『フラワーショウ!』メアリー・レイノルズ インタビュー

大逆転人生を映画化! ガーデニング界の革命児が掟破りの成功譚を明かした

#メアリー・レイノルズ

「これはヤバい!」主催者からの注意点は全部無視!

近年、ますます注目を浴びているガーデニング。その人気をさらに加速させそうなのが、先週末から公開中の『フラワーショウ!』だ。

ガーデニング大国・イギリスのロンドン、チェルシーで毎年開催される最も権威あるガーデニング&フラワーショウを舞台に、アイルランドの田舎娘の大逆転劇を描いた作品で、権威主義と階級社会に大胆に挑んだ主人公の雑草魂に拍手喝采したくなる。

なんと実話を基にしており、主人公のモデルとなったメアリー・レイノルズにガーデニングの魅力と自身のサクセスストーリーについて聞いた。

──チェルシー・フラワーショウはエリザベス女王が総裁を務める英国王立園芸協会(Royal Horicultural Society)が主催し、多くの王室関係者が訪れるガーデニングの世界的祭典で、2000名もの応募に対し8名しか選ばれないほどの難関です。ここに出場しようと思った理由は?

『フラワーショウ!』
(C)2014 Crow’s Nest Productions

レイノルズ:実は、自分の今までのコンセプトやデザインを表現したくても、それを実験させてもらえるクライアントがなかったからなのです。それならば、チェルシー・フラワーショーで自分のアイデアを皆さんにお見せしたいという風に考えました。また、ここには世界中からガーデンに関するアイデアが集まり、更にそれがオシャレな形に仕上がっているということを知っていたので、人々の“庭”に対する姿勢を変えたいと思ったときに、それを理念として話すのではなくファッションという形で伝えた方が、みんなにわかってもらいやすい、という思いもあり、何かを変えられるきっかけになればと出展しました。

──チェルシー・フラワーショウで思い出深い出来事などがあれば教えてください。

レイノルズ:ちょっとネタバレになってしまうかもしれないですが、チェルシー・フラワーショーを主催する英国王立園芸協会はすごくルールに厳しくて、例えば花も完璧に咲いていないといけないというルールがあったりします。でも私の庭の花はそうではなく、生きているものもあれば死んでいるものある、枯れた葉っぱがあるのは自然としては普通のことだと思っていたので、そういった感じで要領を破っていました。
 そもそも、チェルシーに行く前からチェルシー・フラワーショーの保険係の方から、庭造りの風潮や病気が蔓延しないよう機器の取り扱い方の指示を書いた手紙がきていたのですが、ロンドンに行くお金も無かったので全部無視していました。ですので、実際に庭作りをしている間も彼の姿を見つけると逃げて隠れるということを繰り返していました。
 ルールの一つとして、庭の水には塩素をキャップ2杯入れなければいけないというものがあったのですが、私はうっかりボトル2つ分を全て入れてしまい、水の中に入っていた霧をつくるマシーンで大量の塩素で泡がたってしまい、更にはその泡が自分の庭だけでなく会場全般を覆ってしまったのです。他の出展者の方は、ギリギリまで花をつつんでいるぐらいの気遣いをしているのに、そんなところに泡が飛んでいってしまったので「これはヤバイ!」とみんなで葉を拭いたりしました。今だからこそ笑い話として話せますが……。

人間は、その土地や自然の守護者になるべきだと思う
『フラワーショウ!』
(C)2014 Crow’s Nest Productions

──そんなチェルシー・フラワーショウに出場する“前”と“後”で、何が変わりましたか?

レイノルズ:まず、劇中に出てくるクリスティとは別れ、ミュージシャンと付き合いました。この記事を見ていらっしゃる方にぜひアドバイスしたいのですが、ミュージシャンとは付き合わないほうがいいですよ!
 そして、2人のかわいい子どもに恵まれ、仕事をしながら育ててきました。親になると、どうしても親としての自分が強くなり一個人としての自分は弱くなりがちですが、自分の時間もしっかりと取ろうと思ったし、本作のお話しをいただいた時にも物語を自分なりにも書き綴ろうと思いました。
 その過程で、長年、自分が自然について見落としているものが何か考え続け、その結果、昔ながらの人と自然との関わり方に戻ろうと思いました。そして、そんな私の考えをきっかけに、自然との関わり方に革命が起きれば良いと思っています。
 私は人間というものが、土地や自然の守護者になるべきだと思い、現在はその土地の自然が生態系を手助けするための活動をしています。サバンナなど特別な生態系でない限り、植物が望む形は森林です。森林は、何百年前から非常に安定した生態系であって、微生物も動植物もそこに住むことができます。今の産業化した世の中は自然に対しても人に対しても有毒なことが多いと感じます。自然を増やし、私たちもそこから癒しをもらうという非常にシンプルな考え方にいきついたところです。

──ランドスケープデザイナーとして、東京の印象はいかがですか?

レイノルズ:よく、訪問した海外の人々が楽しめるようにと、その土地固有のユニークさを無くしてしまう時がありますが、そうではなくて東京らしさは残したままにした方が良いと思います。日本人は自然との繋がりが深いと感じますし、日本のガーデンも自然の美しさその土地がきちんと反映された素晴らしいものだと思います。

『フラワーショウ!』
(C)2014 Crow’s Nest Productions

──あなたのサクセスストーリーを映画化した『フラワーショウ』が日本でも公開されますが、映画をご覧になりましたか?

レイノルズ:はい。初めて完成した映画を見た時は、監督の誠実さが伝わり、主人公のメアリーを通じて「自分の一番伝えたいこと=自然の美しさや大切さ」がしっかりと感じられる作品でしたので正直ホッとしたというところです。

──最後に日本人に向けてのメッセージをお願いします。?

レイノルズ:『フラワーショウ!』楽しんでいただけたら嬉しいです。この映画が、皆さんの大切にしている自然や大事な事を育むきっかけになればと思います。

メアリー・レイノルズ
メアリー・レイノルズ
Mary Reynolds

1974年生まれ、アイルランド出身。大学でランドスケープ・デザインを学び、卒業後はガーデニング・デザインなどの仕事に従事。2002年にチェルシー・フラワーショーのショー・ガーデン部門に初エントリーで金賞を受賞。王立植物園の庭園デザインなどを手がける。