にすごいことだと思っているので、活動を続けてきて良かったなって思います。

松井玲奈
松井玲奈
まつい・れな

1991年7月27日生まれ、愛知県出身。2008年にSKE48の一期生としてデビュー。2015年グループを卒業。その後は役者の道に進み、ドラマでは『都立水商! 〜令和〜』(19年)、『ブラックスキャンダル』(18年)、NHK連続テレビ小説『まんぷく』(18年)、映画では『今日も嫌がらせ弁当』(19年)、『21世紀の女の子』(19年)、『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』(18年)などに出演。また2019年4月には、作家として初の短編集「カモフラージュ」を刊行するなどマルチに活躍中。

松井玲奈
gift
2014年7月12日より全国公開
[監督]宮岡太郎
[脚本]中村由加里
[出演]遠藤憲一、松井玲奈
[DATA]2014年/日本/MMJ