1976年4月13日、韓国ソウル生まれ。舞踏家としてキャリアをスタートさせせ、モデルとしても活躍。98年に『バイジュン〜さらば愛しき人〜』で映画デビュー。以降、『リベラメ』(00年)、『春の日は過ぎゆく』(01年)、『オールド・ボーイ』(03年)、『ミッドナイトFM』(10年)など日本でも話題になった多くの話題作に出演。監督作には、短編の『自転車少年』(03年)、『マイラティマ』(13年)がある。私生活では2011年に女優のキム・ヒョジンと結婚、2014夏に第一子が誕生した。
『ザ・テノール 真実の物語』ユ・ジテ&伊勢谷友介インタビュー
日韓で世代もキャリアも同じ道を進む2人が、初共演の印象やパートナーシップについて語る
オペラの本場ヨーロッパで天才と讃えられながら、甲状腺がんにより美声を失った韓国出身のテノール歌手ベー・チェチョル。彼の才能を信じて再起まで支え続けた日本人音楽プロデューサーの沢田幸司。
実話をもとに、国境を超えた友情と奇跡を描いた映画『ザ・テノール 真実の物語』で初共演を果たしたのが、ユ・ジテと伊勢谷友介だ。実は2人は同じ年齢で、同じ年に映画デビューを飾り、俳優として多くの作品に出演しながら監督にも挑戦、社会活動への関心も高いなど、多くの共通点を持っている。そんな2人に互いの印象や撮影中のエピソードを聞いた。
ジテ:僕たちは同じ年齢で、興味をもっている分野も似ています。伊勢谷さんの出演作も以前から見ていて好きだったので、すぐに打ち解けることができて嬉しかったです。
伊勢谷:僕自身は、韓国の男優さんと共演したのは初めてで、どういうテンションでみんなが芝居をしているのかまったくわからなかったのですが、ユ・ジテさんの過去の作品を見ていてリスペクトがあったので、さっと打ち解けることができました。
国は違えど互いに似たようなシチュエーションのなかで過ごしてきて、共感する部分もたくさんあり、なおかつやっていることは近いんですけど、人間性がだいぶ違っている気がします。彼はやさしく人々を包み込むような雰囲気を持っていらっしゃるので、この映画全体のお父さんみたいな存在でしたね。
伊勢谷:僕自身は全体を見ることができるほど大きいところはないと思っています。単純に何かの物事には一生懸命にはなりますが。撮影中、彼の広げている手のなかで遊んでいたような感じです。
ジテ:(笑)。2人の息が合って、パートナーシップを築くことができたので、本当に楽しく撮影させていただきました。
ジテ:声楽のトレーニングを1年間ほど受けて、ベー・チェチョルさんからは、声の出し方やステージの上で観客を掌握する力などについてお話を伺いました。1年間というと長いですが、撮影の間に休みがあったので、その間に集中的にトレーニングできました。
伊勢谷:僕は株式会社リバースプロジェクトの代表もしているのですが、僕らが挑戦していることは利益優先ではなくて、社会の仕組みを使って何ができるか、ということです。つまり、志を絶対に忘れない会社なんです。沢田も、そういう会社でトップに立っているんですね。きっと金銭的には厳しい状況かもしれませんが、そうだったとしても本質を忘れないということは僕の会社と同じです。僕は舞台に立つ一方でそうではない生活もしているので、重なる部分がありましたね。
伊勢谷:何度も何度もお会いして、お話も聞いて。現場にもいてくださったし、現場を支えようとしてくださったし。それこそ、何に対しても熱い方なんですよ。だから、それを見習って役にも僕の会社にも投影できました。
ジテ:チェチョルさんは俳優とスタッフを励ますために歌ってくださったのですが、そこにいた全員が本当に感動して、みんな泣いていました。
伊勢谷:僕は見られなかったんですが、映画の撮影とは別に、ベーさんが下関でライブをされたときに、(共演の)北乃きいさんと一緒に行きました。それはそれは感動しましたね。
ジテ:乗り越えることができる、と今ここで簡単にいうことはできないのですが、もしあのようなことになったとしたら、映画と同じように、私の妻や友人がサポートしてくれるのではないかな、と思います。
伊勢谷:そうですね、だからそれまでにたくさん愛情を撒いておかないと(笑)。あとは、ジテさんとも話していたんですけれど、手がなくなったら足で何かするとか、その場その場でできることは違うと思うんですよね。間違いなく言えるのは、理想や目的をもし見つけることができているなら、できることから達成していくことが大切であり、それはどんな立場でも可能だと思うんですね。簡単ではありませんが、できないことを悩むのではなく、できることを探す、というふうにありたいなと思います。
ジテ:もちろん。(日本語で)
ジテ:私にとって映画や演技というのは宿命以上のものであり、私にとっての現実でもあります。神は私に俳優としての感覚を与えてくださった、と思っています。同時に執念を持っているので、今後はその執念でもっといろいろなことを観客の方々に見せてくことができるのではないかと思っています。
伊勢谷:もし俳優もモデルと同じように外見が大事だとするならば、それは僕が頑張ったことではなく、父と母のDNAを受け継いでの結果なので、それについては神様が与えてくださったといえるかもしれません。さっきの質問の答えとも重なってくるのですが、みんなそれぞれのシチュエーションで生まれてくるので、そのなかでできることを最大限にやっていくこと、自分の可能性を見出していくことが必要ですよね。僕は今、このように生まれてきて、表現する側のことを一生懸命やらせていただけるのは、与えてもらったことをきっかけにしていることは間違いないです。ただ、それは俳優ではなくても、どんな人でも同じなんじゃないかなと思います。
──おふたりとも監督業の経験がありますが、ご自身が出たいと作品と監督したい作品は同じですか?違いますか? また、伊勢谷さんが監督するならユ・ジテさんをどのような役で起用したいですか? ジテさんが監督の場合はいかがでしょう?
ジテ:難しい質問ですね(笑)。私の場合、出演したい映画と撮ってみたい映画はまったく別です。理由は、さきほど伊勢谷さんがおっしゃっていた、それぞれ置かれた状況でできることを見出していく、ということにも通じると思うのですが、それぞれのポジションにおいての長所と短所は違うので、それを把握したうえで自分ができることも変わってくるからです。
伊勢谷さんのこれまでの作品を見ると、男らしく突き進んでいくようなイメージのものが多いので、僕が撮るなら彼のなかにあるソフトな感性が表現できる役を演じてもらいたいと思っています。
伊勢谷:やってみたいですね。僕は、役者としてやるときはどんな役でも楽しめるんですよ。ただ、監督をするときは、どんなものでもという事ではなく自分が何を社会に訴えたいか、ということを考えますね。結果、出演したい作品と撮りたい作品が違うこともあります。ユ・ジテさんで作品を撮るなら……彼は『ミッドナイトFM』でものすごい悪人をやり、『オールド・ボーイ』でもめちゃくちゃ悪人をやり(笑)、今回は葛藤される役でしたけれど、僕としては、ジテさんはこういう優しい笑顔をされていて、しかも完璧な男を理想としてちゃんとそこに向かって歩まれているので、その誠実な部分を全開で見せていけたら面白いな、と思いますね。
ジテ:『ザ・テノール』は決して難しい映画ではありません。心が温かくなる愛のメッセージが込められた映画です。ぜひみなさん楽しんで見てください。
伊勢谷:この映画では国籍とかは関係なくて、人の才能に惚れるとか、その人間に惚れるとか、そういうところから出てくる力強さが未来をつくっていく、ということを表現していると思います。僕自身もこの映画でユ・ジテさんに出会いましたが、もし彼が韓国で困っていることがあったら僕は助けに行くでしょう。こういうこと(友情)が生まれるきっかけになったのはこの映画であり、それをみなさんと共有できたら嬉しいので、ぜひ見てください。
ジテ:カムサハムニダ(ありがとうございます)。
(text&photo 秋山恵子)
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