1952年4月16日、パリ郊外生まれ。高校時代の友人であったクリスチャン・クラヴィエやジェラール・ジュニョらと劇団Splendideを結成し、映画ではパトリス・ルコント監督の『レ・ブロンゼ』(78年、79年、06年)シリーズで成功を収める。カンヌ映画祭で男優賞を受賞した『タキシード』(86年)や『仕立て屋の恋』(89年)、『マルセイユの決着』(07年)など話題作に出演しながら、舞台やテレビでも活動。『他人のそら似』(94年)他、4本の監督作品がある。
夫に先立たれたおばあちゃん、定年退職を迎えた息子、小説家志望の孫。パリに暮らす3世代が新たな人生を見つける姿を描いた『愛しき人生のつくりかた』は、疲れた心をじんわりと温めてくれる珠玉作だ。
本作で、自分を主張できない頼りない息子を演じたのはミシェル・ブラン。カンヌ映画祭男優賞を受賞した『タキシード』や『仕立て屋の恋』などで知られるフランスの名優だ。フランスで100万人を動員したこのロングランヒット作について、ブランに語ってもらった。
ブラン:本作は、コメディと偽りのない感動が混ざり合っていて、人生が持つ本来の姿を見せようとする作家の真の作品です。登場人物に対して暖かいアプローチをするジャン=ポール・ルーヴ監督(脚本・出演も兼務)の技量のおかげで、この作品はまるで本物の人生の様になりました。例えば、彼が演ずる酒飲みで青年に愛情を抱くタガが外れたホテルの主人の役にはとても感動しました。そして、この作品にはオリジナリティがあります。警察署でのシーンのように可笑しな会話と、(おばあちゃん役の)アニー・コルディにまつわる純粋な感動をもたらすシークエンスがとても特殊な形で混ざり合っています。
ブラン:早期退職をしたことが耐えられないと告白することも、自分のしたいことに打ち込むこともできない男です。自分が変わってしまったこと、我慢ならない男になったこと、妻の人生を台無しにしていることに気付かないのです! そこに母親の問題が加わり、強くならなくてはいけない時に弱ってしまうのです。この役を作り上げるにあたって、非常によく構成されていると思いました。(決断をして)テーブルを叩かなければいけない時にも、兄弟たちの言いなりになってしまいます。母親を老人ホームに入居させ、アパルトマンを売るという考えは彼のものではありません。私にとっての彼は、海がしけている時に船のマストを失ってしまう男なのです。
──ジャン=ポール・ルーヴ監督は『バティニョールおじさん』でセザール賞を受賞した俳優でもありますね。あなた自身も『他人のそら似』(94年)などを手がけた監督でもありますが、ジャン=ポール監督の演出はいかがでしたか?
ブラン:素晴らしい俳優指導でした。まず非常に感受性が強く、完璧な正確さと十分な謙虚さを持っており、時には「違う、君が正しいよ。君が提案したようにした方がいい」と言うこともありました。たとえ99%は彼の直感が正しいとしてもです。彼は常に真実を、人生における現実を追っていました。それに何も諦めませんでした。自分の望んだものが得られないならば何度もシーンをやりなおし、自分の望むものをきちんと説明しました。監督業に進出した俳優は、演技の指導をしている俳優の頭の中にこびりついている問題を追い出す第六感があるとよくいいます。ジャン=ポールの場合はそうなのです。
ブラン:通常、私は他の人の仕事を尊敬しますが、台詞がイヤで書き直しを頼むことも時にはあります。しかし今回は台詞をとても気に入りました。なので、できるだけ忠実にジャン=ポールの台詞を言うようにしました。
ブラン:ジャン=ポール監督のカメラの配置は決して平凡なものではありませんでした。フレームと動きをきちんと研究し、無意味に映像を美化しようとしません。全てが脚本によって引き出されるのです。こんなに素早くいい仕事をする監督を見るのは初めてかもしれません。時には予定より1時間も早く撮影が終了する日もありました。それはジャン=ポールが、録音も含めて素晴らしいスタッフに囲まれているからかもしれません。録音が複雑な路上や車の中、幾つかの外での撮影にも関わらず、今までにない程、ほんの少ししかアフレコをしませんでした。
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