1966年10月19日生まれ、アメリカ合衆国ニューヨーク出身。ウォール街で働いた後、俳優として活躍。映画監督やプロデューサーにも進出し、『アイアンマン』(08年)を監督し大ヒット。『アイアンマン2』(10年)の監督もつとめた他、『アベンジャーズ』(12年)では制作総指揮を、『アイアンマン3』(13年)製作をつとめている。
『シェフ 〜三ツ星フードトラック始めました〜』ジョン・ファヴロー監督インタビュー
ハリウッドのヒットメーカーが低予算映画に再挑戦した理由とは?
一流レストランの総料理長として華々しく活躍する一方で、仕事への情熱を失いかけていたシェフ。売り言葉に買い言葉で店を辞めてしまった彼が、フードトラックでサンドイッチの移動販売を始める姿を描いた『シェフ 〜三ツ星フードトラック始めました〜』は、美味しい料理と楽しい音楽、そして人生の希望が詰まった爽快作だ。
『アイアンマン』シリーズを大ヒットさせたハリウッドのヒットメーカー、ジョン・ファヴロー監督が、心機一転で挑んだ低予算映画でもあり、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニーJr.、スカーレット・ヨハンソン──これまでに培った人脈を駆使した豪華なキャスト陣も話題のひとつ。
人生のターニングポイントを受け止める男の成長物語は、ファヴロー監督自身をも彷彿とさせるが、そんな本作について監督に語ってもらった。
監督川:僕は仕事を始めた90年代、独立系の小作品を作っていた。その後、幸運にも大作でも成功を収めることができたけど、今度はもっと自分のパッションに沿ったストーリーを作りたいと思うようになったんだ。大作ではそんなパーソナルなものは作れない。だからこの脚本を書きながら、自分の思い通りに作る自由を得るには、インディペンデント作品の規模でやらなきゃだめだと気づいたんだ。
監督:楽しかったよ。自分の言いたいことが言えたからね。しばらく独立系の世界から遠ざかっていたので、まず予算をいくらにすればいいのかを調べることから始めた。脚本に口出しされたり、どこで撮影しろとか誰を使えとか言われたり、ファイナルカットを取り上げられたりしないですむ製作費はいくらなのか。そして、その範囲内で作れる脚本を書き、その脚本を見せた人たちが、気に入ってくれた。そういう形で始まったんだ。
監督:キャスパーのキャラクターは、僕自身が仕事を始めた当時に、もし悪い選択をしていたら今頃なっていたであろう人間の一面を表している。彼は家族よりも仕事を優先し、口を閉じるべき時を知らず、感情に駆られて冷静さを失う。熱い心を持っていて、仕事に打ち込んでいるから魅力的な男でもある。でも映画の冒頭では彼を見ていると、これまでの人生で最善の選択をしてこなかった男なのかもしれないと思えるんだ。
それからキャスパーは仕事で充実感を得ることができなくなってゆく。さらにはソーシャルメディア上で恥をかいたことから仕事を失う羽目になる。そこでゼロから再出発しなければならなくなる。そしてそれまで彼が理解できなかった形で家族や仕事と関わっていくことについて、いろいろなことを学ぶ。そうすることできちんとやり直すチャンスを得るんだ。
監督:製作費集めに力を貸してもらうために友人たちに出演依頼をする──というような心理的負担は負いたくなかった。だから資金が調達できた時点で初めて彼らに話したんだ。「この作品が気に入って、楽しい時間を過ごしたいと思ったら参加してくれ」ってね。そうしたら、これ以上は望めないほど最高のキャストが揃った。ジョン・レグイザモとはずっと以前から一緒に仕事をしたいと思っていた。彼はアドリブがうまい素晴らしい役者だ。さらにボビー・カナヴェイル、ダスティン・ホフマン、エイミー・セダリス、ソフィア・ヴェルガラ、ロバート・ダウニーJr.、スカーレット・ヨハンソンといった錚々たる面々が、脇役を演じてくれた。
監督:最初は全編をロサンゼルスで撮影しようと考えていたんだが、他のロケ地にも行くことになった。この仕事を始めて間もない頃に、現地で撮影するに限るということを学んだんだ。真実味が大幅に増すからね。この作品に出て来るのは本物の人々や場所だから、見ていると実際に食べ物を味わったような気分になる。なぜなら食べ物というのは非常に体験的なものだし、周りの環境が大きく関係するものだからだ。観客にもあの車に乗って旅している気分になってほしいと思ったんだ。バイクとカメラだけ用意して南部を走って撮影した『イージー・ライダー』のような映画を作ってみたい、と昔から思っていたんだ。あの映画は何年たっても色あせない。見ていると彼らと一緒にアメリカを横断しているような気になる。そういうものを作りたかったんだ。
監督:評論家の言葉がもたらす影響の大きさという点では、料理評論家の方が映画評論家よりも重要な立場にある。彼らはインスピレーションに富んだ優れた仕事を称賛すると同時に偽善を暴く。情熱を抱いたシェフと、悪意をもった料理評論家、そして高圧的なオーナーというのが料理を扱った映画の典型的構造だが、僕はその構造をいじくりまわして、評論家がシェフの成長を促す最大の要因になるようにしたんだ。
監督:大きな力を持っているし、この先ずっと存在し続けるものだ。この映画では、ソーシャルメディアが夢を壊すこともあるし、夢を叶えることもあることを見せている。デジタル時代に生まれた世代であるパーシーは、父親よりもソーシャルメディアのことをよくわかっている。シェフのように、自分が有名になるとは思いもしないで職に就き、またソーシャルメディアが何たるかを理解もしていない人たちがいる。だからキャスパーのように、ツイッター上で思っていることをそのまま吐露してしまうと、キャリアを失うことにもなり得る。一方で、フードトラックのように、もっと小規模でお客さんと直接つながるような商売では、同じようにツイッターを利用することで、以前には不可能だったような方法で顧客層を生み出すことができる。というわけで、ソーシャルメディアは、従来のシェフとしてのキャスパーのキャリアを打ち砕くと同時に、新しい扉を開いてもくれるんだ。
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