1990年11月15日生まれ。宮城県出身。2002年『リターナー』で俳優デビュー。主な出演作は『HINOKIO』(05年)、『テニスの王子様』(06年)、『NANA2』(06年)など。近年は『GANTZ』前後編(11年)や『ストレイヤーズ・クロニクル』(15年)、テレビドラマ『アカギ』(15年)など人気ものの原作を映画化した作品に多数出演。実写映画版『進撃の巨人』前後篇ではアルミンを演じた。
広島県で122年の歴史を持ち、2014年8月に閉館した映画館「シネフク大黒座」。同館を舞台に、閉館に向けて揺れるスタッフや常連客との交流を描いた人間ドラマが『シネマの天使』だ。
劇中で、大黒座の映画を見て育ち、今はバーテンダーとして働きながら映画監督の夢を持つアキラ役の本郷奏多と、大黒座のスタッフとして働きながら将来に悩む明日香を演じた藤原令子。互いの印象や解体直前の大黒座を借りて実際に行われた撮影エピソード、さらにヒューマンドラマが久しぶりという本郷が『進撃の巨人』とは違った本作の魅力も語った。
藤原:雑誌で見ていた印象が強くて、その通りだと思いました。
本郷:今回初めてご一緒させていただいて、初主演なのに堂々とされていて、この仕事に向いている人なんだなと思いました。
藤原:スマートになんでもこなせるイメージで、その通りでした。
本郷:そうなんですよ、はい(笑)。
藤原:(笑)。
本郷:短かったですが、仲良くなれたと僕は思っています。
藤原:一緒のシーンが多かったので、待ち時間もたくさんありましたし、話す機会はたくさんあり結構お話しさせていただきました。
藤原:そこにたくさんの歴史があったのだろうなという趣がありました。ドーンという感じで、中に入っても、いい意味で古くて雰囲気があり、こういう映画館が近所にあったらいいなと思いました。
本郷:我々が行った時はすでに映画館としての営業は終了していて、クランクアップした次の日から本格的に取り壊しが始まるスケジュールでした。壊されるまでの一週間を借りて使っていたので、役目を終えた感がありました。壁には一面に、「今までありがとう」など、それまで大黒座に足をはこんだ人たちのメッセージが書かれていて。そういう場所を借りられたのは良かったと思うし、そのリアルな強さをすごく借りられた作品になっていると思います。
藤原:今の年齢になれば「遠い」というほどはありませんが、車で30〜40分かかるところに歩いていくことは到底できませんし、小中学生の頃は電車に乗って行くなんて考えていなかったので、映画館に映画を見に行くのは珍しかったですね。両親と出かける時に、一緒に連れて行ってもらうという感じでした。
本郷:なるべく外に出たくないので(笑)。家に、プロジェクターと音響の機材がしっかりそろっているので、それで見ています。でも、IMAXや(体感型シアターの)4Dは映画館でしか見られないので行きますね。
本郷:たまにあります。自分の作品を、映画関係者以外の人と一緒に見ることはなかなかできませんから。
藤原:(映画の)お話を聞いたのが撮影に入る一週間前くらいで、電話で「今週末、広島に行くから」と。しかも「主演だから」って言われて(笑)。そんな急に心の準備ができるのかなとも思いましたが、「そんなことを考えている場合じゃない、とりあえずストーリーを頭の中に入れて行こう」と、本当に一生懸命この映画に関わりました。
藤原:はい、驚きました。こういうものなのかと思って。
本郷:僕が出る作品は人が死んだり命を狙われている立場だったりが多いですが、今回はそういう争いもなく、こういうジャンルの映画もいいなと思いました。エンターテインメントの作品とこういうヒューマンドラマの作品は全く別物だと思います。今後もこんな作品を演じてみたいと、改めて思いました。
本郷:今回は全くオリジナルで、監督の意向を受けながらですけど久々に自由に伸び伸び演じられた思いはあります。日常を切り取ったシーンばかりなので、いい意味で肩の力を抜いて演じられたと思います。
本郷:世間一般に認知度が高い原作があると、どうしてもお芝居をするうえでそれを無視できないので、その辺の組み立て方は自分ではうまいのかなと思っています。どこまで原作に準じるかなどのバランス感覚を評価していただき、今までもオファーをいただけているのかなと思います。
藤原:等身大の女の子だったので、抱えている悩みも共感できました。撮影でも監督に「シネコン世代だと思うので、そのままの君でやっていい」とおっしゃっていただいたので、みなさんの言葉(セリフ)を聞いて感じるままに演技していた印象です。
藤原:私もこのまま女優の仕事を続けていいのかという悩みを抱えていました。それを、この作品に深く関わらせていただいいた中でお芝居をすることは楽しいですし、苦しいことがあっても、ちょっとでも楽しさがあればそれを「楽しい」気持ちに変換できるので、このまま続けてみようと思いました。
本郷:(笑)えー!?
藤原:聞きたいです!
本郷:先輩というわけでもないですけど、役者のお仕事はすごく特殊で、同じ画面に出ている限りそこに上下関係はないですし、今まで何十年もやってこられたミッキー(カーチス)さんとも、カメラが回っている間は対等の関係です。藤原さんはそれを楽しんでいるようなので、何の問題もないと思いますよ。
藤原:ありがとうございます。
藤原:最初に撮影したのが最後のシーンでした。まだ(お互いに)それほど会話をしたことはないのに 、最後のシーンを撮るのが面白かったです。この仕事ならではですよね。
本郷:実はそういうの多いよね。
藤原:(実際には)関係性ができていないけど、映画のなかでは関係性があるからすごく面白いです。
本郷:劇中で、僕の頭の中で思い描いているストーリーが展開される場面があるんです。藤原さんが赤いドレスで日本刀を持って追いかけてくるシーンなのですが、街中で撮影したので「藤原さん(ギャラリーに)見られてる!」って思って(笑)。
藤原:全然気にならなかったです。
本郷:集中してたんじゃないですか?
藤原:日本刀を振りかざすのが大変で。
本郷:あの格好で夜の商店街にいるのは恥ずかしかっただろうなと思いながら、遠くから見ていました。
藤原:今、恥ずかしくなるじゃないですか(笑)。(日本刀は)意外とかっこよく見せるのが大変で、ちょっとの角度や振る場所が違うだけで不慣れなんだというのが分かってしまうので、スタッフの方に教えてもらいながら演じました。
(text&photo:中村好伸)
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