1973年、イスラエルのラムルで生まれる。タル・グラニット監督とはこれまで、3本の映画を共同脚本・監督している。
『ハッピーエンドの選び方』シャロン・マイモン&タル・グラニット共同監督 インタビュー
「『おくりびと』に触発された」イスラエル人監督を直撃!
延命措置で生きながらえるよりも、最期の時は自分で決めたい。そう願う人も多いと思うが、安楽死をテーマに、ユーモアを交えながら描いた『ハッピーエンドの選び方』が多くの人々の共感を呼んでいる。
ヴェネチア国際映画祭で観客賞を受賞したこのヒューマンドラマについて、共同監督をつとめたイスラエル人のシャロン・マイモンとタル・グラニットに話を聞いた。
マイモン監督:君のように物事を斜めに見る人がいると友人から紹介され、タルの短編映画を観に行きました。その後、僕の作品も見てもらい、社会性のあるテーマを、ユーモアを通して描く映画を作りたいという共通点があることがわかったんです。それからふたりで40分の短編を監督して、12年、一緒にやっています。
グラニット監督:人生観も似ていますね。つらいことがあっても悲しいことがあっても笑顔でいる、とか。同じ眼鏡を買ったり、カップルセラピーにもいったこともあります。カップルじゃないのに!
マイモン監督:すべて一緒にやっています。リサーチ、脚本執筆、撮影も、俳優と話すときも、編集もとことん話し合います。撮影方法で意見が違うときは、各々で撮ってみて、それを観てどうするか決めるということもあります。
グラニット監督:どうしてもお互いに譲れないときは、コイン投げで決めたり、何らかの取引をすることもあります(笑い)。
マイモン監督:自分の前のパートナーのおばあさんが亡くなった場に居合わせたのですが、やっと安らかに眠れると思ったら救命士の方が来て30分も蘇生措置を行いました。それがすごく不条理だと感じて、更に彼女が亡くなる数日前に「自分が最期こんなに苦しむと思わなかった」と言っていたのも忘れられず、そこからすべてのストーリーが始まりました。自分たちだったらどうするだろう?と思って、“安楽死マシーン”のアイデアが生まれたんです。その後、深刻な話題を扱うので、かなりリサーチをしました。医師、介護ホームにも何度も足を運び、リサーチ・脚本執筆に3年、映画完成まで5年という時間をかけました。入念なリサーチによって、この映画の複雑なバランスの保ち方が見つかったと思います。
マイモン監督:ひとつはテーマへのアプローチ、ドラマとユーモアですね。もうひとつは世界のどこでも人はいつかは死ぬという普遍性です。
グラニット監督:どこで上映しても、同時に泣いて笑ってという映画は初めてと言われました。一番嬉しかったのは、「年とってもゲイの人っているんですね!」という小さい女の子の言葉でした。年をとっても恋愛をしたり、いろいろな欲求があったり、自由に自分らしく生きていけるんだということを知ってほしいなとこの作品を作ったので。
グラニット監督:難しい質問ですね。今のこの段階ではイエス。認知症になってまで生きたくない。自分で自分をコントロールできないのは私はすごく怖いと思う。物理的な病気よりもメンタルな認知症のほうが怖いです。私は痛みは問題ないです、赤ちゃんを家で産んだから!
マイモン監督:僕は逆です。僕はコントロールは求めないし、痛みが怖い。人々は選ぶ自由を持つべきです。必ずしも行使はしなくても、そういう選択があると知ることが我々を生きやすくしてくれると思います。選択する自由。生においても、死においても。
グラニット監督:私たちは日本映画に大きな影響を受けています。黒沢明監督、小津安二郎監督、大島渚監督、最近の監督では、北野武監督の作品はイスラエルで全て公開されています。
『愛のコリーダ』はとても好きですし、イスラエルでは普通の映画館やシネマテークでしょっちゅうリバイバル上映されています。この映画は世界に対しても新しい映画、人間関係、愛情に関する詩です。愛であり、執着であり、依存という人間誰にでもあることを極端に描きながらも愛がつづられていると思います。
マイモン監督:直接的にこの作品に関わりがあったのが『七人の侍』です。私たちはこの映画のメインキャストを“四人の侍”と呼んでいました。また、滝田洋二郎監督の『おくりびと』ではデリケートなテーマにおけるデリケートなユーモアの使い方に感銘を受け、インスピレーションを受けました。また、どなたかを送り出すたびに新たな家族に出会い、その1人ひとりにストーリーがある。本作でも登場人物それぞれの死との向き合い方をつづりました。さらに、皆さんが最後の儀式をどうするのかということで日本の文化も知りました。
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