1994年3月17日生まれ。神奈川県出身。09年に「AKB48・第8期研究生オーディション」に合格し芸能界入り。その後、女優を目指し、大河ドラマ『八重の桜』(13年)、『花燃ゆ』(15年)、連続テレビ小説『花子とアン』などに出演。本作でメガホンを執った園子温監督とは『新宿スワン』以降、数々の作品を共にし、『アンチポルノ』で念願の主演を果たす。
園子温監督作の『新宿スワン』、『リアル鬼ごっこ』、『みんな!エスパーだよ!』(9月4日公開)に立て続けに出演し、強い個性を発揮している新進女優・冨手麻妙(とみてあみ)。8月1日より公開される最新作『闇金ドッグス』では、悪徳芸能事務所所属の地下アイドル・姫野えりな役として、借金まみれになる“脆い”女の子を好演している。
冨手自身「AKB48・第8期研究生オーディション」で芸能界デビューし、AKB48研究生やグラビアアイドルとして活動していた経験を持つだけに、「すごくリアリティーのある台本だった」と役柄に感情移入できたこと告白。そんな彼女が自身の芸能活動や女優への想いを赤裸々に語った。
冨手:脚本を書かれた人はどこから情報を得たんだろうっていうぐらいリアルな話だなって思いました。普通、アイドルを描くと、どこか美しくきれいごとだったりすることが多いと思うのですが、今回の映画は、普段見せないようなアイドル業界の闇の部分が前面に出ているな〜って(笑)。でもそこがすごく面白くて、えりなという役は直感的に「やりたいな」って思いました。
冨手:映画で描かれていることが、実際全部あるというわけではないと思いますが、感覚として、アイドルを続けていくことってすごく大変だなという部分は重なりましたね。
冨手:自分たちの周りには大人がたくさんいて、大人たちの求めるものに合わせていかなくてはいけないという部分もあります。あとは同世代の女の子たちがいっぱい集まっていて、その中でみんなが「売れたい」「センターを取りたい」っていう気持ちで目標に向かって頑張っているんですよね。当然、ライバル心だったり緊張感だったり……。並大抵の努力じゃダメだし、厳しい世界だなって思いました。
冨手:当時は何もなかったんです。アイドルになりたいとも思っていなくて、ちょっとした好奇心だけだったんです。
冨手:アイドルとしてステージで人前に立たせていただくようになって、プレッシャーも感じましたし、厳しさも実感したんです。そんな中、元々映画が好きということもあったのですが、自分が経験した良いことも悪いことも、例えば失恋したとしても、そういうことをすべて前向きに生かせる仕事ってなんだろうって考えたんです。そうしたら演じることって、自分の人生を投影できる仕事なのかなって。そこからお芝居を一生懸命勉強したいって強く思いました。
冨手:『自殺サークル』が大好きなんです。あの作品に出会って、より映画が好きになって、園監督の世界観に魅了されてしまったんです。そこから園監督の映画に出ることが一つの目標になりました。自分の女優人生を変えてくれた方ですね。
冨手:毎回毎回、園監督との現場は戦いだと思って挑んでいるんです(笑)。園監督が求めていることの何百倍、何千倍の演技をしようという気持ちでやっています。
冨手:『新宿スワン』の現場が初めてでした。オーディションとかではなく、私が直接、園監督に会いにいって「女優やっているんです」ってアピールしたんです。そうしたら「お前がどういう芝居をするか分からないから『新宿スワン』でお手並み拝見するよ」って呼んでいただいたんです。だから『新宿スワン』がある意味勝負だったんです。そこで下手を打ってしまったら終わりだって気持ちが強くて、そこからは常に現場は戦いを挑む場という感じになりました。
冨手:土屋(哲彦)監督とは初めてのお仕事でしたが、すべて信頼して任せました。過激なシーンも、映画の中では絶対必要なシーンだったので、抵抗もなく「よし、やってやる!」という気持ちで臨みました。
冨手:刺激的でした。全部吸収しよう、勉強しようという気持ちでやりました。なかなか津田さんや高岡さんみたいな方とお芝居する機会もなかったので、現場で同じ空気を吸ってお芝居できることが幸せでした。特に津田さんは一緒のシーンも多く「本当に嫌な人だな」って思っちゃうぐらいの演技で(笑)。すごい魅力的な俳優さんでした。
冨手:「周囲の人たちによって自分はある」という感覚は今の私にもありますが、私自身は人のことを「見て」しまうんです。だから、周りにいる人が信用できないって思ったら、離れますね。私はグラビアをやっていたのですが、水着の撮影とかでは「もっとエロく」みたいにリクエストされることもありました。でも自分自身が納得しなければ絶対いい仕事はできないし、生意気かもしれませんが、譲れないときは「嫌です」ってはっきり言わせてもらいました。自分のことを守れるのは自分だけですからね。
冨手:絶対貸さないです(笑)。お金の貸し借りは絶対ダメだと思います。私は自分の中で、絶対人から借金はしないって心に誓っているんです。
冨手:買えないと思います。お金があれば幸せだとは思いますが、やっぱり愛は買えないですよね。映画が好きで色々な作品を見ていますが、お金で愛を買えた作品は見た記憶がないですね。
冨手:最近だと、スカーレット・ヨハンソンが出演している『ゴーストワールド』(01年)です。『リアル鬼ごっこ』(15年)にシュールちゃんという役で出演させていただいたのですが、その時に園監督から「役作りで見ておきなさい」って言われたんです。子どもの頃って怖いもの知らずで、探究心や好奇心でいっぱいだと思うのですが、そういう思いが爆発している作品なんです。あとは『(500)日のサマー』(09年)も大好きです。ラブストーリーの中では一番好きで、10回以上見ています。私の結婚式は『(500)日のサマー』のオープニングを再現しようって決めているんです(笑)。
冨手:30歳過ぎぐらいに1回はしたいですね。でも人生何があるか分からないから何回かするかも……(笑)。やりたい結婚式がいくつかあるので、3〜4回ぐらいは結婚しないとダメかもしれませんね。
冨手:和製ブリジット・バルドーになりたいです。私はお芝居を始めてから、脱ぐこととかも抵抗ありません。その作品にとって必要であればいつでも脱げるし、全部をむき出しにできるような女優さんになりたい。セクシーなシンボルでもありたいし、女性としても魅力的でありたいです。日本の若きブリジット・バルドーなんて称号が与えられるように頑張ります。
冨手:闇金やアイドルがテーマですが、気軽に映画館に見に行っていただいて、ものすごく重い気持ちで帰っていただければと思います。いい意味で期待を裏切る作品。夏、どんなホラー映画よりもゾッとするリアリティーのある映画です。お金の大切さ、自分自身で責任を持って生きていこうと強く思える作品になっています。
(text:磯部正和/photo:中村好伸)
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