1989年3月21日生まれ。埼玉県出身。2007年にテレビドラマ『仮面ライダー電王』に初主演。その後は『ROOKIES』(08年)、『メイちゃんの執事』(09年)などテレビドラマで活躍。10年、大友啓史監督も演出を手がけたNHK大河ドラマ『龍馬伝』で時代劇に初挑戦した。同年の『Q10(キュート)』で連続ドラマ初主演、他の出演ドラマは『とんび』(13年)、『ビター・ブラッド』(14年)など。12年には『ロミオ&ジュリエット』のロミオ役で舞台初出演にして主演をつとめる。映画は『GOEMON』『ROOKIES−卒業−』(共に09年)、『BECK』(10年)、『るろうに剣心』(12年)、『リアル〜完全なる首長竜の日〜』『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(共に13年)など。
『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』佐藤健インタビュー
さらにスケール・アップしたハリウッド級の娯楽作に、全力で打ち込んだ体験を語る
記録的な大ヒットとなった前作『るろうに剣心』から2年。刀と刀、肉体と肉体、そして心と心のぶつかり合いがさらにスケール・アップした『るろうに剣心 京都大火編』『〜伝説の最期編』。
見た目はもちろん、刀を使ったアクションといった外面でも、悲しみを抱えた複雑な内面でも、主人公・緋村剣心になりきった佐藤健に、2部作となったシリーズ最新作について、とことん語ってもらった。
佐藤:コツっていうのはわからなくて。すごい感覚的なものなんですね。練習してるときに常にムービーで撮っていました。ひとつの立ち回りが終わったら、息切れしながら、その映像をみんなで見て、「ここイケてる」、「ここイケてない」と話し合う。「もっとこうしたら、かっこよくなりそうだね」って。そういうことの繰り返しでした。
ひとつあるのは、どんなに僕がかっこよく形を決めて、超人的な動きをしたとしても、全然訳のわからないところを狙ってたら、かっこよくは見えないということです。かっこいいっていうか、見てる人が興奮するにはリアリティがすごい重要になるというのは、やっていて感じてました。僕の形よりも、実際に当てにいってる、実際に殺しにいってるっていう瞬間が一瞬でも見えた方が、見てる人はわくわくするんじゃないかと思います。
佐藤:めちゃめちゃ意識しました。前回も意識しましたが、あのときは剣心ががらっと豹変してしまうところにカタルシスを作りたかったんです。だから、できるだけ前半はおろおろして(笑)、要はあまり強く見せすぎないように、できるだけ抑えて抑えて、最後の吉川(晃司)さんとの一騎打ちで急に爆発する。その二面性をいかに大きく出せるかというか。それが前回の僕のなかで剣心を演じるテーマだったんです。
でも今回は、剣心でさえも今の自分がどっちのモードなのか、わからないまま突き進んでいくみたいな。そこが面白くなればいいなと思ってやってました。実はそこも感覚でやっていたので、「ここはどっちなの?」と聞かれても、うまく答えられないことがあるかもしれません。
佐藤:漫画原作って一括りで言うけど、まず一括りにならないんですね、やってる側からすると。漫画原作の実写でも、いろんな形があると思ってます。「るろうに剣心」に関して言うと、僕自身、原作が大好きで熱心に読んでいたし、アニメも全部見たし、そこからいい台詞を映画に引用しました。忠実とはまた違うんですけど、原作をかなり意識してると思います。でも、またひとつ漫画は漫画であって、設定とか、いいところだけ申し訳ないけど頂きますっていう方法もあるだろうし、いろんなやり方があると思うんですけど。
今回に関しては、台本を読んでいて「このシーン、なんかしっくりこないな」と感じたときに「こういうときって剣心どういうこと言ってるんだろう」と漫画のなかから探したりしましたね。特に『伝説の最期編』はオリジナルストーリーの要素がかなり強いんです。原作の『京都編』は長いから、もうそれはしょうがなくて。そうなると、原作の台詞も当てはまらなくなっていく。そうなったときが難しくて。原作にないけど、剣心だったらこの状況になったときに、どんな言葉を考えるんだろうと、自分なりに想像して台詞を考えたシーンもあります。
佐藤:エンターテインメント作品であんなに映像に力がある作品って、僕、日本映画ではあんまり見たことがないんですよね。ちょっとハリウッドに近いというか。今までは洋画を見て体感してたことが日本映画でも体感できる、しかもハリウッドのまねごとじゃなくて、ちゃんと日本の美も入ってるし。とにかくエンターテインメントというジャンルの作品で言うと「今までの日本映画以上に力持ってるな」というか「エネルギー量が半端じゃない」と思って。
あとは単純に、刀を使ったソード・アクションで言うと、やっぱりリアルって今までできなかったんです。リアルに刀を当てるのはどうしてもずっとできなくて、「お前、どこ斬ってんだよ」みたいになりがちだったところを、アクション部の方たちが最高の技術を持ってきてくれたので、特に刀を扱ったアクション映画で言うと、革命的な作品だと思えたので、そういった意味でも「日本映画の歴史を変える」というのは僕も全然大げさじゃないと思ってます。本当に見るべき映画だと思うんですよね。好き嫌いとか置いといて(笑)、映画好きなら、こういう映画を2014年に大友啓史が作りました、という知識として、とりあえず見とけっていう映画になったんじゃないかなと思います。
佐藤:(笑)もう頑張るしかないんですよね。もう本当に冗談抜きで、けがで撮影が最後までできないとか、大げさじゃなくて、可能性として大いにあることだと思ってました。でも、そんなこと絶対起こすわけにはいかないから、どうするかっていうと、もうとにかく集中してやるしかないんですよ。そのモチベーションをキープして半年間やるのが一番しんどかったかもしれない。正直、本当に辛かったし、きつかったんですよ。
でも、そういうときに、前作を見て興奮してもらえて、続編にすごい期待してくれてる人たちがいるんだってこと考えると、「やっぱやってやろう」って気持ちになれましたね。これは本当にきれいごとじゃなくて、撮影中かなり助けられました。あとはみんな頑張ってます。僕ひとりじゃないし。監督も共演者も、もちろんスタッフも一緒だろうし。
佐藤:強くなってきますね、どうしても。ひとつの作品にかける覚悟とか本気具合みたいなのは。それは大友組だからだと思うんです。そんな気持ちにさせてくれるのが大友組だったし、もう単純に、こんな大きなプロジェクトもそうは経験できないし。だからそういった気持ちはかなり強かったですね。
佐藤:いや、素晴らしいです。全員共通して、本当に悲しいやつらなんです。剣心も、志々雄も蒼紫も宗次郎も。もう悲しすぎるぐらいの過去を持った男たちなので、その生き様を見て欲しいんです。原作ではすごい時間を割いてそのバックボーンを描けるけど、映画ではそれはできないから、どうするかと言うと、俳優さんの出すオーラの説得力に頼るしかなくて。説明しなくても、匂わせてくださる俳優さんたちばっかりだったので、そういった点で僕はもう「るろうに剣心」原作ファンとしては、もう完ぺきなキャスティング過ぎてすごい幸せでした。
(text=冨永由紀)
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