1968年5月1日生まれ、韓国出身。漢陽大学校演劇映画学科を卒業後、俳優に。『ペパーミント・キャンディー』(00年)でブレイクし、『オアシス』(02年)、『シルミド/SILMIDO』(03年)、『力道山』(06年)、『TSUNAMI−ツナミ−』、『冬の小鳥』(共に09年)などに出演。
ある雨の日の朝、学校へと向かう8歳の少女は、1人の男に連れ去られ、恐ろしい暴行事件に遭ってしまう。心と身体に深い傷を負った少女だったが、マスコミで報じられたことからさらに追い詰められ……。
日本でも幼女への暴行事件はたびたび報じられるが、本作は、2008年に韓国で起きた幼女暴行事件とその裁判結果をもとに、家族の絶望と、そのなかで希望を見出していく様子を描いた作品だ。過酷な事件によって傷つくだけでなく、マスコミや社会の好奇な目による二次被害、裁判がもたらす苦しみを映し出していく。
犯人と同じ「男性」ということから傷ついた娘に拒否されてしまう父親を演じたのはソル・ギョング。幅広い役柄を演じカメレオン俳優と呼ばれ、またトップ俳優として『力道山』(06年)、『シルミド/SILMIDO』(03年)などに出演してきた彼は、本作では平凡で非力な父親を熱演。韓国で280万人が涙したという本作について語ってもらった。
ギョング:この映画のもとになっている実際の被害者の家族が、いかに傷ついた感情を子どもに気付かれまいとしていたかという話を聞きました。それは言い表すなら、ただただ耐えて、でも密かに山に行き、すべてを叫び散らすような状態だと。これ以上に酷い傷はありますか? 私はこの両親の気持ちを代弁したかった。また、本作に出演したことで、自分の家族や友だち、周りの人々を今まで以上に大切な存在として感じるようになりました。
ギョング:本当に彼女はダイアモンドのような存在でした。彼女にとってこの映画に参加することがどれだけ難しかったか重々承知しています。彼女の両親は、最初からやらせたくないと言っていて、最後の最後まで躊躇していました。オーディションの映像クリップを見て、イ・レが演じるべきだと思っていただけず残念でした。でも、その後、彼女の母親が電話をしてきたのです。イ・レがずっとこの映画に参加したがっているのに、役を断るのは間違っていると思ったそうです。
私はイ・レの演技が本当に好きでした。映画のなかで彼女のメイク(アザや傷など)が徐々になくなって癒されていくソウォンのなかに、常にイ・レの存在を感じていました。
ギョング:最初に脚本を読んだときは難なく読めたのですが、この役を演じる勇気はなかったです。この映画が、実際の被害者たちに余計嫌な思いをさせるのではと心配でした。でも、イ監督とたくさん話し合い、このような事件がしょっちゅう起こっているということ、また、嫌な気持ちにさせるものではなく、近所同士の、人々の繋がりや温かい気持ちを伝えるための映画なんだと理解し、出演を決めました。
演じていて一番難しかったのは、娘のソウォンが事件に遭って、最初に病院に運び込まれたときに、彼女の手を取って話をするシーンです。あとは裁判のシーンですね。最後、ソウォンを法廷から連れ出すシーンは、実は脚本にはなかったのですが、泣いて演技をしているうちに父親の気持ちになって自然とそうしていました。
ギョング:現場の雰囲気は監督に委ねられるものですが、イ監督は気遣いが上手く、情に厚い雰囲気でした。いつもこの映画について話していましたし、撮影がない日はソウォン役のイ・レも連れてみんなで家族のように釣りに行きました。そんな家族のような現場だったので、本作が青龍賞で最優秀作品賞を受賞した後のパーティーで、みんなでお互いに感謝し合ったときは最高でした。本当に最高の気分でしたし、近い将来、同じ監督、キャスト、スタッフでまた映画を撮りたいです。
ギョング:この映画は必ず見るべき映画だと思います。このような犯罪にみんなが真摯に向き合い、戦って、このようなことが二度と起きないようにと考えさせてくれる映画です。一方で、普通の家族と周りの人たちとの心温まる話でもあります。ぜひ、温かい気持ちでご覧になってください。
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