1965年5月7日生まれ。東京都出身。中央大学経済学部在学中の1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団。1995年、NHK70周年記念日中共同制作ドラマ『大地の子』で主役の「陸一心」役に抜擢される。『青の時代』(98年)でザ・テレビジョン最優秀助演男優賞を受賞。06年のNHK大河ドラマ『功名が辻』では山内一豊役で主演を果たした。舞台、テレビ、映画と幅広く活動するかたわら、アニメ『かぐや姫の物語』(13年)、『ファインディング・ドリー』(16年)などに声優として出演。09年7月に演劇集団キャラメルボックスを退団。その後も幅広く活躍。
「白い巨塔」「華麗なる一族」など数々の傑作を生み出してきた作家・山崎豊子。その多くの作品が映像化されている中で、長年テレビドラマ化は不可能とされてきた傑作小説「沈まぬ太陽」(新潮文庫刊)を、開局25周年を迎えたWOWOWが全20話でドラマ化。今年5月より放送が開始している。アフリカ・中東での海外ロケなども行われるなど、スケールの大きな物語世界が話題の同作だが、7月10日からはいよいよ第2部(第9話〜20話)がスタート。大型旅客機の墜落事故という未曽有の惨劇を引き起こした国民航空を建て直すため、奔走する恩地(上川隆也)の前に、かつての同志・行天(渡部篤郎)が立ちはだかる──。
主人公・恩地元を演じるのは、1995年に放送された山崎豊子原作のテレビドラマ『大地の子』で主人公を演じ、一躍脚光を浴びた上川隆也。21年の歳月を経て、山崎作品の主役に再び挑むこととなった上川に本作への思いを聞いた。
上川:『大地の子』に出演し、僕の人生は大きく変わりました。自分自身、50代となったこのタイミングに再び山崎先生の作品に携わることができて、このうえない御縁を感じています。
上川:この役を演じ終えるまでの間、僕には恩地元という人が、決して特別な人ではないという感覚があったんです。だからこそ演じていく中で、けれんというか、極端な感情表現や動き、表情などを持ち込むことはしない様にしました。淡々としたスケッチの繰り返しの中で恩地を描き出していくからこそ、そのシーンが要求する緊迫感や重要性、和やかさ、悲しみ、喜びなどを表現出来ると考えたからです。
それは難しくもあり、楽しくもありました。きっと明日、急に恩地さんを演じてくれと言われたとしても、きっと演じることができるのではないかと思うくらいに、日常に近い感覚がありました。もちろん終えたという感慨はあるんですけど、かといってやり遂げましたという達成感で現場を後にしたわけではなく。それが恩地という男を演じてみて感じた魅力と云えると思います。
上川:はい。それが、山崎先生の描いている世界に他ならないんじゃないかと思うんです。現実にある出来事をを緻密な取材に基づいて描かれた物語ですから。だからこそ読まれる方も、身近なものとして感じるのでしょうし、物語でありながら実生活に肉薄してくるような、ある種、静かな力をもって迫ってくるものだと思うんです。熱を伴わない炎のような燃え上がり方をする作品だなと思いました。
上川:これは今回に限った話では無く、僕はあまり演技プランを立てません。しかし今回はいつも以上にその日やることを前もって決めないで現場に向かっていました。そうする事で、目の前にある事がいつも新鮮な出来事として捉えられ、日常感に近づけると思ったからです。ですから日々ノープランで臨みました。
上川:東京地検・特捜部の検事役で、最後の方でほんの少しだけ、カメオ出演のような感じで出演させていただきました。
上川:特に意識することはなかったです。20話かけて描く今回のドラマ版と、圧縮された物語を描く映画とでは、違って当たり前ですから。最初からそう考えて演じました。
上川:例えば、僕は基本的に休みの時はインドア派なんですが、渡部さんは徹底したアウトドア派で、休日には何かしらの予定を入れていて、動き回っているそうです。これは一つの例に過ぎませんが、僕とは世界のとらえ方が違う方なのだと感じました。でもそういった価値観の違いは、僕にとってはものすごく興味深く、楽しいことばかりでした。行天というキャラクターに対するアプローチも、僕が思いもしなかったようなもので、スマートな行天を作り出されていて。それには惚れ惚れとしましたし、一緒にいてとても刺激的でした。渡部さんが行天で本当に良かったと思いますね。
上川:影響を受けたというよりは『好きな映画』になるんですが、『ブレードランナー』はこれまで何度となく見ていますね。最初に見たのはまだ僕が高校生くらいだったかと思います。映画館ではなく、当時はまだソフトがビデオでしたが、14インチくらいのテレビ画面で見ても、あのオープニングにめちゃくちゃやられてしまった。未来があんなに退廃して、でも技術だけは進化していて。きらびやかではない未来像があの作品の大きな魅力ですが、僕もそれにやられたうちの一人。今でもバージョン違いのソフトが出るたびに買ってしまいます。ファイナルカット版が出れば買い、ブルーレイが出たら買い、コンプリートボックスに付録が付けば買い(笑)。うちに何本あるんだろうというくらいですけど、それでも欲しくなる作品なんですよね。ここまで追いかける作品は他にないですね。
上川:先ほど、影響を受けた映画よりも好きな映画という言い方をしましたが、それはその世界に楽しみたくて見ているからで、あの役者の芝居を盗んでやろうとか、そういう目線では見ていないんですよ。僕は自分が向き合う役柄以外にはそういう目線を置いていないのかもしれません。自分が演じる役の事は、もちろん色々と考えますけど、それ以外の時は、お客として映画を純粋に楽しんでいます。そうした意味では、幸せに映画と向き合っているのかもしれないですね。
(text&photo=壬生智裕)
(ヘアメイク:石井薫子/MARVEE、スタイリスト:黒田匡彦/KUM style)
(衣装協力:ダーバン、ケント・アンド・カーウェン、ロスガポス for STYLIST)
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