1974年3月23日生まれ、スペインのカタルーニャ州バルセロナ出身。90年代初頭、コロンビア・カレッジの映画学校に入学するため、バルセロナからロサンゼルスに移住。音楽ビデオ監督を経てCM監督に。スタイリッシュでシュール、そしてしばしばダークな映像がプロデューサーのジョエル・シルバーの目に留まり、05年に『蝋人形の館』の監督に抜擢される。その後、『GOAL! 2』(07年)、『エスター』(09年)などを監督。『アンノウン』(11年)、『フライト・ゲーム』(14年)でリーアム・ニーソンと組む。
『ラン・オールナイト』ジャウム・コレット=セラ監督インタビュー
実写版『AKIRA』監督としても話題を集める気鋭が“最強オヤジ”との信頼関係を告白!
『96時間』で娘を守る“最強オヤジ”として人気を博したリーアム・ニーソンが、今度は息子を守るために闘う姿を描いた『ラン・オールナイト』。殺し屋として闇の世界に生きてきた男が、息子のためにニューヨーク中から追われるノンストップ・アクションに思わず興奮してしまう。
本作を手がけたのは、『アンノウン』『フライト・ゲーム』でもニーソンと組んできたジャウム・コレット=セラ監督。スペイン出身で、実写版『AKIRA』の監督としても注目を集める彼に、リーアム・ニーソンの魅力などについて話を聞いた。
監督:もちろんだよ。というのも、彼がこの3作で演じてきた役柄は、それぞれ大きく違うわけだからね。だから、毎回そこには新しい発見がある。どのシーンだって何が起きるのか予想がつかないものだ。いつだって驚きの連続だよ。彼にだって僕がそのシーンをどうやって撮影するのか想像できないような時もあるはずだ。当然綿密に計画するけど、場合によっては意図的に即興で撮影したりもするからね。だから、驚きは常にあるけど、大事なのは、作品を重ねたおかげで、2人のコミュニケーションが素晴らしくなったし、非常に密であるということ。おかげで、僕がいつ違う演出をしても、その中で彼は最高の演技を見せてくれてくれる。ただ、コミュニケーションがし易いからといって、何から何まで事前に話し合うというものでもないんだ。何かが上手くいっていない時だけ、撮影を中断して、話し合ってどうすればいいのかを見付けていく。2人の間にはエゴが存在しないんだ。彼は、かのリーアム・ニーソンであって、僕はただの人なのにね(笑)。
監督:明確なビジョンがあるということかな。恐らく、当初から僕がどんな映画を撮りたいのかという明確なビジョンがしっかりとあったことが良かったんだと思うよ。『アンノウン』で初めて彼を監督した瞬間を覚えているんだけど、それは彼が病院から逃げ出すシーンで、廊下をただ走る、台詞はないシーンだったんだ。それは、僕が初めてリーアムを監督した瞬間だったんだ。だけど、彼はその時から、僕がどんな風にそのシーンを撮影したいのか明確に分かっていたように思うんだよね。しかも、僕は彼が予想もしていないかった方法でそのシーンを撮影したのにね。カメラがすごく変な位置にあったんだけど、それは、彼の役がクスリの影響下にあることを象徴していたからなんだ。それを説明したら、彼はすぐに「分かった」と言ってくれて、その時に、この人は、説明すれば分かってもらえる人だと思ったんだ。彼は僕が頭の中にビジョンがあることが分かってくれて、俳優として、監督のビジョンを叶えるために最高の演技をしてくれる人だということがね。それ以外に監督としてのぞむことってないよね。そうやって、2人の長い関係性は始まったんだよね。
監督:観客は、彼と息子の関係性に共感するんじゃないかと思うんだ。彼と息子の一瞬でも良いから、親子らしい瞬間を目撃したいと思うんじゃないかな。それは、エド(・ハリス)のキャラクターにとっても同じで、だから、観客はそれぞれの息子との関係性に共感すると思うんだ。もちろん、その結果がどうなるのかは分からないわけだけどね。この映画には、話すべきようなことがたくさんあり、観客はそれを目撃したいと思うと思うんだ。もしエンディングが分かっていたとしても、その間の物語のほうを見たいと思うタイプの作品だと思うんだよね。つまり、この映画は、どのように終わるのかが大事な作品ではない。この映画は、どう終わろうとも、このキャラクターたちを見届けたいと思うような作品だと思うんだ。それにリーアムはどんなキャラクターを演じても人を惹き付ける魅力が絶対にあるしね。
監督:それは、今、彼が本当にアクション映画をやることを心から愛しているからだと思うよ。彼は決して金のためにやっているわけではない。彼は本当に撮影現場を楽しんでいる。闘いのシーンをリハーサルして、どうやったら上手くいくのかを考えたりするのを楽しんでいるし、そうやって役になりきっていくことを楽しんでいる。人によっては、特定の映画のみで活躍をしているような人もいるけど、リーアム・ニーソンは、これまでも、様々なジャンルの映画に出演してきた俳優だし、そのすべてのジャンルにおいて、観客を満足させてきたような俳優だと思うんだよね。彼が出ているなら、その映画も良いはずだと信頼できるようなタイプの俳優だと思うんだ。
監督:彼も僕の第一希望だったんだよね。彼は、リーアム・ニーソンに匹敵するほどのカリスマ性がある。しかも、2人とも好感の持てる俳優であり、2人が友人であるという設定にも違和感がないと思えたからね。しかも、2人とももの凄い緊迫感も持っている。とりわけ、エド・ハリスは、一瞬にして怖い存在になることもできる。そういう人物がこの映画には必要だったんだよね。すごく好感の持てる人物が、一瞬にして悪人に変貌するというね。彼は、撮影していた時にブロードウェイの舞台にも立っていたのに、この作品にぜひ出演したいと言ってくれた。だから、彼の撮影ができたのは月曜日だけだったんだ。月曜日は、“エド・ハリス・デー”だったんだよね。
監督:本作は、宿命によって悪いことが主人公たちに起きるわけだけど、もちろん一般市民にそんなことが起きるわけはないよね。僕が描きたかったのは、この「あなたは逃れられても、宿命が家族を襲う」ということなんだ。というのも、この2人の主人公は本当に悪行を重ねてきたわけだからね。それなのに、2人ともサバイバルしてきた。1人は世界の終わりにいて、ルーザーであり、もう1人は一見クリーンに見えるけど、裏で悪行を重ねてきた。そのツケが家族にふりかかるんだ。2人とも息子が危険な目に遭い、そのせいで対決をすることになる。つまり、そこで逃れられない宿命に出会うことになる。僕自身は、何もしてないから、そういう宿命を恐れたりしないけど(笑)、そういう経験のある人は、運命に遭遇する可能性はあると思うんだよね。
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