日本人にもおなじみの「西遊記」。三蔵法師と孫悟空らが天竺を目指すこの物語の前日譚を笑いと涙を交えて描いたオリジナルストーリーが、チャウ・シンチー監督の最新作『西遊記〜はじまりのはじまり〜』だ。
昨年、中国で公開され興収148億円で年間第1位。世界興収では200億円を超えるメガヒット作について、シンチー監督に語ってもらった。
──あの猪八戒が美男子、孫悟空が青白くはげた老人という設定で日本人のイメージを覆してくれましたが、なぜこのような設定を思いついたのですか？
監督：これは創作力といいますか、思いついて、いろんな角度からキャラクターとして何ができるのかを考えました。猪八戒は醜いイノシシなんですけど、差を作りだすために美男子を作ったわけなんです。孫悟空もわざと老人を作って、実際はこういう動きのよくできる人だと差を作りたかったから、そういう風にしたんです。
孫悟空は優しいイメージという話なんですが、僕はそうとは思いません。彼は元々野獣なんですね。若いときからずっと間違いを起こしてきて、やっと三蔵法師を助けてきて、一緒にオデッセイに出かける。いろいろ過ちを起こしながら正し、プラスマイナス両面を持っている豊富なキャラクターだと思います。
監督：大好きなんです。子どものときから今までずっとファンだったし、子ども時代からドラマとか映画、小説も読み続けてきているので。「西遊記」は内容があまりにも豊富で、作家がどうしてこんなにたくさんのことを思いつくのか、考えられるのか、本当に不思議だったんです。キャラクターでは孫悟空が1番好きですね。それに、他のメインキャラクターの人たちもいいですけど。
監督：ラブストーリーの要素は最初から盛り込もうと思っていました。
監督：今回の映画の話は玄奘を中心にしていて、彼が成長していく大きな内容ですから。彼の宗教は仏教で、彼が、愛情──男女の感情としてどういう風に考えているか、そのことについては深く考えて、映画のなかに詳しく書いているつもりなんです。
──脚本作りで難しかった点は？
監督：大きく2つありました。ひとつは、仏教から愛情の見方をどう表現するか。もうひとつは玄奘がどうやって3人の弟子を見つけるか。それから、物語を縮小し、テンポを早くしなければいけないので、それらをどう表現するかも難しかったですね。
監督：出演しなかった理由は特にないのですが、僕が出る役がなかったので（笑）、監督に専念しました。
監督：出演したいのは間違いないんですけど、ミス・段を演じるわけにもいかないし、玄奘は若いから僕の年齢を超えているし、猪八戒はマスクをかぶっているし、沙悟浄は短いからあまり興味ない。孫悟空は醜いキャラクターで僕のような美男子じゃないから、それはちょっと……（笑）。メインキャラクターはすごくいい役者さんが揃ったので、僕の出番がなくても全然問題ありません。
監督：美人というのも間違いないし、映画のなかの性格には彼女の性格に似ている部分もありますので、好き嫌いがはっきりしていて、ストレートで強烈なところもあるから、彼女にピッタリじゃないかと思います。
──映画の最後に『Gメン’75』という日本人には懐かしい刑事ドラマの曲が使われているのも印象的でした。
監督：『Gメン’75』が大好きなんです。曲を映画の最後にするのは、やはりドラマをマネしているのです。三蔵法師と3人の弟子がオデッセイに出るというのは、まさにGメンが罪をやっつける、妖怪をやっつけるイメージで、そのシーンを作りました。
監督：理解できると思います。私の知っている限りでは、この曲をみんな知っていて大好きなんです。
1962年6月22日 香港生まれ。俳優・脚本家・映画監督・プロデューサーなど多彩に活動するヒットメーカー。香港でテレビ局の俳優養成学校に入学。子ども番組の司会を経て俳優業に進出し、映画デビュー作『霹靂先鋒（原題）』でいきなり台湾電影金馬奨最優秀助演男優賞を受賞。香港歴代興収1位を記録した『ゴッド・ギャンブラー／賭聖外伝』（90年）、単独で初監督・脚本・製作・主演を果たし香港歴代興収No.1を獲得した『少林サッカー』（01年）、香港と台湾の歴代興収1位を記録した『カンフーハッスル』（04年）などを監督。
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