1998年モスクワ生まれ。韓国人の父とロシア人の母を持ち、読書や写真を趣味にしている。映画への出演経験はなかったが、アレクサンドル・コット監督の目にとまり、映画『草原の実験』の主役の少女ジーマ役に抜てき。寡黙さの中に見せる豊かな表情、エキゾチックな雰囲気が注目される。撮影当時は14歳。『草原の実験』の後もテレビドラマなどに出演。将来の活躍が期待されている。
昨年の第27回東京国際映画祭コンペティション部門で上映され、最優秀芸術貢献賞&WOWOW賞の2部門を獲得した、アレクサンドル・コット監督の『草原の実験』が公開され、大きな話題を集めている。
ロシアの新鋭アレクサンドル・コットが、旧ソ連で実際に起きた出来事にインスパイアされて作り上げた本作は、父親と共に草原に暮らす美しい少女をめぐる淡い三角関係をベースとしたファンタジー黙示録。光と影が織りなすまるで絵画のような美しい映像美と、胸に響く音響が、全編セリフがないにもかかわらず、実に冗舌に観客に語りかけている
主人公ジーマにふんするのは、本作が映画初出演となる新鋭エレーナ・アン。すでに映画を観た観客の間からは、その無垢(むく)で透き通るような美しさに魅了される観客が続出。そして撮影時からおよそ3年の時が過ぎて、17歳になった美少女エレーナが本作の日本公開に合わせて来日。映画初出演となった本作への思いなどについて聞いた。
エレーナ:父親がこの映画のオーディションがあることを知って。わたしの写真を送ったことがきっかけでした。最初にオーディションに行った時は、わたしも13歳で、ヒロイン役としては少し年齢が足りなかったようでした。その後、物語もシナリオも監督も大々的に変わって、最終的には、今のようなセリフのない映画になったんです。その時に新しい監督がわたしのことを覚えてくれていて、またオーディションに呼んでくれたんです。それで今度はイメージに合うということで出演が決まったということです。
エレーナ:はい。小さい頃に来たことがあります。
エレーナ:わたしが生まれ育ったモスクワとは違う街並みの風景だなと思いました。わたしは子どもだったので、見るものすべてが新鮮でした。今、覚えていることは、すごく暑かったということと、人がたくさんいたということですね。
エレーナ:はい。ディズニーランドに行った時のことはよく覚えています。本当に楽しかった。それから回転寿司にも行きました。おすしが電車みたいなものに載せられて運ばれてきたんです。あれはとても面白かったですね。
エレーナ:残念ながらまだ30分くらいしか外を歩いていないんです。先ほど渋谷を歩きました。。
エレーナ:渋谷には外国人観光客が多いため、むしろ外国人の方が多く見かけたかもしれません。(父の母国の)韓国人もそうですが、日本人は身だしなみにとても気を使っているし、今まで見た限りでは、日本人の女の子はとてもかっこいい服を着ているなと思いました。
エレーナ:年齢より大人びて見えるとしたらそれはきっとお化粧のせいだと思います。お化粧を落とせば、映画の感じとあまり変わらないと思います。洋服も着たいものを選んでいるだけですからね。
エレーナ:初めて自分をスクリーンのなかで見た時はすごく恥ずかしくて。不思議な気分でした。今、改めて見てみると、ああ、若いな、今とは全然違うな、という感じですね。10年後、20年後に見返したら、また違った面白さを感じるんじゃないかなと思います。
エレーナ:普段、こういう衣装を着る機会はなかなかないことなので、初めて民族衣装を着た自分を見た時はとても面白かったです。でも撮影はひと月半だったんですが、その頃にはその姿にもすっかり慣れていたように思います。実は最後のシーンでわたしは赤い服を着ているんですが、あの服はわたしのお気に入りの衣装だったんです。監督は服を変えたかったらしいんですが。自分はその赤い服を気に入っていたので、衣装さんに頼み込んでその服を着るようにお願いしたんです。
エレーナ:草原は非常に暑くて。気温も32度になっていました。そんな中でも衣装は羊毛。ブーツも羊毛だったので、とても暑かったことを覚えていますね。
エレーナ:最初に言葉のない映画だと聞いた時は、珍しいなと思いました。映画というものは、会話を通して気持ちや行動を伝えるものだと思っていたからです。でも撮影を通して、言葉がない映画の方が自分にとってはやりやすいなと思いました。それは女優としての経験がないからこそ、やりやすいと感じたのかもしれません。自分の初めての映画が、言葉のない、めずらしい映画だったということはとても幸運なことでした。
エレーナ:最初はカメラの前に立つこと自体が怖かったですね。でもわたしにはシナリオがある映画の経験がなかったため、ほかの方法がどういうものなのかはまったくわかりませんでした。ですからとにかく自分の解釈を監督に話して。監督のアドバイスを受けて、やれることをやっただけでした。
エレーナ:この映画の後には、ドラマに1本出ただけなんですが、そもそもまったく違うものを比べるということになるので、その比較は難しいですね。ただ、観客の立場だったら、映画の雰囲気としては『草原の実験』の方が好きです。女優としても、『草原の実験』のような言葉のない映画の方がわたしには合っているように感じました。むしろセリフのある役を演じる方がわたしにとっては難しかったですね。
(text:壬生智裕/photo:中村好伸)
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