『グラスホッパー』菜々緒インタビュー

「またすごい悪い役でしたね」と話しかけると、してやったりの笑顔を見せた菜々緒。彼女は最近“強くて悪い女”を演じることが多い。自然とパブリックイメージも、役柄に引っ張られることもあるだろう。

しかし、菜々緒はそれを楽しんでるようにも見える。映画『グラスホッパー』では、度を超えた“悪女”比与子（ひよこ）を好演。浅野忠信、村上淳、吉岡秀隆、石橋蓮司など個性派俳優が顔を揃えるなか、強い存在感を示した。「モデルで女優の」より「女優でモデルの」という表現がしっくりくるような活躍をみせる菜々緒に話を聞いた。

菜々緒

菜々緒：私自身、強い女性だったり悪女と呼ばれる女性を演じさせていただくことが多かったのですが、その中でも、今回の比与子は完璧な悪女だったので、ある意味演じやすかったなという感じはありました。

菜々緒：拳銃を使うシーンも初めてでしたし、主人公の（生田斗真演じる）鈴木を拷問するシーンもありました。完全に黒いヒール役は初めてでしたね。

菜々緒：比与子はすごく強い女性。気負いなく思い立ったら即行動というタイプだったので、割と潔くキャラクター作りはしました（笑）。

菜々緒：生田さんから話しかけていただくことが多かったです。私はかなり現場では緊張していて、他の方に話しかける余裕があまりなくて……。そんな中、生田さんが一番多く話しかけてくださいました。

菜々緒

──最近、映画やドラマなどに出演する機会も増えていますが、それでもやっぱり緊張はするものですか？

菜々緒：しますね（笑）。自分自身まだまだ未熟だと思っていますし、精一杯向き合ってはいるものの、いっぱいいっぱいだなと感じているので、緊張してしまいますね。

菜々緒：役柄を自分の中で理解して消化する。映画の中で自分のキャラクターをどう作っていくかが大事で、その理解度を高めていければ、演じることに自信がついてくると思うんですよね。

『グラスホッパー』
(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

──この映画は癖のある“悪人”がたくさん出てきます。それを演じたのが村上淳さんや浅野忠信さん、石橋蓮司さんなど個性の強い役者さんでした。そんな中、紅一点で比与子を演じるのはプレッシャーではなかったですか？

菜々緒：プレッシャーというよりは、闇の部分のシーンでは、女性が私一人という状況だったので、比与子という女性の強さを意識しましたね。ちゃんと比与子をストーリーの中で立たせないといけないなという気持ちは強かったです。

菜々緒：救いようがない悪（笑）。鈴木が白なら比与子は黒なので、撮影中、「これはひどいな」って笑ってしまうぐらい遠慮なくやらせてもらったのが、映像に出ているのかなと……。作品のいいスパイスになったのかなって思いました。楽しかったです。

菜々緒

──ご自身のパブリックイメージを自覚されていて、そのおかげで「ヒール役」のオファーをいただけるとお話されていました。実際、そういう役柄が増えてきていると思いますが、役柄が偏ってしまうという不安はないのでしょうか？

菜々緒：あまりないですね。逆にこういう立ち位置を確立できたことに誇りを持っているくらいです。しっかりヒール役を演じて、次に良い人の役をやらせてもらえた時に「こういう役もできるんだ！」っていい意味で裏切っていけるようになりたいですね。

菜々緒：もちろん色々な役をやってみたいという気持ちはあります。今までドラマや映画では、振られてばっかりで恋愛が成就したことがないんです。だから、ちゃんと恋愛が実るような役もやってみたいです。もう制服は着られないとは思いますが、学園ものも憧れますね。大人な恋愛や、相手を思いすぎて面倒くさがられる役とかもいいですね。

菜々緒：面倒くさい女を演じてみたいと言いましたが、自分は割とお互いを縛り合うよりは、自由な恋愛が理想ですね。今までを振り返っても、そういう恋愛が多かったかなって思います。

菜々緒

菜々緒：「バラエティー、女優、モデルのどれが一番好きですか？」って聞かれることが多いのですが、それぞれに魅力があるので一つには決められないんですよね。モデルとお芝居のお仕事には共通点もあるし、別の魅力もあります。お芝居は、色々な人生を体験することができるのが魅力ですね。飽きないし飽きさせられない、100％満足したことは一度もないので、ずっと続けていきたいお仕事です。

菜々緒：（原作となる）伊坂幸太郎さんの小説の魅力は、色々な軸が交差して話が進んでいくところだと思うのですが、この映画もシーンごとに色々な出来事が起こっていくので、見ていて飽きることがなく楽しめると思います。

（text：磯部正和／photo：中村好伸）