『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』坂本真綾インタビュー

ちょっと自分を困らせたい。人気声優が人生のスリルを語った!

#坂本真綾

『スタンド・バイ・ミー』のような少年たちの成長ドラマが描かれている

世界累計利用者数3,500万人を突破する大人気のスマホアプリ「モンスターストライク」(通称、モンスト)。これをもとにした劇場用アニメーション 『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』が、12月10日より全国公開される。

「モンスト」が誕生したばかりの日本を舞台に、小学生たちの冒険と友情、そして成長が描かれていく本作で、主人公レンの声を担当したのは人気声優の坂本真綾。彼女に映画の見どころなどを語ってもらった。

──本作は人気スマホアプリをもとにしていて、2015年にはアニメ版 「モンスターストライク」(通称、モンストアニメ)がYouTubeで配信され世界累計再生回数1億回を突破しています。『モンストアニメ』について全体的にどんな印象を持ちましたか?

坂本真綾

坂本:見る前は、バトルものなのかなって思ったんですけど、もちろんアクションシーンはありますが、それよりも今回の映画は、主人公たちの心の成長が描かれている。『スタンド・バイ・ミー』のように少年たちがだんだん大人にスライドするきっかけになるような物語。たった数時間の出来事の間に子どもがグッと大人に近づくような、そんな人間ドラマに焦点が当たっています。もちろん見どころのひとつとしてアクションシーンはあるんですけど。それ以上に印象に残るのはやっぱり、彼らのセリフやぶつかり合い、そういう部分だと思います。

──小学生の男の子というとまだ子どものように思いますが、レン君はいろいろなものを抱えていますね。

坂本:そうですね。特にレンくんの場合は早くにお父さんが行方不明になってしまうという出来事があったために、早く大人にならなきゃとか、家族がお母さんや妹という中で自分がたったひとりの男の子だから早く成長しなきゃっていう思いがあったんだと思います。普通はもっと子どものまましばらくいられると思うんですけどね。

──レンを演じるにあたって気をつけたことや、監督からの演出はありましたか?

坂本:自分としては作品に途中参加になるので、緊張して行ったんですが、思っていた以上にあまり細かい指示はありませんでした。テストで一度やってみて、「そんな感じで」と、わりとすぐOKをいただけました。途中のシーンで具体的に、「このセリフはこういう風に言ってほしい」というのは所々ありました。

──レンが仲間と一緒に旅に出て成長していく姿がとても印象的な物語ですが、坂本さんの中で印象に残ったキャラクターはいますか?

坂本:自分で演じたのでやっぱりレンくんの気持ちが一番わかるし、共感しましたね。私は春馬みたいに冷静なタイプでもないし、皆実ほどムードメーカーでもない。葵ちゃんはすごくしっかり者だし。

──坂本さんは葵のようなクールなイメージがありますよ。

坂本:どうなんでしょう、そうだったら嬉しいですけど。確かに今まで私が演じてきたキャラクターは、この中で言ったら葵や春馬みたいに、一歩引いた視点で包んで全体を見ているようなキャラが多いので。レンくんみたいに猪突猛進で周りが見えなくなるみたいなキャラクターは今まであまりやったことがなかったタイプかもしれないですね。

あの時、ひとりで何かをやり遂げる喜びを初めて知った
『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
(C)mixi,Inc. All rights reserved.

──レンは前向きで明るいけれど影もある。わかりやすい主人公ではなく、成長の途中なんだなって思わせてくれる主人公ですよね。

坂本:そうですね。もともとYouTube版で見ている人はびっくりするかもしれないですけど、(映画での)レンくんは結構わがまま。周りに対して吐き捨てるようなことを言ったりもする。昔はそういうところがあったんだなって、逆に親近感を覚える人もいるんじゃないかなと思います。いろんなことがあって後のレン君になるんだなって。今回のバックボーンを知って、より一層レンくんに共感を持つ人は覚えるんじゃないかなと思います。

──こういったキャラクターを演じる事は珍しいということですが、男の子を演じる時はどんな心境で臨むのですか。

坂本:男の子の役を演じること自体そんなに多いわけじゃないんですけど、今までやった男の子の役は、年齢的にもう少し上。小さいといっても10歳ですけど、これくらいの年齢の子は自分の中では不慣れという意識があったんです。なので今回やったことのない役に挑戦するのは、自分にとってチャレンジでもありました。でも男の子といってもまだ声変わり前だし、男らしい声ってわけじゃない。声の音で少年っぽさを出すというよりは、マインドの部分で彼の持っている熱血なところを演じたいと思いました。レンくんって子どもらしく常に動いているんですよね。走っていたり、ボールを投げながらしゃべっていたり、常にじっとしていない。そういう子供ならではの動きのある話し方など、声色ではない部分で少年っぽさが出せたらいいなというのを目標にしていました。

坂本真綾

──この映画は、レンたちが子どもだけで街を出て旅に出る冒険の物語です。坂本さんが子どもの頃に体験した初めての冒険について教えてください。

坂本:9歳ぐらいのとき、初めてひとりで飛行機に乗ったときのことをよく覚えています。私の祖父母が九州と北海道に住んでいて、遊びに行くときは飛行機に乗らないといけないんです。家族で毎年のように飛行機に乗って行っていたんですが、ある年の夏休みに「ひとりで行ってきなさい」と言われて。いつも乗っているから大丈夫と思ったんですけど、やっぱりひとりになった瞬間に不安になりました。誰にも話しかけられないから心細い。ほんの1時間ちょっとなのに、すごく長く感じたんですよね。そんな中、飛行機の中でジュースをこぼしてしまって、すごく恥ずかしかった。子どもっぽいことをしてしまったって思ったんですよね(笑)。女の子ってませているから、そこでも堂々とふるまいたかったのに、失敗しちゃった……って。でもその時に助けてくれた隣の席のおじさんやフライトアテンダントの方の存在が、いまだに印象に残っているんです。私は当時からこういう仕事を始めていましたけど、ずっとこういう道で行くか、あるいは飛行機にまつわるお仕事につきたいって思ったりもしたので、その時の経験に相当影響を受けたんだと思いますね。今でもひとり旅は好きですし。あの時、ひとりで何かをやり遂げる喜びを初めて知ったんだと思います。

──その経験は、坂本さんにとってどんな意味があったんでしょう?

坂本:私は末っ子で、普段から周りのみんながいろいろ構ってくれていたんですよね。自分も甘えることに慣れていたと思うんですけど、だからこそ親が「ひとりで行かせてみよう」って思ったんじゃないでしょうか。もともと自分の力でやりたいという欲求は強い方だったので。今も、あえて難しいことに挑戦してみるとか、行ったことのない場所にひとりで行ってみるのが好き。ドMなんでしょうか(笑)、自分を困らせたい、ちょっと自分を試したいという気持ちがあるんだと思います。

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
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──人生におけるスリルが好きなんですね。

坂本:そうですね。強くなりたいというか。これを克服することで先に行けるんじゃないかっていう気持ちがあるんです。お仕事でも、このレン役のようにあまりやったことがないキャラクターに挑んでみたいって思う。ちょっと自分にはハードルが高いかなっていうラインに挑戦することが好きなのかなって思います。

──最後に作品の見どころなどをアピールしてください。

坂本:私はこの『モンストアニメ』という作品に出ることになって、それを入り口に『モンスト』を知ったので、本当にビギナーなんです。『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』は必ずゲームの『モンスト』をやっていないといけないのかなと思ってたんですけど、そうではない。映画を入り口にしても楽しめる作品になっています。最初にこの映画を見ると、その後のレンくんが知りたくなるでしょうし、そこからYouTube版を見たり、また、その流れからゲームをやったりという順番もありだなと思っています。今までゲームやYouTube版で応援してきた方はもちろん、はじめましてな人でも大丈夫。私もそうでしたから、一緒に楽しんでほしいなと思います。

坂本真綾
坂本真綾
さかもと・まあや

1980年3月31日生まれ、東京都出身。子役として活動後、『天空のエスカフローネ』(96年)の声優をつとめ注目を集める。「レ・ミゼラブル」などのミュージカル俳優、ラジオパーソナリティとしても人気。歌手としても活躍し、96年、シングル「約束はいらない」でCDデビュー以降、精力的に作品を発表。2013年には、日本初上演されたミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ〜足ながおじさんより〜」ジルーシャ役が好評を博し、第38回菊田一夫演劇賞を受賞。