1937年10月30日生まれ、フランスのパリ出身。
ニュースカメラマンとして活動するなかで、映画監督を志す。初の長編映画『Le propre de l'homme』(61年)が酷評を浴びるも、『男と女』(66年)がカンヌ国際映画祭で最高賞(現在のパルムドール)を受賞、アカデミー賞外国語映画賞と脚本賞もダブル受賞し、一躍有名に。主な作品は『白い恋人たち/グルノーブルの13日』(68年)、『愛と哀しみのボレロ』(81年)、『レ・ミゼラブル』(95年)など。
『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』クロード・ルルーシュ監督インタビュー
恋愛映画の名手が“愛の可能性”について語った!
名作『男と女』で脚光を浴び、“恋愛映画の名手”とも呼ばれるクロード・ルルーシュ監督。彼が、前編インドロケを敢行して描いた『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』は、互いにパートナーがいながらも出会ってしまった男と女の姿を繊細に描いた、大人の恋の最終章とも言うべき作品だ。
75歳で初めてインドを訪れ魅了されたという監督に、旅情をかき立ててやまない本作について語ってもらった。。
監督:この映画は、様々な状況がうまい具合に重なり合って始まった。私が別のプロジェクトをやっていた時、エルザ・ジルベルスタインとジャン・デュジャルダンから電話をもらったんだ。2人が、ただ私と仕事をしたいと思っていることを知らせたかったという、それだけのものだった。そして、次にインドとの“啓示”のような出会いがあった。彼らとお互いに考えていることを話していくうちに、私好みのラブストーリーが浮かんできた。ジャンとエルザが私を突き動かしたんだよ。彼らは思いもよらないカップルになる可能性を秘めていた。お互いに違いすぎるからこそ、理想的なカップルになるはずだ、と。
私は俳優が好きだし、彼らは映画にとって欠かせない存在であることも分かっている。というのも僕ら(脚本家)が書いたあらゆることを彼らが演じるものが映画だからね。私はかねがねジャン・デュジャルダンと一緒に仕事をしたいと思っていた。
ジャンとエルザのことを考えながら、私は大急ぎで脚本を書き上げた。2人は私の執筆作業を見守り、その工程を楽しんでいた。2人はそれぞれ極めてユニークなやり方で、今の映画の新しいトレンドを教えてくれた。こうして私は初めて“熱意ある要望”に応える形で映画を作り上げたんだ。
監督:愛は人間にとって一番の関心事だ。ラブストーリーほど満足感を味わえるものはない、と同時に不快なものもない。つまり愛というのは混沌としたものであるがゆえに、驚くべき展開となる可能性があるんだ。事実、愛はこの映画の唯一のテーマだ。愛に限界はない。誰かが誰かを深く愛していても、別の人間を好きになることもあるということを描きたかった。私にとって愛とは、あらがうことのできない麻薬のようなものだ。
私の作品や私の人生でも女性たちが重要な役割を担ってきたが、彼女たちのお陰で、今の私がある。これはいつも言っていることだが、もう一度言うと、成功した男というのは女たちが作っているんだ。
監督:私はコメディを作りたかった。そしてそれ以上にラブストーリーの陳腐なパターンを打破したかったんだ。インドはこの作品のキー・キャラクターのひとつだ。ずっと私は、インドに行くべきだと言われ続けてきた。私の哲学や世界に対する物の見方や前向きな態度、映画に盛り込んだものを見て彼らはそう言っていたのだろうが、やっと75歳にして、かの地を訪れた。思っていたとおりの国だった。世界中を何度か旅したことあるが、私にとってあそこが一番美しい国だった。何よりも貧富の格差があるのが気になったが、合理的なものと不合理なものが共存しているのがいい。素晴らしい出会いだった。もっと早い時期にインドのことを知っていたら、すべての作品をインドで撮影していたかもしれないと思ったくらいだ。
監督:この映画では、音楽も非常に重要な位置を占めている。映画音楽作曲家というジャンのキャラクターを通して、本作では、幸運にも私が一緒に仕事をすることができたすべての偉大な作曲家たちを称えている。この作品で喜びの再会を果たしたフランシス・レイはもとより、ミシェル・ルグランやクロード・ボリンもそうだ。私が彼らの音楽に魅了されたのは、知らず知らずのうちに体に染み込んでいたからだ。誰もどこで音楽が生まれたなんか知りようもない。音楽とは神自らの表現なんだよ。
監督:私が愛してやまないことが2つある。それは人生と映画だ。映画が私に人々が人生を謳歌できるようなものを作らせてくれる。この世の怖さを痛いほど分かっていても、私は世界を愛している。だから多くの人にも愛してほしいんだ。ネガティブなものがポジティブなものより、重要になってきている世の中に私たちは生きている。悪いニュースがいいニュースを凌駕している世の中だ。でも映画を1本作るたびに、どうしたら人々がこの世の中を、より好きになってくれるかを考えてきた。私は、映画の持つ力が人の心を2時間で変えられると信じている。中には文明社会を破壊しかねない映画もある。この世界を愛する私の思いが、映画を通して広がることを願っている。
私は人生を賭けて、俳優や脚本やカメラを開放するよう努めてきた。そしてこの映画には、50年間の私の思いを盛り込んだ。テクノロジーがそれを可能にしたんだ。この年になって世界チャンピオン戦のリングに返り咲くことができるとは思っていなかった。だが自分のデビュー作のように、存分に楽しんでこの映画を作ったことは確かだ。
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