1962年11月26日、スウェーデン生まれ。俳優としてキャリアをスタートさせ、81年に『Inter Rail』でデビュー。その後、テレビシリーズにも出演し、出演、監督、脚本をこなしたコメディシリーズ『S*M*A*S*H』(90年)で成功を収める。『One In a Million』(95年)で長編監督としてデビュー。その後、スウェーデン映画史上興行成績ナンバー1となった『Adam & Eve』(97年)など、多くのコメディ作品の脚本と演出を手がけ、マルティナ・ハーグ原作のベストセラーを映画化した『青空の背後』(10)は、トロント国際映画祭などで上映され、日本でも14年のスウェーデン映画祭で上映された。本作は、16年のゴールデン・ビートル賞で6部門にノミネートされ、観客賞など3部門を受賞した。
43年間、真面目に勤め上げてきた職場をクビになってしまった孤独な老人オーヴェ。気むずかしく、近所から厄介者として嫌われていた頑固じいさんが、一度は自殺を図りながらも、隣人一家の騒々しさに巻き込まれるうちに生きる希望を取り戻していく様子を描いた映画『幸せなひとりぼっち』が12月17日より公開される。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を抑えて5週連続1位を記録、スウェーデン映画史上歴代3位となる大ヒット映画となった本作について、来日したハンネス・ホルム監督に聞いた。
監督:原作はスウェーデンではベストセラーになった人気本で、あるプロデューサーから映画化できないかと相談されたのがきっかけでした。原作を映画にするのは好きではないし、難しい作業であることは予想できたので、最初は断ったんです。ただプロデューサーにどうしてもと頼まれて、最終的には承諾しました。いままでオリジナル脚本しか取り組んだことがなかったので非常に苦労しましたし、予想通りの難しい作業でした。
監督:小説のファンは本の世界を気に入っているので、その期待に応えるのはなかなか難しいですね。なので原作に忠実な脚本は書きたくなかった。あくまで原作は原作で映画は映画というスタンスです。
脚本で重要なのは、ストーリーを原作本から盗むことでした。要するにストーリーを抽出して再構成する。キャラクターについても同じです。本を1回読んだ後は、気にせずに作業するようにしました。
キャストについては、あくまでコメディ役者ではなく演技力が優れた役者をキャスティングしたいと思っていました。主人公オーヴェを演じたロルフ・ラスゴードはスウェーデンでも実力派として知られる名優です。たくさんの読者が、原作本はコメディだと思っていたようですが、私にとっては人生の話で真面目なドラマだと考えていました。
監督:ロルフに役をオファーしたとき、彼は驚いていたようでした。演劇で有名だったからでしょう。私自身はコメディの経験が豊富にあり、彼は主にドラマ俳優としての経験を持って いた。なので、現場ではうまくバランスがとれたと思います。
監督:動物を使って撮影した経験はありますか? オーヴェと飼い猫のシーンでは、デジタル処理を利用できるような予算はなかたので本物の猫を使っています。マジックとオーランドという2匹の猫を使って撮影しています。オーランドは怠け者なので、寝たりしている動かない場面にはオーランド。歩いたりする場面にはアグレッシブなマジックと使い分けています。ただ見分けがつかなくなることもあって、ロルフに間違った猫を渡してしまったときもありました。でも、いい演技してくれました。プロデューサーは猫を使いたくないと主張しましたが、映画では魅力の一つとなりました。
監督:こういう住宅街が実際にスウェーデンにはたくさんあります。60年代から 70年代にかけて文化住宅として政府によって建てられたものです。いろんな場所にロケハンにいったので すが、オーヴのような老人がどの住宅街にもあらわれて警戒されてしまいました。最終的には、サーブの工場があった街の文化住宅で撮影することになり、色々なタイプのサー ブをミュージアムから借りることができました。
監督:白いシャツを着た連中のことですね。
そう、スウェーデンは確かに社会福祉という点では優れていたけれども、行政が管理していた事業を企業が引き継いでから、色々と問題が起きています。介護において利益を追求しはじめると、当然問題が出てくる。映画で描かれているような状況は現実にあり得ることだと思います。そして正しくないことに対して、はっきりと態度を示すのがオーヴェで、そういう意味では彼はスウェーデンの典型的な男性とは言えないのかもしれませんね。スウェーデンではコミュニティと個人がぶつかるときがありますから。
監督:すごく居心地がいいです。スウェーデン人と日本人は似ているかもしれませんね。基本的には静かで謙虚。ここでも生きていける、そう思います。街もクリーンですね。
監督:寿司は好きです。日本ではヨーロッパでは食べれないものを食べたいですね。最近までインドにいてお腹をこわしていたけれど、もう全快したので大丈夫。いろいろトライしたいです。
監督:ヨーロッパで黒沢明監督は有名で、どの作品も大好きです。是枝裕和監督の『ワ ンダフルライフ』(99年)も、死をテーマにした作品でとても気に入っています。死をテーマにすると生の要素が強く栄えてくる。いいテーマだと思います。
監督:2年前、スウェーデンの寒い部屋で脚本を執筆していたときに、日本で上映してもらえて来日までできるとわかっていたら、最高な気分で作業できたのにと思っています。日本はある意味、オーヴェの故郷といってもいいのではないでしょうか。
監督:児童文学作家のアストリッド・リンドグレーンです。なかでも「はるかな国の兄弟」は素晴らしい。みんなに読むように推薦したいです。(『裏切りのサーカス』などで知られるスウェーデン人の映画監督)トーマス・アルフレッドソン監督で映画化されると聞いていますがこれも死がテーマになっています。
監督:ぜひ作品を見に来てください。人生についての映画で、コメディと悲劇をブレンドした作品です。主人公のオーヴェは日本人っぽいところがあると思います。
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