1989年1月25日生まれ。東京都出身。主な出演作に『夜のピクニック』(06年)、『ライアーゲーム −再生−』(12年)『深夜食堂』(15年)など。2015年はテレビドラマ『ドS刑事』でも主演をつとめた。
ジョージ朝倉の同名コミックを基に、恋愛のいい所もかっこ悪い所もたっぷりと詰め込んだ恋愛映画『ピース オブ ケイク』が誕生した。これまでの恋愛下手な自分から卒業し「仕事も恋愛も、もう、ちゃんとしたい!」と心機一転する主人公・梅宮志乃を多部未華子が、そんな決意の矢先に志乃が恋してしまう“同棲中”の隣人・菅原京志郎を綾野剛が好演。2人の恋模様が描かれる。
初共演ながら恋する男女の楽しさやダメダメさを共感たっぷりに演じきった多部未華子と綾野剛に、お互いの印象や作品の見どころを聞いた。
綾野:多部さんと初めて会ったのは蜷川幸雄さんの舞台の稽古場でした。
多部:はい、綾野さんが舞台の稽古をされているときで、お芝居ですごく自由に遊べる方だなというイメージを持ちました。今回は会話が多い役なので、ここまで遊んでくれたら色々な表現をしてくれるだろうと思っていましたし、色々な表現を拒まずに受け入れてくれるだろうと感じていて、その印象は最後まで変わりませんでした。
綾野:お会いする前に多部さんの出演した作品は見ていて、非常に表現力の豊かな方だなと思っていました。お会いした時はすごく可愛らしいと思ったのと同時に、人見知りなんだろうなと。僕も元々人見知りだったので近いものを感じました。そういうのって安心できるんです。これだけ作品に出演していると、どうしても色んな事に慣れていく人もいると思いますが、それが全くなくて。ズカズカ入ってこないというか、僕は全然入ってこられてもいいんですが、それを遠くで観察しているような所が信頼できると思いました。
綾野:完成した映画を見た時に、(撮影中は)僕(京志郎)と一緒にいないときの志乃の顔は見た事がなかったので、それこそオカマの天ちゃん(松坂桃李)やナナコ(木村文乃)と一緒にいるときの志乃の顔や、全然力の入ってないセリフの言い回しとかが印象的でした。僕といるときは不安だとか色んなものが掛け合わさっているから本当の意味での素直さを前面に押し出していなかった感じも含めて、友だちの前だとこんな表情をしているんだなと客観的に見ていました。
多部:人間誰でもそうですよね。5〜6年付き合っていた友だちみたいな恋人ならまた違いますけど、京志郎に嫌われたくない思いが全面にあるから、作った自分とまではいかないですが、友だちといる時とは分けていました。
綾野:それがすごくいい塩梅で出てた。
多部:私はカレーを作っているシーンで、京志郎が旅行のプランを1人で(楽しそうに)練っていた所が印象的でした。ああいう屈託のない彼氏がいたら可愛いだろうなと思いました。
多部:共感ばかりでした。すごく共感したからといってうまく演じられた自信はないですけど、例えば嬉しい事を言われたら素直に嬉しかったり、数日たったら「あの言葉ってほかに女がいたりするから私に言ってきたのかな?」と思ったり、女の人ってネチネチ考え過ぎたりするじゃないですか。そういう所に共感しました。志乃ちゃんの心の声も、分からないと思う所は基本的にはありませんでした。
綾野:京志郎に共感というより学んだ事があるんですが、相手が怒ってる時にあまりヘラヘラしない方がいいなと。お風呂場のケンカのシーンもギリギリだったんですが、布団の上で取っ組み合うシーンの時もわりと笑っちゃっているというか。良かれと思ってというほど頭がいい人ではないので、ちょっと楽しくなっちゃてというのがあって。もしそういう機会が僕にめぐってきたら気を付けようと思いました。あれは怒りを倍増させるだけだなと。
綾野:新しく発見というよりは、再確認させられた感じです。僕はむしろ志乃の発言や思いに共感できる部分はあるので、ナナコだったりあかり(光宗薫)だったり、こういうの分からないなって女性像は意外とないんです。京志郎を演じたのもありますが僕は志乃が好きで、志乃のあの感じが嫌いじゃないなと。ナナコとは逆にこっちが尻に敷かれてカカア天下になりそうだし、ある意味本当の意味で相性がいいのは天ちゃんかもしれないです。僕を立ててくれて甘えさせてくれて、料理も作ってくれて。朝起こして、寝るときは添い寝してくれて、すべてをやってくれるのは天ちゃんだと思います。天ちゃんってこの作品のブリッジになっていて、彼がいるからこそ志乃の気持ちもナナコのスタイルもあかりの事も僕たちは寛容的に見られると思う。女性の方は共感力が高くなると思うし、男性が「女って分からないな」ってなる手前を、天ちゃんがマイノリティーなポジションでブリッジになっているので、ある意味、裏の主役です。
多部:特にありませんでした。世間の方からしたら新たな一面だなと思われるかもしれませんが、どの作品も変わりません。
綾野:ラブシーンがあるからそういうものに見られがちですが、「好き」って言う言葉の情報と変わらないんです。今回R指定をつけないこともあって生々しくやってない分、人の想像力にすごく訴えるものだと思うんです。そこを多部さんが志乃を通してリアリティーに変えていったのが、重要だなと思いました。今までそういう描写がなかったので新しい一面と思われがちですが、本人からしたら今まで普通に恋愛映画をやったこともあるだろうと思うし、決定的に何かが違うかと言われたら堂々としている。逆にこの質問も、松坂桃李にした方がいですよ。彼は間違いなく新たな一面ですから。
(text&photo:中村好伸)
(多部)ヘアメイク:渡辺真由美/スタイリスト:轟節子
(綾野)ヘアメイク:石邑麻由/スタイリスト:澤田石和寛(SEPT)
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