『KIRI−『職業・殺し屋。』外伝−』文音インタビュー

本格アクション映画に挑んだ心境を語る!

#文音

母・志穂美悦子を超えられるわけがない

2008年、映画『三本木農業高校、馬術部』で主演を務め、女優デビューを飾った文音。その後、1年半のニューヨークの演劇学校への留学へ経て、2014年5月に帰国。本格的に女優活動を再開した。

デビュー当時の芸名は「長渕文音」。父は音楽アーティストの長渕剛、母は日本のアクション女優の第一人者・志穂美悦子だ。そんな彼女が、本格アクション映画『KIRI−『職業・殺し屋。』外伝−』で心に深い闇を持つルイを好演。激しい殺陣も披露した。偉大なる母のフィールドで勝負することに、彼女はどんな想いを抱いたのだろうか……。

──文音さん演じたルイは、非常に難しい役柄だと思いますが、どのように作品に入っていったのでしょうか?

文音:台本を読んだだけでは分からない点がたくさんありましたので、それを坂本(浩一)監督にぶつけさせていただき、私の意見も尊重してもらえました。坂本監督としっかり話し合いができましたので、100%ルイに共感した状態で撮影に参加できました。

──劇中は激しいアクションシーンも多く、坂本組といえば本格アクションチーム。そこに入っていくうえでの不安はありませんでしたか?

文音:なかったです。撮影前に坂本監督のジムに、(主演の)釈由美子さんと一緒に行って練習をさせていただきましたし、その時撮影していた『SAKURA〜事件を聞く女〜』というドラマも、アクションシーンがあり、スタントチームに特訓を受けていたんです。だからマイナスな感情はなく「本格アクション映画ってどういう現場だろう」という楽しみな気持ちでした。

文音

──文音さんのお母さまは、日本のアクション女優の第一人者といわれる偉大な方です。同じフィールドに挑むということへのプレッシャーはなかったのですか?

文音:そういう質問をされると「みんなはそう思うんだ〜」って不思議な感じですね。私自身はプレッシャーとかは一切感じませんでした。

──比較されるんじゃないかという思いもなかったですか?

文音:ないですね。志穂美悦子を超えられるわけないですから(笑)。母は16歳で東京に出てきて、毎日のようにアクションのトレーニングを重ね、デビューまでの2年間のすべてをアクションに費やしていたんです。またアクションの撮影の仕方も、昔と今では違いますからね。当時は、スタントを使わず、少ないカットで撮っていたようですし。私自身も、出来る限りスタントさんではなく、自分でやりたいという思いは強かったですが、志穂美悦子を超えるとか超えないといかの次元ではないですね。

「女優になるなんてあり得ない」と父は反対
文音

──映画『三本木農業高校、馬術部』でデビュー後、アメリカに留学されていますよね?

文音:堤幸彦監督が撮った「コヨーテ、海へ」というWOWOWのドラマに出演させていただきましたが、その撮影が2週間のニューヨークロケだったんです。そこで得たものが多く、当時私はまだ大学生でしたが、いつかこの地で本格的に芝居を学びたいなと思うようになりました。なので、大学卒業と同時に「行こう!」と決断しました。

──ニューヨークで学んだことは?

文音:精神力の強さです。芝居のノウハウやアクションも教わりましたが、私が通っていた学校は、世界中から役者になりたいと思っている人が集まってくる場所でした。競争心のぶつかり合い、上に行くには人を蹴落としてでもという気持ちが非常に強くて……。そんな環境でもまれたことにより、タフになりました。あとは台本読解の授業があり、そこで台本を読み込む力を学べたと思います。

──女優を目指そうと思ったきっかけは?

文音:3歳のころからクラシックバレエを習っていましたが、14歳の時に怪我でトウシューズが履けなくなったんです。それからしばらくやりたいことが見つからず、高校生になった時、表現することにチャレンジしたいと思うようになり、ヒップホップやジャダンスなどを始めました。その中で、東映のワークショップのチラシをたまたま手にする機会があり、色々な挑戦の一環として行ってみたら、お芝居って面白いなと思うようになりました。

文音

──女優の道に進むと決めたとき、ご家族は賛成してくれたのでしょうか?

文音:父は反対しましたね。女優になるなんてあり得ないって(笑)。

──本作では、深い感情を表現する難しい役に挑みました。今後はどんな女優さんになりたいと思っていますか?

文音:まだまだやったことのない役がたくさんありますので、色々な役に挑戦してみたいです。最終的には「文音じゃないとできなかったよね」って言われる女優さんになりたいです。ニューヨークでの留学経験もありますし、いつかは海外でのお仕事もできたらという夢はありますが、まずは日本で一生懸命頑張りたいです。

『KIRI−『職業・殺し屋。』外伝−』
6月20日より公開
(C)2015 東映ビデオ/エクセレントフィルムズ

──お仕事してみたい監督はいますか?

文音:佐々部清監督の作品が私のデビュー作で、映画界での父親みたいな存在。右も左も分からなかった私にすべてのことを教えてくださいました。また自分が成長した後に、もう一度、佐々部組に戻れればいいなって思います。

──文音さんにとってデビュー作の『三本木農業高校、馬術部』はどんな作品ですか?

文音:「この道に進んでいく」と決断ができた、自分の人生を変えてくれた作品です。馬に乗れなかった私が、クランクイン前、10ヵ月の時間をかけて馬に乗れるようになり、最後には障害も飛べるようになった。挑戦して成長できた作品です。

──最後に、『KIRI〜』の見どころを

文音:最初はエログロ炸裂……と思うかもしれませんが、そこには愛もありヒューマンドラマも入っています。もちろんアクションは見どころですが、私が演じたルイを含め、釈さん演じるキリとの姉妹の物語や、奥深くに秘めた感情などにも注目していただければと思います。

(text&photo:磯部正和)

文音
文音
あやね

1988年3月17日生まれ。東京都出身。2008年、映画『三本木農業高校、馬術部』の主役として女優デビュー。本作で、第32回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。その後、堤幸彦監督のドラマ『コヨーテ、海へ』(11年)の出演をきっかけに、ニューヨークへ演技留学。2014年5月に帰国すると、テレビドラマ『SAKURA〜事件を聞く女〜』などの出演を経て、本作で本格アクション映画に挑んだ。

文音
KIRI−『職業・殺し屋。』外伝−