1984年生まれ、埼玉県出身。03年にドラマ『ビギナー』で主演デビュー。書評やエッセイなど執筆業でも評価を得ている。主な出演作ドラマは『めだか』(04年)、『いま、会いにゆきます』(05年)、『斉藤さん』(08年)、『梅ちゃん先生』(12年)、『トットてれび』(16年)。映画は『サイドカーに犬』(07年)、『落語娘』(08年)、『天国からのエール』(11年)、『わが母の記』(12年)、『後妻業の女』(16年)など。
東京と北陸を舞台にした『カノン』。3姉妹が、死んだと聞かされていた母が生きていたと知り、自分を見つめ直していく家族ドラマだ。
トラウマから結婚に踏み切れない次女・藍に比嘉愛未、モラルハラスメントに遭う長女・紫(ゆかり)にミムラ、かつての母と同じアルコール依存症に苦しむ三女・茜に佐々木希が扮して初共演。姉妹になり切った3人が、アルコール性認知症の母を演じた鈴木保奈美のことも含め、作品を振り返り、互いを語り合った。
比嘉:嬉しい! 共演できてすごく嬉しかったです。どういう姉妹像になるのかなと緊張もしましたが、会った瞬間に大丈夫だと思えました。
ミムラ:本当ね。
佐々木:自分だけじゃないっていう思いが持てました。
佐々木:それぞれに重いテーマを抱えている物語です。私の演じた茜は、アルコール依存症という母親と同じ立場、同じ悩みを抱えてしまっていて、大嫌いな母親と同じだということがイヤで、そこから逃げるためにまたお酒を飲んでしまう。負のループというか。そうした葛藤がとても辛かったのですが、最終的には温かな気持ちになれる作品だと思いました。
ミムラ:チャレンジングな作品です。日々ニュースにあがるような社会問題が、こんなに盛り込んで大丈夫かしらというくらい入っている。おもしろいと感じたのと同時に、これを映像として説明しようとしたとき、重たすぎないか、情報過多すぎないか、とてもバランスが難しいので、監督にご相談しながら助けていただこうと思いました。紫はモラルハラスメントに遭っている妻ですが、娘という立場だけでなく、自分自身も母。ふたりのキャラクターとは違う部分を担っているので、そこは大事にしたいと思いました。
比嘉:台本を読んだ時、正直、読み進めるのが辛くなるくらいに複雑でディープな題材で、演じられるかという不安がありました。でもそれぞれが抱えている傷、痛みを一歩乗り越えたあとの、強さ、未来を感じる素敵な映画になったと思います。ただ藍は3姉妹の次女で、モラハラとかアルコール依存症といった明確にこれという問題はなくて。
ミムラ:名前のつかないトラウマっていうのも重いよね。
比嘉:本当に。次女という立場も。私自身も3人兄弟ですが、長女なので、真ん中の立場はどうなんだろうといろんな人に話を聞きました。すると、挟まれている分、どこか客観的に物事を見たり、自分を出せない性格の人が多かった。だから物語を引っ張っていく役どころでありながら、感情の在り方がすごく難しかったです。
ミムラ:悩んでたよね。紫や茜は自分で完結していく部分が大きいけれど、藍は中心にいて、説明的な部分も担いながら、自分の感情も考えなければいけない。
比嘉:そうなんです。抑えながらも進めていかなきゃいけないというのが初めての役作りで。結構悩みましたが、監督に相談したら、悩んだり苦しんでいる姿が藍そのものなんじゃないかとおっしゃってくださって。すごくほっとして。もやもやした気持ちのままぶつかっていこうと思えました。
比嘉:いい意味でそれぞれマイペースなんです。だから誰かが頑張って引っ張らなきゃとか、ひとりだけツンケンしてるとかいったことがなくて、それぞれが心地いい時間を持っているからこそ、ずっと一緒にいられました。
佐々木:話すときはすごく話すけど、話さなくても平気。
ミムラ:一緒にお弁当を食べたり、台本のことをざっくばらんにお話しもしたね。
比嘉:そう。いろんな話をして。それこそプライベートの話も。一緒に時間を共有できたことが、役作りに活かせた。それは地方ロケでずっと一緒にいられたからこそかもしれません。
比嘉:ミムラさんは長女気質というか、私たちは博士と呼んでたんですけど(笑)。本当に物知りなんです。
ミムラ:私そんなに薀蓄垂れてたのかな、ごめんね(苦笑)。
佐々木:いやいや、すごく楽しくて、こちらがいろいろ聞いてしまったので。
ミムラ:私からすると、それは末っ子気質からの甘えからなんですよ。昔から色んなことを覚えてお姉ちゃんたちに話すのがクセだったの。
比嘉:そうなんだ! 尊敬できる部分がたくさんあるので、素直にお姉ちゃんっ!と思えました。のんちゃん(佐々木)は天真爛漫で、甘え上手。本当にかわいくて。
佐々木:いやー、比嘉さんもすごく面倒見のいいお兄…、あ、お姉ちゃん。
比嘉:お姉ちゃんですよ。女ですからね。あ、どっちかっていうと、私はツッコミ担当だったかもしれないです(笑)。
ミムラ:まったく気取りのないふたりなので。こうして希ちゃんがぽけっとしたことを言うと、比嘉ちゃんが突っ込んで(笑)。
比嘉:それを微笑ましく見てくれているミムラさん(笑)。
ミムラ:でも比嘉ちゃんが座長さんとして引っ張ってくれていたから、そこに甘えられました。
佐々木:本当に助かりました。
比嘉:そうですね。正直な話、現場ではご挨拶しかしてないです。それくらい役作りをされていて。私たちはその姿を見て、いい緊張感の中で母に対峙することができました。
ミムラ:私は保奈美さんとは以前共演したことがあって、すごくフランクに接してくださる方だというのを知っていたので、そのギャップに、余計にお母さんの抱えている闇を感じました。希ちゃんは、最初どうしよう!ってなってたよね。
佐々木:ほんとに。でも有難かったです。
ミムラ:作中には女性の生きざまがいろいろ描かれていますが、私たちからすると、保奈美さんや、先輩方の後ろ姿から感じる部分がたくさんありました。
比嘉:それぞれの生き方が重なって出ていることですしね。私たちもいつかそうなれたらいいね、かっこいいねって話してました。
佐々木:ですね。
比嘉:私はいつも挫けそうになったとき、自分を励ましたいときに聴くのは、小田和正さんの「ダイジョウブ」という曲です。私が初めてドラマ主演させていただいた朝ドラ『どんど晴れ』の主題歌で、小田さんが私にあてて書いてくださった歌詞なんです。
ミムラ&佐々木:わー、すごい! ステキ!
佐々木:私は高橋優さんの「泣ぐ子はいねが」です。全部秋田弁で、秋田のいいところや県民性なんかを歌ってるんです(佐々木も高橋も秋田出身)。それを生で聴いてみたいです。
ミムラ:私は音楽というか、断片的なBGMで、日曜日の夕方に散歩をしていて、日曜おなじみのテレビ番組の音が聞こえてくると、家族団らんとか小さいころのことを思い出して、胸がキュンとしますね。
比嘉&佐々木:あー、わかる
佐々木:昔、母親に電話すると、必ず「カノン」の保留音が流れてたんです。
比嘉&ミムラ:え〜!
佐々木:だから「カノン」を聴くとキュンっとなります。
(text&photo:望月ふみ)
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