1971年1月2日生まれ。東京都出身。テレビドラマ『ボクの就職』(94年)でデビュー後、『星の金貨』(95年)、『ロングバケーション』(96年)と話題作に出演し、一気に人気を集める。映画では『冷静と情熱のあいだ』(01年)をはじめ、近年は『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14年)やコミカルな魅力も発揮した『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』(11年)などに出演。待機作に、声優初挑戦したアニメ映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』(11月21日公開)や、『人生の約束』(16年公開予定)がある。
人気作家本多孝好の原作を基に、偽装家族をテーマにした映画『at Home アットホーム』。社会からはじかれ一緒に暮らす道を選んだ5人が、血の繋がりのない「家族」として生きる姿を感動的に描く。父親は空き巣泥棒、母親は結婚詐欺師と犯罪を行いながらも肩寄せ合い暮らしていたある日、母親が仕事に失敗し誘拐されたことから、家族の絆が試される事件に直面する……。
クライマックスで大きな決断を下す一家の父親を演じた竹野内豊に、偽装家族を演じた心境や若手キャストとの共演、さらに、40代半ばにさしかかり現れた気持ちの変化について語ってもらった。
竹野内:偽装家族ですけれども、家族の話ですから1つの家族をリアルに成立させることができたらいいなと思っていました。あとは、(事前に)どんなに考えても現場に入ってそれぞれの俳優さんと向き合えばイメージが変わったりするのは当たり前なので、あまりその辺のプランは考えませんでした。
竹野内:森山家を撮影している時は限りなく自然で、台本に書かれていない何かが起こったとしても、その時感じた気持ちのままそのシーンが撮れたらいいなという気持ちはありました。和気あいあいとした空気感も出ていると思いますが、それは始めからあったわけではなくて、初対面から一家団らんのシーンを撮るまでに結構時間が経過しているんです。赤の他人が初めて出会って、毎日同じ時間を共有していくなかで、自然と信頼関係とかそういうものが生まれたのではないかと思います。
竹野内:新鮮ですよね。経験を積み重ねていくことは強さにもつながって、時として自分でどうにかしてしまおうとする気持ちにもなると思います。でも、彼らはまだまだすごく一生懸命で思い切りがいいというか……。彼らを見ているとテクニックとか技術的なものはさておき、どこかに忘れてしまった大切なものに改めて気づくことができて、まっすぐやっている感じはすごく刺激になりました。
竹野内:あまり意識しているつもりはないんですけど、いくつかそういう転換点というか、自分の中で何か変わりたい、新しいものを取り入れたい、チャレンジしたい気持ちはあると思います。今までこだわってきたものがどうでもよくなってきたり、新しいものをやってみようと思うようになったり、そういうことなんでしょうね。自分の信念を持つことは大事だけれど、自分で新しい自分を発見するには限界がありますからね。だから、時々自分では「どうかなと」と感じることでもとりあえず思いっきりやってみて、ダメだったらそれまでだし、面白ければもうちょっとやってみようかな、と。そういうことを年齢と共に受け入れられるようになったかもしれないですね。
ただ1つだけ言えることは、どんな仕事でも近道はないです。もし近道が現れたとしてもそこに行っちゃいけない、どうにもならない孤独や苦しみなどは避けてはいけない。これはきっと、役者だけではなくどんな仕事をしていても同じだと思うんです。目標に最短で行くというのも合理的でいいかもしれないけど、人生において、もがいてもたどり着けなくても、そこをたどっていくプロセスにはすごく重要な何かあるんじゃないかな。例えば、日本映画がもっと世界に胸を張って成長していけるといいなと思っているのに自分の力ではどうにもならない現状があるとして、「とにかく思い続けていく」という気持ちが大事なんじゃないかなと思います。これはある方がおっしゃっていた言葉なんですけど。
竹野内:緒形拳さんです。仕事でご一緒していたときに、ちょうどあの頃は日本映画も停滞していた時代で、「今、日本映画に元気がないですよね」って話をしていたんです。そしたら、「自分がやるやらない、できるできないが問題じゃない。自分が例え生きてうるちにそれが叶わなくても届かなくても、思い続けて行く気持ちが大事なんだよ」と。そのときは漠然とすごいなと思って聞いていただけなんです。でも、だんだん自分も40半ばで人生の真ん中に来て、「この先」がなんとなく見えてくるじゃないですか。死に対しても考え方が変わってきたり、そうしているうちに「なるほどな」と分かってきました。
(text&photo:中村好伸)
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