『夏ノ日、君ノ声』葉山奨之インタビュー

人気急上昇!『まれ』の“一徹”が初主演作で切ない初恋に挑む

#葉山奨之

台本がボロボロになって、監督たちから驚かれた

過去と現在を結んで展開していく切なくさわやかなラブストーリー『夏ノ日、君ノ声』。高校2年生の哲夫役で、NHK朝の連続テレビ小説『まれ』の好演も記憶に新しい葉山奨之が初主演を飾っている。難病を患い、耳が聞こえず言葉が話せない少女、舞子(荒川ちか)と出会い、心を通わせ合う哲夫役を振り返るとともに、俳優になるきっかけとなった先輩・小栗旬への思いなどを語った。

──初主演映画ですね。決まったときのことを教えてください。

葉山:オーディションだったんです。台本の一部で、セリフの書かれた紙一枚を事前にもらっていたんですが、その場の気持ちでやれたらいいなと思って、あえてセリフは覚えていきませんでした。決まったと知ったときには、びっくりしましたね。正直、意外でしたた。

葉山奨之

──主演に決定してから、台本を通して読まれてみてどんな印象を持ちました?

葉山:想像よりかなり切ない物語でした。それから、ちかちゃん演じるヒロインの舞子にはセリフがないので、一緒に演技をするうえで、これは大変だと思いました。初主演で、力が入ったこともあって、現場に入るまでに台本がボロボロになるまで読み込みました。現場に入ったとき、神村(友征)監督たちから「葉山くん、台本、大丈夫!?」と驚かれました(笑)。

──実際に現場に入って演技してみていかがでしたか?

葉山:すごくいい空気感の現場でした。ただ舞子にセリフがないことが、やっぱり難しくて、このままではダメだ!と考え込んじゃうこともありました。でも舞子の表情をよく見ることに集中して、反応することで相手と会話することを覚えましたね。

ちゃんとしなさい!って叱ってくれる女性がいいです(笑)
撮影現場での荒川ちか(左)と葉山奨之(右)

──哲夫の恋心は理解できましたか?

葉山:彼にとってはほぼ初恋ですよね。そこの部分は、割とすんなり入っていけたので、共感できる部分があったんだと思います。具体的にそれが何かというのは、説明できないですけど。

──哲夫を演じるにあたって、大切にしたことは?

葉山:僕がドキドキしないと見ている人もドキドキできないと思ったので、舞子への気持ちを大切にして、ちゃんとドキドキするようにしていました。

──葉山さんの好きな女の子のタイプは?

葉山:タイプですか? しっかりしている人が好きかな。僕がしっかりしていないので。ちゃんとしなさい!って叱ってくれる人がいいです(笑)。

撮影中の様子

──完成した作品をご覧になってのお気に入りのシーンは?

葉山:ケガを負った状態で病院に行くシーンがあって、そこの映像がすごくキレイなんです。道をひとりで歩いていて、撮影のときにはかなり遠い場所からカメラが撮っていたので、これはどういう風になるんだろうと想像できなかったんですが、出来上がりを見て、 こんな感じになるんだ!とビックリしました。車の光だったり、夕日だったりがすごくきれいでした。

──初主演作としてはいかがでした?

葉山:正直、自分が出ていることも、舞子ちゃんとの甘酸っぱいシーンなんかも照れちゃって、ドキドキして集中して見られませんでした(笑)。関係者の方たちが集まった試写で見たんですが、泣いている人が何人もいたのは嬉しかったです。それから名前が一番に出てきたのはやっぱりテンションが上がりました! 初主演作というのは一生残るものですし。

小栗旬さんへの憧れを公言し、「お前、キモいな」って言われました(笑)
『夏ノ日、君ノ声』
(C)「夏ノ日、君ノ声」製作委員会

──ところで、役者になろうと思ったきっかけは、今は同じ事務所の先輩でもある小栗旬さんに憧れたからだとか。

葉山:そうです。何もかもかっこよくて、ずっと小栗さんの作品を見てました。中学生の頃には『クローズZERO』がすごく流行っていて、作品の世界に完全に入っちゃって、小栗さん派と山田(孝之)さん派に分かれていました(笑)。そんな小栗さんと、まさか先輩後輩の関係になれるとは思わなかったです。

──小栗さんは葉山さんの熱い思いを知っているのですか?

葉山:はい。普段からいっぱい言ってますし、取材でも答えてますし。小栗さんの耳にも入っていて、「お前、キモいな」って言われました(笑)。でもここ最近は、会うたびに「頑張れよ」って言ってくださるんです。役者としても尊敬していますが、とても思いやりのある方なので、人として、自分もそうなっていきたいですし、声をかけていただけてすごくパワーになっています。

撮影中の様子

──『まれ』で幅広い年齢層からの認知度がぐっと上がったと思います。肌で感じる変化はありますか?

葉山:地方ロケに行くと、おじいちゃん、おばあちゃんにすごく話しかけられます。「一徹、一徹」って呼んでもらって。朝ドラの力はすごいなと思いました。あと地方でごはんを食べに行くと、「一徹が来た!」とサービスしてもらえたりします(笑)。

──役者デビューから4年で、大河ドラマ2本(『八重の桜』『軍師官兵衛』)に朝ドラと、すごい活躍ですね。

葉山:オーディションで勝ち取ってきたものなので嬉しいです。

──ご自身の強みはなんだと思いますか?

葉山:あまり人見知りをしないので、どこの現場に行ってもオープンに話してみんなと仲良くなれます。コミュニケーションをとることは、大事にしていますね。演じる役が大きくなってきて、より一層、役への向き合い方をちゃんとしなきゃと感じています。作品によって違う環境で共演者やスタッフの方々と一緒に作品を作り上げていくのが、本当に楽しいことだと感じています。

──12月に20歳になりますが、やってみたいことは?

葉山:スカイダイビングです。ダイビングで10代の良くないものを全部とり外して、新鮮な気持ちで20代に入りたいです。空を飛びながら、「20歳になったぞ〜!」って叫んでみたいです(笑)。

──ちなみに今後、役者として海外進出もしたいと思っていますか?

葉山:はい、考えています。実際に英会話も1年以上前から通っています。今年の4月にひとりでパリとロンドンに行ってきました。フランス語はわかりませんが(笑)。英語は中学校のときの先生が好きだったので、そのころからちゃんとやっていました。クザヴィエ・ドラン監督(『わたしはロランス』『Mommy/マミー』)の作品に、いつか出てみたいです。

(text&photo:望月ふみ)

葉山奨之
葉山奨之
はやま・しょうの

1995年12月19日生まれ。大阪府出身。11年にテレビドラマ『鈴木先生』でデビューを果たす。NHK朝の連続テレビ小説『まれ』にヒロインの弟・一徹役で出演し、一気に知名度を上げた。2月には「狂人なおもて往生をとぐ〜昔、僕達は愛した〜」で初舞台を踏んだ。現在、テレビドラマ『釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助〜』に出演中。今後、『流れ星が消えないうちに』(11月21日公開)や、長塚圭史作・演出の舞台「ツインズ」(12月6日より公演)が控えている。