1963年4月27日生まれ。奈良県出身。88年、雑誌「メンズノンノ」、パリコレのモデルとして活動後、俳優デビュー。数々のテレビドラマや映画に出演し、重厚な演技でファンを魅了している。主な出演作に『アンフェア』シリーズや『サヨナライツカ』(09年)、『THE LAST MESSAGE 海猿』(10年)、現在公開中の『テラフォーマーズ』(16年)などがある。
“絶対に読んではいけない”という過激なキャッチフレーズが話題になった小幡文生の人気コミック『シマウマ』が実写映画化された。依頼者から代理でターゲットに“殺す以上の絶望”を与える回収屋という仕事。そんなダークな世界に手を染めたドラとアカを演じたのが、竜星涼と須賀健太だ。
2人とも、闇の世界で跋扈するダークな役柄からはかけ離れたイメージを持つだけに、キャスト発表時には驚いた人も多かっただろう。そんな若手俳優と、本作の黒幕であるシマウマを演じた加藤雅也がコラボレーション。作品や俳優という仕事について大いに語ってもらった。
須賀:このメイクでインタビューを受けたことがないので新鮮ですね。でも普通の表情していても怒っているように見られちゃうんですよ(笑)。
竜星:おっしゃるとおり、僕に対して『シマウマ』のドラというイメージを持っている人ってほとんどいなかったと思うんです。だからこの役を振っていただいたことは、素直に嬉しかったですね。漫画のイメージにどうやって近づけていくかという課題に取り組めましたし、こういう役をやれたことによって、僕に対する見る人の目線の幅が広がってくれるんじゃないかなって思っているんです。
須賀:僕も子どもの頃から活動をさせていただいていますが、これまでのイメージにない役を今回やらせてもらったなっていう感じはあります。役者としてもっともっと頑張っていかないとダメだなって思っている中で、新しいチャレンジを欲していた時期だったので、こういう役をいただけたことは嬉しかったですね。
竜星:やりがいはあります。これまでは子ども番組のヒーロー(『獣電戦隊キョウリュウジャー』桐生ダイゴ/キョウリュウレッド役)とかをやっていたので、こういう作品でイメージを裏切る機会を得られたのはチャンスでしたね。大事に撮影に挑みました。
加藤:こういう役のイメージで選ばれることがいいのか悪いのかは別としても、特殊なキャラクターなので、そういうイメージが自分にあるのかなとは思いましたね。世の中に悪い野郎がいて、それを成敗する必殺仕事人みたいな役だと入りやすいのですが、この作品は単純に善悪で決められない部分があるので、すごく考えさせられました。国や民族によって倫理観って違うし、多種多様な考えがあるんだと気づくきっかけになる映画ですよね。普通、演技をする場合、生きてきた経験値をベースに思考を組み立てていくのですが、シマウマの場合は別の基準がある。それを調べたりする過程で、色々なことが得られました。
竜星:特別話し合いはしませんでした。お互いの関係性は分かって撮影に入っているので、特に意識せず、あまり距離を置かずに健太とも現場ではしゃべっていました。
須賀:本当に自然と関係性が出来上がっていきましたね。お互いの空気感でやれました。
竜星:アカという役を本当に楽しそうに演じているのがうらやましかったですね。健太が生き生きと奔放に演じているので、僕も楽しかったし、こういう役も普通に自分のものにしているのは、すごくリスペクトできる部分でした。
須賀:僕は撮影前に持っていた竜星くんのイメージと、いい意味で変わりませんでした。これだけひん曲がった関係性なのに、コミュニケーションをとることも苦労しなかったし、すごくやりやすかったです。
加藤:(竜星とは)現場では一切しゃべらなかったよね。彼とは初共演だったのですが、初めてって独特の緊張感があるんですよね。作品的にも、ドラとシマウマはピリッとした雰囲気のある関係なので、実際の「初めまして」の部分は演技に利用しました。
加藤:彼の場合はね。大きくなったな〜って感じで入っていったので、また(竜星とは)違うよね。それぞれの人との関係性は違うので、利用できるところは利用するという感じかな。
須賀:死ぬよりも辛いかぁ……。(熟考後)死ぬよりなんて大げさなものではないですが、よく「壁ドンして」みたいな要望があるんですよね。今日も竜星くんとやったのですが、僕がやるの?って思っちゃうんですよね。需要と供給じゃないですが、僕がやることを望んでいる人がいるのかなって(苦笑)。それで、やったらやったであんまり反応がないみたいな……。すごく辛いです。
竜星:いや僕も本当に苦手なんです。「甘い言葉ください」とか言われるとすごい困りますよ。加藤さんはこういう要望ってありますか?
加藤:まあそれぐらいならやってあげてもいいんじゃないの(笑)。でも死ぬより辛いかどうかは別として、自分の娘とかに介護されたら辛いかな。子どもは親のために介護をしてくれるんだろうけれど、親からしたら、自分のために子どもの人生が変わってしまうのは辛いよね。その意味では死ねるというのはいい選択肢なのかもしれない。この作品でも「死ぬより辛いこと」が描かれているけれど、色々考えさせられましたね。
竜星:見た目のイメージと少し離れているような役をやらせていただけたことによって、これからも新たな役柄に挑戦する機会が増えるかもしれない。そう考えると、自分の役者人生にとって、とてもプラスになったと思っています。
須賀:僕も振り切った悪を演じさせてもらったことにより、今後またこうしたキャラクターに縁があったら、このアカという人物が芝居の基準になると思うんです。アカのキャラクターから足し算や引き算をしていくことによって、新しい感情が生まれるきっかけになるのかなって。
加藤:彼らがこうした作品に挑戦するのは、いわゆる俳優であるって証拠ですよね。人気者でいたければ、いい人のイメージを持たれる役柄だけをやればいいわけで。だけどダーティーなことをやるのは、彼らが真剣に表現者でありたいという一つの表れだと思うんです。とは言っても、これがいい作用に働くかはわからない。バッシングを受けるかもしれないし、代表作になるかもしれない。ヒットして『シマウマ』みたいな役ばっかりオファーがくるかもしれない。でも役者はチャレンジしていくことが大事。その中で、どんな悪役でも愛を持って役に向き合うことが必要だと思いますよ。
竜星:僕も戦隊ヒーローものをやっていた時があったので、そういう部分を意識したことはあります。早くイメージを変えたいということではないですが、常にパブリックイメージを裏切るような役に出会いたいという思いはあります。役者なので、色々なイメージを提示していきたいですね。
(text&photo:磯部正和)
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