1949年6月22日生まれ、アメリカ合衆国のニュージャージー州出身。イェール大学演劇大学院に学び、舞台俳優としてキャリアをスタートさせる。ロバート・デ・ニーロと共演した『ディア・ハンター』(78年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされる。『クレイマー、クレイマーで』(79年)アカデミー助演女優賞を、『ソフィーの選択』(82年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞。『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でも主演女優賞を受賞しており、これまでアカデミー賞に21回ノミネートされ、3度の受賞がある。主な出演作は『恋におちて』(84年)、『マイ・ルーム』(97年)、『めぐりあう時間たち』(02年)、『プラダを着た悪魔』(06年)、『マンマ・ミーア!』(08年)、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(16年)など。
10月に行われた第29回東京国際映画祭のオープニング作品として上映された『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』。本作で、実在した音痴のソプラノ歌手フローレンス・フォスター・ジェンキンスを演じたのがオスカー女優メリル・ストリープだ。
劇中では、絶世の音痴なのに、音楽の殿堂カーネギーホールを満員にした伝説の女性フローレンスを愛らしく、そしてコミカルに好演。これまで数々の作品に出演し、圧倒的な演技を見せてきたメリルが「取り入れるものと捨てるものを決めて演じた」という役柄への取り組み方や、彼女自身の女優としてのスタンスなどを聞いた。
ストリープ:30年近くの間、スティーヴン・フリアーズ監督と仕事をしたいと思っていたんです。これまで2回ほどお仕事できそうな機会があったのですが、どちらもスケジュールが合わなくて実現しなかったんですね。でも、彼の作品は見ていましたし、彼から「一緒にやらないか?」という電話をもらった時は、内容を聞かずに「イエス!」と言いました。
ストリープ:演劇や音楽を専攻している人なら、彼女のことは皆が知っているくらい伝説の人物なんです。私も知っていて、イエール大学の大学院生のころ、音楽専攻の人が集まってカセットテープを聴いて大笑いしていたんですね。それがフローレンスの曲だったのです。今回、そんな人を演じることになったのですが、ニコラス・マーティンの脚本が素晴らしく、フローレンスという人間を知るということにより熱心になりました。
ストリープ:私も小さいころは一流の歌手になりたいと思っていたのですが、自分の限界はよくわかっているつもりです。子どものころにオペラを習い始めたのですが、すぐに諦めてしまって、その後は煙草や酒など放蕩三昧の生活で声をダメにしてしまったんです。(演技については)下手に歌うというよりも、彼女の声域に追いつくことに苦労したんです。彼女は伝説の歌手、マリア・カラスが晩年に出すことに苦労していた、ハ長調の高音より上のヘ長調で歌うことができたんです。1オクターブ下げても、大変。なぜなら、彼女はただ下手なのではなく、予測できない歌い方をするんです。それは大変な作業でした。
ストリープ:この映画の撮影の前に『幸せをつかむ歌』というロックンロールの映画を撮ったのですが、そこで共演したオードラ・マクドナルドから歌の先生を紹介してもらったんです。1ヵ月半ぐらいの間、週に2回レッスンをしました。
ストリープ:役やキャラクターによってアプローチ方法は全然違いますね。実在する人物を演じる時には、できるだけその人のことを知るように勉強します。ただ今回の場合、フローレンスは実在する人物でしたが、どちらかいというとフィクションの物語を作るという色合いが強かったと思います。彼女の特異な性格やエキセントリックな部分は取り入れましたが、無視した部分もたくさんあります。フローレンスという人物の人生すべてを作り上げるのですが、その中で取り入れるものと捨てるものを決めていきました。
ストリープ:彼女の人生にはたくさんの試練があったと思うし、見方によれば、彼女は滑稽で年老いていて、役立たずで、ぜいたくで病人というかわいそうな人と思われるかもしれない。でも毎日「水が半分入っているグラスは、半分しか入っていないんじゃなくて、半分も水が入っている。できる限り幸せな気持ちでいるわ」って思いながら外に出かけていく人。彼女は音楽を愛していて、自分が偉大な歌手になれるという夢を捨てずにずっと持っていたんです。私は彼女のそんなところが好きです。
ストリープ:最初はそこまで女優という仕事に深い思い入れがあったわけではないんです。人工的でバカバカしいと感じることもありました。でも時間が経つにつれ、理解が深まっていき、とても重要な仕事なんだって気づきました。
ストリープ:色々なところで見つけられますよ。料理を全部作り終えて、家族全員で温かいものを一緒に食べる瞬間だったり、家族を送り出してドアを閉める瞬間だったり、田舎の家に行って、湖や山、小川のせせらぎの中、静かな時を過ごしたり……。そういった日常に喜びを感じることも多いです。
ストリープ:クリエイティブな生活に終わりはありません。遊びのような感覚を持って、とにかく楽しむこと。年を取るにつれて知識も増えていくわけですから。
ストリープ:もちろん! オファーが来る限りやっていきたいです。
(text:磯部正和)
NEWS
PICKUP
MOVIE
PRESENT
-
【吉田大八監督登壇】『敵』Q&A付き試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.12.30 -
安田淳一監督のサイン入りチェキを1名様にプレゼント!/『侍タイムスリッパー』
応募締め切り: 2025.01.10